ニコンプラザ東京・大阪にて2021年9月14日~11月10日、NICO STOP写真展「伝えたい、わたしの世界」を開催しました。人気のフォトグラファー7名がミラーレスカメラ「Z fc」を手に、それぞれの「わたしの世界」を表現した写真たち。開催期間中はたくさんの方にご来場いただきました。
NICO STOPではその展示をWEBギャラリーとして再現。さらに、展示の裏側についてもお話をうかがいました。展示をご覧いただいた方も、行けなかった方も、写真に込められた想いを深く味わってみてください!
画像をクリックすると各WEBギャラリーをご覧いただけます。
さらに以下からは、7名のフォトグラファーそれぞれの展示のキービジュアルや、構成の関係で展示できなかった写真を紹介。それを知った上で展示を改めて見ると、また違った印象を受けるかもしれません。ぜひあわせてご覧ください!
嵐田大志「私の短く儚い夏の世界」
短く刹那的に終わってしまう夏を、子供たちの夏休みの様子を通じて撮影しました。
展示のキービジュアル
日本の夏の共通認識であったり、既視感のある光景が撮りたかったのですが、この写真はまさにそんな光景です。人が写り込まないようにし、少しさびしげな雰囲気や、夏の終わりを迎えようとしている時期の独特な空気を写したいと思いました。展示ではこの写真を中心に、多くの人が「夏」をイメージする海や山、川の写真で構成しています。
展示しなかったアザーカット
実は構成を都市光景にするか迷ったのですが、海や山でまとめたため、都市部で撮ったこれらの写真は外しました。ですが、両方ともスカッとした夏らしい青空がとても好きです。「ブルー」と「グリーン」の2色を基調にしているのがポイントで、夏をイメージできるよう“人のいない光景”を写すことで現実的に見えないようにしています。
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展示では、グランピング記事の写真も加え、自然の中で過ごす、短くも眩い子供たちの夏を写し出しました。ぜひご覧ください!
嵐田大志
東京を拠点に、家族写真や都市光景などを中心に撮影。国内外のWEB媒体や雑誌に写真を提供している他、写真教室の講師などとして活動。デジタル写真をフィルム風に編集することをライフワークの一つとしている。著書『デジタルでフィルムを再現したい』『カメラじゃなく、写真の話をしよう』(ともに玄光社)。
鎌田風花「わたしの光の世界」
自分の写真を見返したときに「光」を見せる写真が多く、「光の世界」をテーマに、私が好きな日常にある優しい光や小さなときめきを集めました。
展示のキービジュアル
雲間から光が差した一瞬のこと。まさに「こんなシーンを撮れたらいいな」と考えていたので、夢中でシャッターを切りました。彼女のモデル力にもとても感謝しています。テーマである「光」を太陽光と手前の植物の玉ボケで表現し、風になびく髪によって写真に動きを出すことができました。私の “心が動いた瞬間”です。
展示しなかったアザーカット
自然体な彼女の笑顔にときめき、最後まで展示に入れるかどうか悩んだ1枚です。同じ夕日の時間帯に撮影した写真たちの中で、時系列の流れに合う写真を選び、こちらは残念ながら外しました。
素敵な笑顔をとらえるために寄りで撮影し、表情をしっかりと写し出したかったのでアンダーにならないように、かつ夕暮れの色がとばないように気をつけました。
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今回の写真展の話がなければ、自分の写真を見つめ直す機会はなかったと思います。写真をはじめた頃の楽しいと思う気持ちを忘れず、日々を撮り続けていきたいと改めて感じました。見た方にも、写真から何かを少しでも感じてもらえればとてもうれしいです。
鎌田風花
フォトグラファーとして日本各地を撮影。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とする。家族写真の出張撮影や写真セミナーの講師、広告撮影なども手掛ける。
酒井貴弘「ポートレートと記録の世界」
これまで「表現」を主軸に撮影してきましたが、今回の被写体をお願いした友人に「残したい」という想いを強く感じ、「記録」をテーマにしました。
展示のキービジュアル
この写真は、撮影中に見つけた鏡を使って撮りました。鏡を使うことで少し曖昧なニュアンスに。“思い出としての記録”ではなく、その人の“意志や強さ、魅力を記録”できた写真だと思い、キービジュアルに相応しいと考えました。
展示しなかったアザーカット
シチュエーションかぶりや縦横の配置バランスの関係で残念ながら外しましたが、個人的にはキービジュアルと同じくらい好きな写真です。彼女のいつも接している人柄や笑顔が表れていて、一緒にいるときの空気感までも写っていると思います。
