オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本を Z fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

はじめまして。HASE(@mc__hase)です。「現実という名の夢の世界」をテーマに、オールドレンズでポートレート作品を撮影して、Instagramを中心に発信しています。
※本記事では、フィルムカメラ用に作られたマニュアルフォーカスのレンズをオールドレンズと呼んでいます。

 

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4

 

オールドレンズを使いはじめた理由は、現行レンズに比べて値段が手頃だったから。使っていくうちに、線のシャープさやボケ味・発色など写りに個性があることに気づき、オールドレンズでしか撮れない世界の虜になりました。

 

オールドレンズのほとんどが50年以上前に作られたものです。自分が生まれる前の時代の空気が詰まったレンズで現代を写し取る…なんだかロマンがあると思いませんか?

 

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2
Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8
Z fc、(左)AI Noct Nikkor 58mm F1.2、(右)New Nikkor 85mm f/1.8
Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8
Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8
Z fc、(左)New Nikkor 85mm f/1.8、(右)AI Nikkor 28mm f/2.8

 

これまでいろんなオールドレンズを使ってきて、今はNikkorシリーズを愛用しています。発色やコントラストはくっきりと、ボケはきれいにふわっと描写されるところが魅力で、僕の表現したいイメージにマッチしていると感じるからです。

 

今回は、ミラーレスカメラ Z fcにマウントアダプターFTZを装着して、 Nikonのオールドレンズ9本を撮り比べてみました。それぞれの写りの特徴と、個性を生かす撮り方やシーンを紹介します。
※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。

 

オールドレンズの魅力と選び方

特徴的なボケ味と光の描写を楽しむ

まずは、オールドレンズならではの写りの魅力をお伝えしたいと思います。

注目するポイントは「ボケ味」と「光の描写」です。ここでは主な特徴を紹介しますが、同じ機種でも個体差があるので、自分のレンズのクセを理解して画づくりに生かしましょう。

 

  • ボケ味:オールドレンズは、作られた年代や機種によってボケ味が大きく異なります。特徴的なのは、玉ボケがシャボン玉のように描写される“バブルボケ”や、背景が渦を巻くように写る“ぐるぐるボケ” 。そして、最もよく見られるのは、画面の外側になるほど玉ボケが楕円形になる現象です。

 

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2
Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2
Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2

 

特に夜景は玉ボケをつくりやすく、特徴的なボケ味を生かした撮影にぴったりです。モデルさんに近づくほどボケが大きくなるので、描写の違いがさらに目立ちます。

上の写真は、街灯が連なる道路沿いでモデルさんとの距離を変えて撮影しました。右のように光が放射状になるようにフレーミングすると、外側に向かって玉ボケの形が変化しているのがよくわかります。

 

  • 光の描写:オールドレンズが作られた頃は、今ほどコーティング技術が発達していないため、逆光・半逆光のときに“ゴースト”や“フレア”が出やすいです。目に見えない光の形を表現することができ、特にポートレートにおいては、エモーショナルな雰囲気を引き出すとても大切な要素になります。

 

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S

光源付近が白っぽくふんわりとしているのがフレア、オレンジ色の玉ボケのようなものがゴーストです。

 

ゴーストは光の向きに沿って出るので、上の写真のように斜めに入れるには、朝日や夕日など太陽が低い位置にあるときに撮影します。フレアやゴーストが出る位置を予測して、モデルさんなど主役にかぶり過ぎないように気をつけましょう。

表現に合わせた焦点距離を選択する

オールドレンズを選ぶ際に、まずチェックするのは”焦点距離”。レンズ選びの基本ですが、オールドレンズは単焦点のものがほとんどなので、撮りたい被写体やイメージに合わせた選択がより重要です。

ここではポートレート撮影での、広角・標準・望遠の使いわけについてお話しします。なお、APS-Cサイズの Z fcと組み合わせると、焦点距離が1.5倍になる点も覚えておきましょう。

 

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

 

  • 広角:広角レンズは、背景が広く写りこむためロケーションを生かして撮りたいときに活躍します。広角になるほどブレが目立ちにくくなるため、夜景撮影にももってこいです。注意点は、四隅が歪みやすいこと。影響を受けないように、モデルさんを中心にした構図で撮るのがポイントです。

