みなさん、こんにちは! 松浦稀(@marematsuura)です。普段は撮影モデルなどをしていますが、最近フィルムカメラをはじめてフォトライフを楽しんでいます。
「はじめてのフィルムカメラ」第7回は、動物園でのフォトさんぽ。もともと動物好きで、よくInstagramで動画や写真を見ています。どうしたらうまく撮影できるのかを知りたくて、今回はほんわかした動物写真が素敵なフォトグラファー・寺島由里佳さん(@yuricamera)に動物園撮影を楽しむコツを教えていただきました!
教えていただいたのは…
寺島由里佳さん
動物園にいる動物たちをライフワークとして撮り続けているフォトグラファー。ほんわかした癒やされる動物写真が魅力的で、個展やグループ展開催、写真集出版など積極的に活動されています。
事前に一人で撮影したときの写真をもとに改善ポイントを教えてもらいながら、フィルムカメラでかわいい瞬間をたくさん撮りたいと思います!
- 人工物の写りこみを防ぐ
- 動物の習性や動物園の特徴を生かす
- 前ボケで、ふんわりした雰囲気を演出する
- 写真店でのオーダーや画像編集で、自分好みの世界を自由につくる
- その時々の出会いを楽しむことが何より大事!
- 稀’s Photo Note
おじゃましたのは…「井の頭自然文化園」
「動物園(本園)」と「水生物園(分園)」に分かれていて、合わせて170種を超える動物が飼育されています。「リスの小径」や「モルモットふれあいコーナー」など、動物を近くで見られる場所がたくさんあり、超望遠レンズなどがなくても撮影しやすいスポットです。
所在地:東京都武蔵野市御殿山1-17-6
TEL:0422-46-1100
https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ino/
稀:かわいい動物たちに興奮してたくさんシャッターを切りました! …ですが、なんともうまくいかなくて。囲いが写ったり、動きが速くてブレていたり。実際に目で見る“かわいさ”をもっと写したいです。
寺島:動物園撮影は、ちょっとしたコツを覚えるだけで、ぐっと楽しくなりますよ!
望遠レンズであれば表情をクローズアップできるんですが、フィルムカメラだと標準レンズだけの方も多いと思います。今回は50mmの標準レンズで、動物たちの魅力を引き出すコツを紹介していくので、実際にトライしてみましょう!
人工物の写りこみを防ぐ
檻は、大きくぼかして目立たなくする
稀:肉眼ではあまり気にならなかったのですが、写真で見ると檻が強く写ってしまって…。
寺島:檻がある場合は、レンズを極力近づけて、絞りを開放気味にしましょう。完全には消えませんが、檻に近づけるほど目立たなくすることができます。この園では、コールダックがオススメです!
稀:F1.4にすると、檻がほとんど見えなくなりました!
寺島:こちらに近づいてきたタイミングを狙って奥のネットも写さないようにすると、コールダックだけの世界を切り取れますよ。
稀:かわいい…! 生き生きした写真になりますね。
服装とレンズの位置でガラスの反射を防ぐ
寺島:もう一つ気をつけたいのが、ガラスの反射です。これも、コツを押さえると回避できます。
- 暗めの服装で反射を抑える
- 照明などの位置にも注意
- ガラスにレンズを近づけて余計な光が入るのを防ぐ、または、斜めから撮り反射が写らないようにする
稀:きれいに撮れました!
寺島:水槽の場合、斜め下から撮ると照明で背景を明るくできるんです。
稀:水族館でも、こうすればいいんですね!
寺島:ガラスがあると反射はおきるので、クマやパンダなどガラス越しで撮るときは全般的に生かせますよ。
構図の工夫で背景を整理する
寺島:檻やガラス以外にも、人工物はたくさんあります。
ハイアングルでしか撮れない場合は足元まわりが写ってしまうんですが、背景整理と余白を意識するとぐっとよくなります!
寺島:上の写真は日の丸構図で真ん中のペンギンに目がいくんですが、カーペットや背景が少し気になるので、もっと近づいてみましょう。
稀:ペンギンに目がいきますね!