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展示では彼女のさまざまな表情や表現が見えるように、また物語が展開するように構成しました。“ただの記録”ではなく、表現としての幅を広げ、写真と向き合う僕自身の記録でもあります。
酒井貴弘
長野県生まれ。関東を拠点に活動。ポートレート・スナップを中心に、広告案件やタレント・モデル撮影、ファッションの分野で活動。特に最近では「私が撮りたかった女優展」への参加、写真集の撮影など、俳優やアイドルの撮影に強みを持った活動を行っている。マルチに活動しながらこれまでの形にとらわれない新たなフォトグラファーキャリアを模索している。
sachi「わたしの自然の中で過ごす世界」
写真を撮るほどに好きになっていった北海道での暮らし。「自然の中で過ごす世界」をテーマに、いつも通りの飾らない風景を写しました。
展示のキービジュアル
この2枚はテーマを最も表現している写真です。目の前に広がる美しい景色を眺めながら、ゆっくりと過ごすキャンプの様子。特に右の写真では、凪の時間が訪れた瞬間、目の前に鏡のような湖面が現れ、その絶景に見入りました。友人がその景色に見入っている様子を自然に写したかったので、離れすぎない距離からさっと撮影。35mm判換算42mmのほどよい画角によって「自然と人」をバランスよく切り取ることができました。
展示しなかったアザーカット
チェアリングをしているところを撮影した1枚。キービジュアルの一つに構図が近いこともあり展示から外しましたが、川のせせらぎを聞きながらコーヒーを飲む時間がたまらなく好きです。一人でのんびり過ごす至福の時間、その様子を残しておきたくてセルフタイマーで撮影しました。
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この展示では、デイキャンプ記事で撮影した写真も加え、キャンプ・デイキャンプ・登山と北海道の大自然で過ごす日常を写し出しました。北海道で暮らす空気を、少しでも感じていただけたらうれしいです。
sachi
北海道在住。エディトリアルデザイナー。北海道のライフスタイル雑誌のデザインを行う傍ら、“北海道の自然と人”をテーマにフィルム写真をメインに撮影。日々写真とデザインの組み合わせの表現を模索している。
jyota & misuzu「私の思い出の世界」
misuzuの地元であり、たくさんデートし、撮影してきた場所「香川」を訪れ、一つのアルバムを作るように撮影しました。
展示のキービジュアル
misuzu:この写真は、展示作品を撮る中で一番最後に、すべての思いを込めて撮影しました。シンプルな写真だからこそ、髪のなびき、表情、構図、一つ一つを意識して時間をかけています。どの撮影も楽しかったのですが、この写真は特に初心に返った気分になりました。
jyota:僕は夕日のシルエット写真に最も力を入れました。潮の満ち引きは常に変動し、夕焼けの時間は限られているので、時間内に二人で構図やポーズを決めて撮影するのが大変でした。カメラを設置して、気づいた頃には水たまりになっていて、ビショビショになりながら…。時間は短かったものの、すごく集中して撮影したことを覚えています。
この二つのキービジュアルは、一方は明るい昼間に撮影し、一方は暗い夕方に撮影しました。いろいろと撮影する中で、Z fcは明るい場所だけでなく、さまざまな場所で活躍するカメラだと感じたからです。
展示しなかったアザーカット
jyota:どちらも力を入れたシルエット写真です。この二つの写真を見て、Z fcはどこで撮影しても自分好みの仕上がりに撮れるのだなと実感しました。どちらも展示したかったのですが、他の写真と混ぜるとインパクトが強いため、残念ながら外しました。
misuzu:左の写真は、今回のキービジュアルの夕焼け写真の反対側です。私が立った位置から見えた空も優しい色合いで、すごく美しくドラマチックでした。「日常と思い出」をテーマに撮影していたので、裏側もいいかなと思ったのですが、展示するまでには至りませんでした。右の写真は溜池で見た夕焼けです。香川県は溜池が多く、溜池巡りをするほど。構成のバランスで外しましたが、夕暮れ時の水面反射が実に美しいです。
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Z fcで撮影していると、「ファインダーをのぞき、ダイヤルを回し、シャッターを切る」一連の動作がすごく楽しくて、学生時代に夢中になったフィルムカメラで撮っているような感覚に懐かしさを感じました。そんな原点を思い出しながら写し出した日常。少しの“理想”や“希望”を乗せた写真たちをぜひご覧ください!