 

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

 

  • 標準:視野に近い自然な写りで、スナップから作品撮りまでこなせる便利なレンズ。室内など、モデルさんと距離が近い撮影では特に重宝します。扱いやすいレンズなので、はじめての1本にもオススメです。

 

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

 

  • 望遠:望遠レンズは、背景を大きくぼかしてモデルさんが浮かび上がるような表現ができます。街中など情報量が多い場所や背景に写したくないものがあるときにも効果的です。ただ、手持ちの場合は焦点距離が長いほどブレやすく、開放F値が大きいものが多いのでフィルムカメラだと暗いシーンで不利になりがち。でも、デジタルで高感度に強い Z fcなら夜や室内でも安心して撮影できます。

 

ここからは、広角から望遠までのオールドレンズ9本が活躍するシーンと、写りの特徴を紹介します。表現したい世界観にマッチする1本が見つかればうれしいです。

AI Nikkor 15mm F3.5S

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

 

立体的な前玉がとても特徴的なレンズ。フードは本体に固定されています。35mm判換算22mm相当と広範囲を写せるため、観光地などでロケーションを生かしたり、河川敷や野原などの広さを表現したり、パース効果で奥行きを強調したいときにオススメです。

 

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

Z fc、AI Nikkor 15mm F3.5S(35mm判換算22mm相当)

 

超広角レンズはぼけにくいため、ポートレートで使うのは苦手意識がありましたが、このレンズはフレアやゴーストが出やすく印象的な光の表現ができる点がとてもよかったです。

くっきりとした写りになるので、曖昧な印象にしたい場合はあえて少しだけピントを外すと、フィルム写真のようなノスタルジックで温かみのある雰囲気を出すことができます。

AI Nikkor 28mm f/2.8

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とてもコンパクトでNikkorレンズらしさを感じるデザイン。35mm判換算42mm相当の画角で、室内など狭い空間でのポートレートも背景を生かして撮影できます。

 

Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8(35mm判換算42mm相当)

Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8(35mm判換算42mm相当)

Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8(35mm判換算42mm相当)

Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8(35mm判換算42mm相当)

Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8(35mm判換算42mm相当)

Z fc、AI Nikkor 28mm f/2.8(35mm判換算42mm相当)

 

このレンズは逆光状態でもコントラストがしっかりとつき、発色もいいので色をポイントにした表現にぴったりだと感じました。上の写真は、シンプルな室内やくもり空など色味の少ない空間で、花の色味をアクセントにして撮影しています。

Nikkor-O Auto 35mm F2

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35mm判換算52mm相当の画角は、人の視野に近い写りになります。世界観をつくりこんだ作品撮りはもちろん、日常を切り取ったような自然な表現にも使えるので、普段から愛用している1本です。

※Ai改造済みのNikkor-O Auto 35mm F2でなければ、FTZに装着できませんのでご注意ください。

 

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

Z fc、Nikkor-O Auto 35mm F2(35mm判換算52mm相当)

 

描写としては、発色はとてもいい反面、線が少しにじんだように写るところが個性的で気に入っているポイントです。花の色やモデルさんの肌の色はしっかりと発色しながら、線のやわらかさが花の質感と儚げな表情を引き立てます。

AI Nikkor 45mm F2.8P

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35mm判換算67mm相当の薄くて軽いパンケーキレンズ。マウント面からの長さがわずか17mmとインパクトのある薄さなので、モデルさんとのコミュニケーションのきっかけにもなり、撮影時には威圧感なくラフな姿をとらえられます。ふらっと散歩するときなど、撮影以外の外出でも気軽に持ち出せる存在感がいいですね。

 

Z fc、AI Nikkor 45mm F2.8P(35mm判換算67mm相当)

Z fc、AI Nikkor 45mm F2.8P(35mm判換算67mm相当)

Z fc、AI Nikkor 45mm F2.8P(35mm判換算67mm相当)

Z fc、AI Nikkor 45mm F2.8P(35mm判換算67mm相当)

 

