初めまして。フリーランスのフォトグラファーをしております、土田です。
普段はインタビュー記事や、観光雑誌、飲食店の料理の撮影をしています。最近では地域の生産者の方にお話を聞くことがあり、その際に人物の撮影と一緒に料理も撮ることがあります。
料理を撮るまではブライダルスナップや、人物のインタビューが多かったのですが、
昨年の7月にシェアハウスに引っ越し、せっかくだからそこでの生活を写そうと、
食卓の写真を撮り始めました。「つちめい飯」というアカウントで写真を載せています。
(文字入れ、デザイン、料理はパートナーが作っています)
始めは”食卓”の写真を撮っていたのですが、ある時期からもっと料理そのものを美味しく撮ってみたいと思うようになりました。お肉の焼かれる音、ぐつぐつと煮える鍋などダイナミックで元気になるものもあれば、静かに佇むほうれん草のおひたしも美しいですよね。背筋が伸びる…。
今回はそんな僕が思う、料理写真の楽しさ、そして普段の撮影で意識していることを書いていこうと思います。
3度楽しめる料理と写真の魅力!
撮るようになって気づいたことですが、おそらく料理と写真は1回で3度楽しめる。
なんとお得なものなのではないかということです。
1つは調理中。今のまま食べても絶対美味しい!なんならつまみ食いの方が美味しいのでは??と思う瞬間ってありますよね。
この切られていくニンニクはどんな味になるのか…!!頭の中で美味しい瞬間を想像しながらシャッターを切ると、まるで食事をしているかのような感覚になります。
2つめは実際に食べる時。
頭の中で想像していた料理を実際に食べる。料理の大前提は撮ることではなく、食べること。できたらパッと撮ってすぐ食べたいところです。
3つめは撮り終わったあと。
撮った写真を思い返し、この時の煮込む音は良かったなあ。光の当たり方が綺麗だったなあ。そんなことを思いながら写真を見返すと自然とお腹が減ってきます。
さらにその思い出に文字入れをしてみたりすると一層その時のことが鮮明に思い出されるかもしれません。
そんな一石三鳥な料理の写真ですが、個人的に意識していることについて書いていきたいと思います。
美味しいを感じる料理写真の撮り方
1.出来立てを撮る
一部の撮影を除いて、食卓での料理は基本的にライブと一緒だと思います。
ライブも一番盛り上がるところがあるように、料理にも盛り上がる場所があるように感じます。まずはその瞬間を残すようにと考えています。そして料理の盛り上がりはやはり出来立てが多いのではないでしょうか。
なぜ出来立てを撮るかというと、その瞬間でしか撮れないものがあるからです。
躍動感や、エネルギーをもっとも感じやすいのが出来立てであることが多いです。
2.画角をあらかじめ想像する
料理にも人物と同じように表情があります。
鶏肉のトマト煮を例にすると、どこが主役なのかあらかじめイメージしておくことで撮る画角が変わってきます。
例えばこんな風にほぼ真横から撮ると奥がボケてしまって、なんの写真なのか分かりにくくなってしまいます。
これを少し斜め上から撮ると、
全体が分かりやすく見えるようになりました。
この料理のどこを見せたいのか。特に見せたい部分はどこなのか?を撮る前に考えると画角を作りやすいと思います。
3.動きをつける
写真は動画と違って動きません。
ですが「動いていることを想像させること」はできます。動きを想像してもらうことでより美味しさを楽しんでもらうことができます。
たとえばチーズの料理は、こうして持ち上げる様子を撮ることでトロトロ感を分かってもらいやすくなります。
他にも例えば動きをつけたほうが美味しく見えるトロトロしたものとしては、卵の黄身やはちみつなどが挙げられます。こうした食材を撮影するときはぜひ動きを意識してみてくださいね。
さてさて、カメラ側で意識していることについても書かせてください。
4.中望遠で撮る
撮り始めていた頃は広角側も使っていたんですが、僕が感じたのは広角は“料理”ではなく“生活”の画角に近いんです。
料理以外の部屋の様子や、お店の空気感まで一緒に写ってしまう。もちろんそういった写真を撮りたいときは広角、標準域がいいかと思います。
が、今回は料理そのものを撮る前提で話を進めさせてください。その場合、広角側で撮ると歪みが生じてしまいます。この歪みをなくし、料理そのものを美しく見せるために望遠側で撮影します。
70mmで撮ったカット
5.半逆光で撮る
料理を撮っていて美しいと思う瞬間は、その質感が十分に分かる光の当たり方をしている時です。照りや瑞々しさ、その料理の立体感を出すために半逆光で撮ることが多いです。(半逆光とは被写体の側面から光が当たっている状態のこと)
この唐揚げは写真左方向から光が当たっていて、衣の立体感が際立って見えます。料理にもよりみずみずしさが生まれ、お肉が心なしかジューシーに見えませんか?(ちなみに撮影現場ではこうした料理の“美味しい瞬間”のことを“シズル感”と表現したりもします。)
ご自宅やレストランで写真を撮るときは、ご自分の斜め前(もしくは横)に窓がある場所がいいと思います。
6.撮影で意識するワンポイントテクニック
・スチーマーを使わないで湯気を出す
寒暖差をつけてあげると湯気が出やすくなります。暖かい室内で料理を作って、完成した料理を撮る時に窓を開けてみると寒暖差がつきやすくなりますよ。
・「ちょうど良い」と思ってからさらにもう一歩寄る
もちろん撮影の内容にもよりますが、寄りすぎるくらいが料理のインパクトを引き出しやすいですし、料理そのものに集中できます。(広いとそれ以外にも気を使う範囲が広がる)
お皿もそのお皿の質感が分かる範囲であえて切ってしまうのも一つの手段です。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は鶏肉とトマトの煮込みとゴロゴロチーズ焼きをメインに書きましたが、例えば高さのあるパフェなんかだと、真上から高さを表現するのは難しいから、真横から写すことも出来ると思います。
料理によってどう見せたら美味しいのかが変わる、そこが料理写真の面白さなのかもしれません。そして僕は料理の写真を撮るようになってから、数は少ないですが自分でも料理をするようになりました。(丼に限ります)
好きな材料を使って、好きな味付けにするのは写真を編集している時と近い感覚を覚えます。ぜひこれを読んでくださったあなたも料理と写真を楽しんで頂けたら嬉しいです!
僕はこれから豚肉の塩スタミナ丼を作ってきます!それでは!
土田凌
1992年2月生まれ。人材広告会社勤務後、フォトグラファーに。 広告、インタビュー、ライフスタイル、料理などの撮影を行う。 最近は自分でも料理をします。