jyota tomonori
カメラと植物をこよなく愛し、365日カメラを持ち彼女との日常を写真に収めている。ウエディングフォトグラファーの経験を生かして、フリーランスフォトグラファー「tsukinami」として二人で活動している。
misuzu
大学1年生のときにカメラをはじめ、作品集としてInstagramを開設。写真関係の会社を退職後、現在は広告撮影やWEBメディアでの執筆など、フリーランスフォトグラファーとして活動している。
宵月絃「わたしの小さな雨降る花の箱庭世界」
「夏の花」をテーマに考えていましたが、梅雨がとどまるように雨の日々が続き、花を見に外へ行くことができませんでした。そのときの悲しさや不安をそのまま写したいと思い、花屋さんで夏の花を選び、部屋の中で “箱庭”のような空間を想像して“花を愛でる時間”を写し取りました。
展示のキービジュアル
朝から夜へ、雨が降ってもまた晴れるように構成しています。
- [朝]シャボン玉と向日葵:雨の降りはじめる空気感から、梅雨が夏を知りはじめるタイミング。しとしとと静かに空から落ち、地面に溶けてゆくような優しいものであったらどんなによいか、想像しながらシャッターを切りました。
- [昼から夕暮れ]猫の瞳の中の夕暮れ:そして、雨が続く中、気まぐれに猫になり、人と同じように空を眺め、想いを馳せる。硝子のような瞳は小さな空がそこにあるようで、心待ちにしていた晴れの日に心をときめかせます。
- [夜、そして夜明け]月とシルエット:夜が訪れ、また朝が来るとき、同じように晴れを待っていた月がうれしさのあまり顔をのぞかせるように。朝焼けの空を撮りましたが、見る人によっては “夜のはじまり”ととれてもいいようにしました。イメージするものはあっても、感じてもらう時間は自由であってほしかったからです。
展示しなかったアザーカット
見た人がどんな植物なのか、わかりにくいと感じ外した写真です。
夜、暗がりの中で普段見えているものがあまり見えなくなるのに、そこに小さな光があるだけで安心することがあります。この写真では透かしホオズキを心に見立て、そこから溢れる感情を光で表現しました。
すり抜けてしまうような小さな感情たちも、見過ごされてしまいそうな心の声も、枯れるように消えてしまいそうな“それ”をすくいあげられたら。そう考えながら撮った1枚です。
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花といえば、外で生き生きと咲くものを撮りに行きたくなるのが自然だと思いますが、「外の世界でないと自分の好きな表現には限界がある」と勝手に思い込んでいたことに気づきました。 世界を小さくしていたのは自分で、見方や好きを広げるには自分の中の感情一つあればできるのだとも感じました。 “好きな世界”を自分で小さくしてしまわないように、今よりも視野をゆっくりと広げてゆけたら。そう感じるきっかけが今回の展示でした。
宵月 絃
四季の記憶を綴るように日常にある花や月をメインに、好きを写している花好きの一人。儚い雰囲気や、透明感のある表現を大切に。気まぐれに猫のかわいいも記録中。
トークライブのアーカイブを公開中!
NICO STOP写真展では、連動してフォトグラファーによるオンライントークライブを開催しました。アーカイブを公開していますので、ぜひこちらもご覧ください!
嵐田さん×酒井さんのトークライブ
撮影の裏話や Z fcを使ってみた感想、撮影を通して「表現」と「記録」について感じたことを対談形式でお話しいただきました。
>アーカイブはこちら
鎌田さん×jyotaさん×misuzuさんのインスタライブ
展示したお気に入りの写真を見ながら、撮影の裏話や「光のとらえ方」「思い出をきれいに残す方法」といった撮影テクニックについてお話をうかがいました。
Supported by L&MARK