こんなに薄くて軽いのに、発色がよく髪の毛などの細部までしっかりと描写できる、安心感のある写りが印象的です。開放F値2.8なので、モデルさんに近づけば背景もきれいにぼけてくれます。気軽にスナップやポートレートを撮りたい方に、とてもオススメの1本です。

Nikkor-S Auto 50mm F1.4

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35mm判換算75mm相当の画角でポートレートにちょうどよく、最も使用頻度の高い1本。Nikonのオールドレンズが大好きになったきっかけのレンズでもあり、僕が愛用しているのは約50年前に作られた一番初期のモデルです。コントラストが弱く全体的にふわっとしていて、フレアやゴーストも出やすい…とクセはありますが、しっとりとした空気感を出せるボケ味は唯一無二。作品のテーマである「夢のような世界」を表現する上で欠かせません。
※Ai改造済みのNikkor-S Auto 50mm F1.4でなければ、FTZに装着できませんのでご注意ください。

 

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

Z fc、Nikkor-S Auto 50mm F1.4(35mm判換算75mm相当)

 

開放F値が小さいポートレート向けのレンズの中では、比較的に安価で手に入りやすいので、はじめてのオールドレンズにぴったりだと思います。また、夜でもISO感度を低くしたまま撮影できるので、夜景ポートレートにもオススメです。

AI Noct Nikkor 58mm F1.2

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レンズ名にある“Noct ”は、Nocturne(夜想曲)に由来すると言われ、夜間撮影に適した設計になっています。開放F値1.2で夜の屋外や室内も明るく写すことができ、35mm判換算87mm相当の望遠で被写界深度が浅くなるため、少しピント位置を変えるだけで被写体の印象を変えられるところもポイントです。

 

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

Z fc、AI Noct Nikkor 58mm F1.2(35mm判換算87mm相当)

 

中望遠の特徴を生かしてモデルさんの顔をアップで撮ると、ピントを合わせた髪の毛は繊細に描写され、輪郭はふわっと光に溶けこみ透明感を引き出すことができました。開放F値のにじむような背景ボケも美しく、半逆光で撮るとさらにやわらかくフィルムライクな写りになります。

中古で数十万円と高価なレンズですが、F1.2の明るさとボケ味を体験したい方は試してみてはいかがでしょうか?

New Nikkor 85mm f/1.8

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35mm判換算127mm相当の望遠ながら、先ほどの58mmのレンズとほぼ同じサイズ感で持ち運びやすいです。威圧感が少なく気軽さもありながら、大きなボケや圧縮効果で写真のバリエーションを増やせます。
※Ai改造済みのNew Nikkor 85mm f/1.8でなければ、FTZに装着できませんのでご注意ください。

 

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

 

ボケはふんわりと溶けるような質感ですが、線はくっきりしていてピント面を繊細に描写してくれます。ポートレートの中でも、顔のパーツや体の一部にフォーカスするような表現に向いていると思いました。また、背景はかなりぼけるのでロケーションを伝えるというよりも、シンプルにしてモデルさんを際立たせたり、色味や玉ボケでニュアンスをプラスするような画づくりに向いています。

Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV

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人の目には見えない紫外線を可視化できる、産業用に開発された珍しいレンズ。画角は35mm判換算157mm相当で、紫外線撮影が可能なカメラと組み合わせると、普段目にしているのとは全く違う色味で世界が写し出されます。Z fcは紫外線撮影に対応していないため、色の出方は通常のレンズと変わりません。

 

Z fc、Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV(35mm判換算157mm相当)

Z fc、Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV(35mm判換算157mm相当)

Z fc、Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV(35mm判換算157mm相当)

Z fc、Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV(35mm判換算157mm相当)

 

もともと医療や科学写真などで活躍していたレンズのため、コントラストがしっかりしていて、線もくっきりと描写される印象です。開放F値4.5と大き目でぼけにくいので、引きで風景をしっかり写したり、背景を入れずに表情をクローズアップする撮り方に適していると感じました。また、順光で撮影することでよりコントラストが強くなり、写りの個性が発揮されます。