寺島:寄ると背景の人工物も気にならなくなって、余白もできて印象深くなったと思います。
引いて撮るときも余白を意識して、さらにステージのカーブを生かすとアクセントになりますよ。
寺島:泳ぐペンギンを撮る場合は、進行方向の水面を広く写すのがオススメです。
稀:のびのびとしたペンギンの雰囲気が伝わってきますね!
寺島:「三分割構図」など構図の王道にとらわれず、雰囲気を優先して好きに切り取っていいんですよ。
Point
- レンズを近づけ、檻の写りこみやガラスの反射を防ぐことが大前提(檻やネットの種類によっては消えないことも)
- 動物を驚かしたり、レンズを傷つけないように、近づくときは慎重に
- 背景整理と余白を意識して、目を引くポイントをつくる
- 構図の王道にとらわれず、雰囲気優先で切り取る
動物の習性や動物園の特徴を生かす
動物の習性を知ることで自然な雰囲気に
寺島:動物に近づけない場合でも、極力人工物をフレームアウトしたいですよね!
稀:どうしても写りこんでしまうときはどうしましょう…?
寺島:実はヤギは高いところにのぼる習性があり、この園では丸太の上によく乗るんですよ! そのタイミングで狙ってみましょう。縦位置にしてみると表現の幅が広がりますよ。
稀:下にあった人工物が見えなくなって、ナチュラルな雰囲気になりました!
寺島:背景の抜けもいいですね! さらにローアングルにすると、奥の建物もフレームアウトできますよ。
稀:森の中にいるみたいです!
寺島:習性を知るために、動物園に複数回通うことがとても大事なんです。
動きの速い動物は、移動ルートを覚えて狙う
稀:徐々にコツがつかめてきました!
あと…かわいいリスをぜひ撮りたいのですが、ブレブレになってしまって…。
寺島:急に出てきた瞬間をとらえるには、連写ができないと難しいですよね。そういうときには、杭や岩場などのよく通るルートや、動きを観察すると撮影のチャンスが広がります。光を確保できる場所もチェックしておきましょうね。
稀:岩場で、すごく野生感のある写真になりました!
寺島:完全に動きが止まるわけではないので、ISO感度が高いフィルムにしておくと、シャッタースピードを速くできて安心ですよ。
食事中を狙って無邪気な姿をとらえる
寺島:加えて、ぜひ狙いたいのが「食事中」です。食事中は動きの速さに関係なく、無邪気な姿をとらえられるチャンスなんです!
このエリアではリス自身のタイミングで食事をしますが、他の動物は食事時間「もぐもぐタイム」が決まっているので、動物園に確認してみましょう。
※「もぐもぐタイム」は一般的な呼称で、井の頭自然文化園では「みてみてえさの時間だよ」という名称です。
稀:食事中は、結構じっくり撮れますね。もぐもぐしているのもまたかわいいです!!
Point
- 動物の習性を知ることで、雰囲気のある画づくりができる
- よく通るルートや光を確保できる場所を覚えておいて、じっと待つ
- ISO感度が高いフィルムで、シャッタスピードを速くできるように(天候によりますがISO400以上がオススメ ※今回はISO800)
- 食事中は無邪気な姿を狙うチャンス(動物によっては、食事の時間「もぐもぐタイム」が決まっている)
前ボケで、ふんわりした雰囲気を演出する
寺島:動物園は土や岩が多くて、引いて撮ると少しさびしい写真になりがちなんですが、前ボケでふんわり感をつくることもできます。周囲に木がある場合は、手前の葉を前ボケにしてみましょう。
稀:やわらかい印象になりますね!
まわりに木がない場合はどうすればいいでしょうか…?
寺島:その場合は落ち葉を拾ったり、100円ショップでフェイクグリーンを買っておいて、手持ちで前ボケをつくるといんですよ。
稀:そんな手が…!
稀:おお~!! 砂と岩しかない場所でも、ふんわりした印象になりました!