手に入りにくく高価ですが、このレンズにしか撮れない世界を楽しみたい方には、ぜひ使ってみていただきたいです。

Ai Nikkor 135mm F3.5

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35mm判換算202mm相当という焦点距離で、全長90mm以下ととてもコンパクトな望遠レンズです。長い焦点距離のおかげで、開放F値3.5でもしっかりとぼかすことができます。

 

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

Z fc、Ai Nikkor 135mm F3.5(35mm判換算202mm相当)

 

発色がよく線もシャープで、髪の毛の1本1本まではっきりと描写できるため、モデルさんから離れて髪や表情、植物全体にピントが合うように撮影しました。屋外など広い場所の場合は、背景が溶けるようにぼけてモデルさんの存在感が際立ちます。室内では背後に印象的なモチーフを入れると、ほどよく存在感を残して世界観を伝えられます。

お気に入りの1本と表現の幅を広げるレンズ

個性豊かな9本のオールドレンズを使ってみて、特に気に入った2本を紹介したいと思います。

 

  1. New Nikkor 85mm f/1.8:ボケ感と線のシャープさのギャップが魅力的。
  2. AI Nikkor 45mm F2.8P:薄型軽量の気軽さが表現の幅を広げてくれる。

 

 

New Nikkor 85mm f/1.8

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

 

1番気に入ったのは、New Nikkor 85mm f/1.8。ふんわりとしたボケとシャープな線のギャップがとても魅力的でした。開放F値1.8でモデルさんの一部分をクローズアップすると、ピント範囲がとても狭くなるので、見せたい部分にピンポイントで視線を誘導する効果があります。

 

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

Z fc、New Nikkor 85mm f/1.8(35mm判換算127mm相当)

 

このレンズで撮影したベストショットはこちらです。僕は作品の中で季節感を表現することも大切にしていて、小物で花や植物をよく取り入れます。主題のモデルさんと副題の花を画面いっぱいにフレーミングし、ピントは口元に合わせて儚さを表現しました。口元と花の距離の差はわずかですが、花は存在感を残しながらもやわらかくぼけて、ピント部分を強調することができました。

 

 

AI Nikkor 45mm F2.8P

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

 

メインのレンズ群にプラスすれば表現の幅が広がりそう…と感じたのは、AI Nikkor 45mm F2.8Pです。機材は小さければ小さいほど気軽に持ち歩けるので、その分シャッターチャンスも増えると思います。薄型で軽いこのレンズなら、食事中や街を歩いているときでもサッと撮影することができ、気合いを入れた作品撮りとはひとあじ違う表情を引き出せると感じました。

 

Z fc、AI Nikkor 45mm F2.8P(35mm判換算67mm相当)

Z fc、AI Nikkor 45mm F2.8P(35mm判換算67mm相当)

 

このレンズで撮ったベストショットは、僕の普段のポートレート作品とは違う、日常の一瞬を切り取ったようなこの1枚です。一緒に歩いているときにモデルさんが振り返った瞬間を、あえて水平を気にせず撮影しました。風になびく髪の毛の躍動感と自然な表情が、ナチュラルな魅力を引き出しています。

 

オールドレンズの買い方と注意点

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

 

オールドレンズは中古品がほとんどなので、状態をよく確認してから購入するのが大切です。ネット上でもたくさん出回っていますが、僕は中古カメラ屋さんで実際に手に取って、自分の目で確認してから買うようにしています。必ずチェックするポイントは以下の4つです。

  1. AI方式レンズか
  2. レンズ内にホコリやカビが付着していないか
  3. フォーカスリングが正常に動くか、オイルが絞り羽根に付着していないか
  4. マウント部分にヒビや破損がないか

はじめにチェックしてほしいのは「AI方式レンズかどうか」で、フィルムカメラの中にも非AI対応レンズが取りつけられないものがあります。また、Zのカメラにオールドレンズをつけるときに使用するマウントアダプターFTZは、非AI方式のレンズは使うことができません。
※AI対応レンズとAI非対応レンズの見分け方はこちら
※AI非対応レンズでもAI改造済みのものであれば、FTZに取りつけることができます

 

Photographer's Note

各種オールドレンズの特徴まとめ

  1. AI Nikkor 15mm F3.5S:くっきりとした描写で風景を生かした撮影にオススメ。
  2. AI Nikkor 28mm f/2.8:高コントラスト・高発色。色をアクセントにした表現に◎。
  3. Nikkor-O Auto 35mm F2:しっかりとした発色と、にじむような線の描写が個性的。
  4. AI Nikkor 45mm F2.8P:薄型軽量で威圧感がなく、自然な表情を切り取れる。
  5. Nikkor-S Auto 50mm F1.4:しっとりとしたボケ味は唯一無二。ぜひはじめの1本に。
  6. AI Noct Nikkor 58mm F1.2:開放F値1.2で夜や薄暗い室内も低感度で明るく撮れる。
  7. New Nikkor 85mm f/1.8:溶けるようなボケとピント面のシャープさが魅力。
  8. Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV:コントラストが強くシャープな描写が印象的。
  9. Ai Nikkor 135mm F3.5:望遠なのにコンパクト。細部まで繊細に表現できる。

 

 

オールドレンズの魅力は、それぞれに写りの個性があることです。同じ機種のレンズでも、作られた年代などにより発色やシャープさ、ボケ味、フレア・ゴーストの入り方が異なり、同じ景色を撮ってもまったく違う表情を見せてくれます。表現したい世界観とオールドレンズの個性をかけ合わせて、“自分にしか撮れないもの”を生み出すこと。それが、僕が作品撮りで大切にしていることです。

 

MFでの撮影は難しく、はじめは「後でデータを確認したらピントが外れていた…」ということもたくさんあると思います。でも撮り続けるうちに、完璧ではない写りが愛おしく感じたり、ピント位置のわずかな違いによる印象の変化など、たくさんのことに気づけるはずです。

ぜひ、みなさんもいろいろなオールドレンズを試して、自分にしか撮れない写真を探してみてください。

 

 

Z fc+オールドレンズで撮影してみて

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

 

Z fcをはじめて見たとき、これまでのNikonのデジタルカメラとはまったく違う、フィルムカメラのようなレトロ感のあるかわいらしいデザインにとても惹かれました。もちろん、フィルムカメラのために作られたオールドレンズとの相性も抜群です。

 

オールドレンズ×ミラーレス – オールドレンズ9本をZ fcで撮り比べ!写りの個性を生かしたポートレートの撮り方

 

ボディーの天面にはシャッタースピードやISO感度、露出補正のダイヤルがついていて、設定が確認しやすく撮影しながらの操作もしやすかったです。MF撮影で重要なファインダーの映像がとてもきれいで、次々とシャッターを切りたくなる、心地よい操作感が印象的でした。はじめてカメラを購入する方にもオススメしたいです。


※機材名が入っていない、Z fcやオールドレンズを撮影した写真は Z 5で撮ったものです。
Model:akari.(@_aarisn_)、サラ(@sa_ra_gram07)、yue(@meiyue7702
Supported by L&MARK

 

 

Z fc

Z fc

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AI Nikkor 15mm F3.5S

AI Nikkor 15mm F3.5S

AI Nikkor 28mm f/2.8

AI Nikkor 28mm f/2.8

Nikkor-O Auto 35mm F2

Nikkor-O Auto 35mm F2

AI Nikkor 45mm F2.8P

AI Nikkor 45mm F2.8P

Nikkor-S Auto 50mm F1.4

Nikkor-S Auto 50mm F1.4

AI Noct Nikkor 58mm F1.2

AI Noct Nikkor 58mm F1.2

New Nikkor 85mm f/1.8

New Nikkor 85mm f/1.8

Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV

Ai-S Nikkor 105mm F4.5 UV

Ai Nikkor 135mm F3.5

Ai Nikkor 135mm F3.5

※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するには、マウントアダプターFTZを装着する必要があります。
※Ai改造済みのNikkor-O Auto 35mm F2、Nikkor-S Auto 50mm F1.4、New Nikkor 85mm f/1.8でなければ、FTZに装着できませんのでご注意ください。

HASE

HASE

「現実という名の夢の世界」をテーマに、オールドレンズでポートレートを撮影してInstagramを中心に発信。オールドレンズの描写を生かした写真に手書きの文字を添えた、物語を感じる作品が人気を集めている。