寺島:こうすると色味もプラスされます。動物園はモノトーンな配色が多いのですが、前ボケを差し色にすることで、やわらかさやかわいさを演出できるんです。
Point
- 葉などで前ボケを入れると、ふんわり感が出る
- まわりに何もない場所では、落ち葉などで手持ち前ボケをつくる
- 前ボケを入れると、写真に色味を加えることもできる
写真店でのオーダーや画像編集で、自分好みの世界を自由につくる
色味や明るさなどを自由に調整する
寺島:撮影後にもポイントがあります。動物写真は「本来の色味や質感を忠実に再現する」という考え方もあるんですが、私は自由に調整して「自分好みの世界」をつくりこんでいいと思っています。
稀:自分好みの世界…なんだかワクワクします!
寺島:私は「緑っぽく」「明るめ」「シャープ」が好きなので、比較してみましょう。
稀:やさしい雰囲気で、温かみがあって素敵です!
寺島:今回はスピード仕上げのお店で現像&データ化した写真から、緑とシャープさを足して、さらに温かみのある雰囲気に仕上げました。写真店で相談して調整してもらうのもいいですし、そこからさらに画像編集してもいいと思います。自分好みになるまで調整してみましょう!
トリミングで撮影後に構図を調整する
寺島:色味や明るさだけでなく、構図も撮影後に調整していいと思います。動いている動物はじっくり構図を調整する時間もないので、撮影後にトリミングする選択肢も頭に入れておきましょう。
例えば下の写真なら、左側に余白を残すようにましかくにするとどうでしょうか?
稀:右側にも余白があるときより、目を引くようになりました!
Point
- 色味や明るさなど、写真店での仕上がりのオーダーや画像編集で自由に調整してOK
- 構図は、撮影後にトリミングして調整してOK
その時々の出会いを楽しむことが何より大事!
稀:今回久しぶりに動物園に来てみて、動物たちが本当にかわいかったです!
寺島:撮影のコツはあるんですが、動物園の何よりの楽しみは「出会い」だと思います。同じ園でも来るたびに新鮮で、想像もしなかったような表情や姿を見せてくれるんですよ!
稀:動物たちを身近に感じられてうれしくなりました。また来たいです!!
食べるのに夢中で、くちばしに草がついていたり
「もぐもぐタイム」が近づき、行儀よく待つ羊の後ろ姿がかわいい!
生まれたての赤ちゃんがお母さんのお乳を飲む光景に心温まります
リスが足元まで接近!くんくん!
稀’s Photo Note
- 生き生きとした姿を写すには…囲いの写りこみを防ぎ、人工物を避ける
- 動物の魅力を引き出すためには…動物の習性や動物園の特徴を覚えて生かす
- 無邪気な姿を写すには…食事中を狙う
- ふんわり感を出すには…前ボケを入れる(まわりに何もなければ、手持ちで前ボケをつくる)
- 自分好みの雰囲気に仕上げるには…写真店での仕上がりのオーダーや画像編集で自由に調整してOK
- 撮影チャンスを増やすには…何回か動物園を訪れて、動物たちを観察する
- 何より大事なのは…その時々の「出会い」を楽しむ!
動物園撮影のルールはしっかり守りましょう!
- フラッシュの使用禁止:動物の目の病気、ストレス配慮のため
- 長時間の同じ場所の占拠NG:他のお客様の迷惑にならないよう、場所を譲り合いましょう
- 三脚や一脚は他のお客様の迷惑になる可能性があります(使用禁止の園もあります)
- カメラを構えながらの急な移動NG:撮影に夢中になって急な移動をすると人や物にぶつかります。小さなお子さんも多いので要注意
同行撮影:もなみん(@and_mona)
Supported by L&MARK
※撮影協力:井の頭自然文化園
松浦稀
撮影モデルとしてだけでなく、書籍カバーモデルやMVにも多数出演。ダンスや舞台など、積極的に表現活動を続けている。主な出演作品に舞台「中田ステーションセブン」など。はじめてのフィルムカメラを手にしたことをきっかけに、写真意欲が急上昇中。
寺島由里佳
広告雑誌媒体などで活躍。動物園にいる動物たちをライフワークとして撮り続け、動物写真の個展やグループ展開催、写真集「きょうもどうぶつえん」発売。立教大学や「カメラの学校」の講師、企業や行政とのイベント企画にて写真のワークショップ、トークショー、写真コンテスト審査員などを務める。