こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

みなさん、はじめまして。フォトグラファーの髙田鴻平(@paddy193018)です。
主に料理のメニューや商品撮影をしていて、シズル感のあるライティングで被写体の魅力を引き立たせることをモットーにしています。
元々、料理は趣味で記録程度に撮るだけでしたが、徐々に料理にこだわるようになり、それにつられ写真もこだわるようになっていきました。ですが、自宅は自然光が入らず、思い通りに撮れないことにもどかしさを感じるように。そこで、家でライティングをしはじめ、“家にあるもの”で工夫して撮影をするようになっていきました。
 

こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

この投稿のように、身近なものでセッティングして撮影をしています。

 
今回は、自宅で自然光が入らない場合でも、「自然光のような世界観」で撮影できるセッティングと撮り方のポイントを紹介します。
 

「こう撮るとこうなる」自然光を再現するセッティング

Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
 
このような写真を、自然光が入らない部屋でも再現できます!
今回は2つのセッティングを紹介します。

①懐中電灯でライティング

Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
 
1セット目は、懐中電灯を光源にして「窓からさす朝の自然光」を再現するセッティングです。光がない状態で撮るとテカリがまったく出ないので、ライティングで印象が一気に変わります。
 
<準備するもの>
こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます
  • 懐中電灯:白い光のもので朝の光を再現します。極力明るい、防災用など夜に部屋をしっかり照らせるものがオススメ。100円ショップなどで購入できるものでは光量が足りない可能性がありますが、まずは家にあるもので試してみてください。なお、平べったい長方形型のものは影がきれいに出ないのでご注意ください。
  • レースカーテン:薄すぎると影も薄くなるので、ある程度厚いものが◎。
  • 物干し:クロスに開くものなら一つでレースカーテンと懐中電灯をセットできますが、レースカーテンの後ろに懐中電灯という位置関係ができれば何を使っても大丈夫です。
懐中電灯の固定はどんな手法でもいいのですが、僕は「角縛り」という結び方で固定しています。
※長くなるためここでは割愛しますが、「角縛り」で検索するとすぐにやり方がわかると思います。
 
 
<セッティング>

こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

 
  • ライティング:サイド光が料理を立体的に写せるため、カメラから見て90°の位置に懐中電灯をセット。カーテンから出る光と影を、被写体の主役(今回の場合、お弁当のシャケ)に当てるようにします。
    また、少ない光量で成立させるには、壁に寄せるなどして部屋の一部だけを切り取ります。
  • 配置:1〜2人分の量を想定した場合、小さめのテーブルでも余白ができることがあります。その場合、端に寄せて構図を決めます。
 
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
 
レースカーテンの効果
カーテンから漏れ出る優しい光を被写体に当てることで陰影が生まれ、立体感が出ます。カーテンがなく光を直接当てると影が濃くなり、背景の壁も暗くなりがちです。特に背丈がある被写体を撮る場合、光源の反対側が真っ黒に写ってしまいます。
 
アレンジのポイント
ブラインドを使うのもオススメです。なお、影が映ればどんな手段でもいいので、本物でなくても段ボールや厚紙で自由に切り貼りして枠を作成してもOKです! アクリルボックスに水を入れて影を作るのもきれいですよ。

②LEDライト1灯でのライティング

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、(左)NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、(右)NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
 
2セット目は、造花の観葉植物に光を当てて、木漏れ日を再現しています。1セット目より広い範囲を照らすために、懐中電灯より光量のあるLEDライトでライティングする撮り方です。コーヒーを注ぐシーンを撮る上で速いシャッタースピードが必要で、明るいほど余裕が出ます。LEDライトをお持ちの方はぜひお試しください。
 
<準備するもの>
こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます
  • LEDライト:動画向けの定常光タイプを使います。僕が使用しているのは「Godox ML60」です。60Wあれば十分で、今回の作例より広い範囲を撮りたい場合は100~200Wほどのものを使うと余裕があります。
  • 観葉植物(造花):できるだけ枝先が小さいものが、きれいな影が出てオススメ。目安は、ドウダンツツジくらいの細さです。
  • スタンド類:植物をぶら下げるだけなら物干しなどで十分です。重いものを吊るしたり、高さを細かく調整したい場合は、撮影用のスタンドを用意したほうがいいでしょう。私はライトスタンドに観葉植物をぶら下げています。
 
<セッティング>
こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます
こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます
 
  • ライティング:被写体の背景全体に光が当たり、植物の影が余白に入るよう位置を調整します。
    影は小物と同列に扱います。余白が大きいと不自然さが出てしまうのですが、植物の影が加わることで「ただの壁」から「光がさす部分」へと変わります。
  • 配置:まず主役を決め、構図中央に(今回はコーヒーが注がれるカップ)。主役の前後に物を置くと、それらがきれいにボケてくれるので、1枚の写真の中で立体感が増していきます。
 
Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、(左)NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、(右)NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
 
ライティングの利点
2セットとも自然光が入る部屋であれば、光源を設けなくても撮影可能です。ですが、自然光の場合は15分もすれば光量や影の位置が変化します。その点、再現性のあるライティングは、時間を気にせず同じ光の条件での撮影が叶います。

自宅撮影での機材や設定のポイント

ここからは、自宅でライティングして撮影する際の機材や設定のポイントを紹介します。

【機材】バリアングル式画像モニターのカメラが◎

  • カメラ:暗めな部屋でライティングして撮影する場合、ISO感度を上げることが多いため、高感度に強いカメラが安心です。また、三脚に固定して撮る際、位置を確認しながらシャッターを押すので、一人の撮影ではモニターの角度を自由に変えられるバリアングル式が重宝します。
 

こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

 
  • レンズ:料理や物撮りでは、標準~100mm程度の焦点距離がほどよいです。
 
Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
Z f、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、(左)NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、(中央)NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、(右)NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
左から、40mm、70mm、105mm
 
特に50mm前後の画角が、狭い場所や出かけ先のお店でも撮りやすいと思います。今回40mmをはじめて使いましたが、これ以上広角にすると食器がゆがむので、絶妙な画角です。
 
Z f、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z f、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z f、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z f、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
Z f、NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
左から、24mm、35mm、50m、70mm
 
焦点距離ごとの食器のゆがみや背景の写る範囲を比較してみると、広角ではサイズの違和感が出てくると考えています。
 
  • 三脚:短時間でさまざまな角度から撮りたい場合は手持ちのほうがスムーズですが、位置を微調整しながらじっくり撮る際は三脚がオススメです。また、自分の手も入れて撮りたい場合は三脚推奨です。
こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

僕が使っているのは、Manfrottoの290XTRAアルミニウム3段三脚+3ウェイ雲台キット「MK290XTA3-3W」です。望遠でテーブル全体を撮る場合は、三脚の高さが必要になるので170cm以上あるといいでしょう。また、軽すぎる三脚はシャッターを押した際に微妙な振動でブレるので、ある程度重さと強度は必要です。軽い三脚の場合でも、レリーズやタイマー撮影、リモートシャッターなどでカメラに触れずに撮るなどの工夫でブレは回避できます。

【設定】主役を明確にするF値とピント合わせ

  • F値:優先度が高いのはF値です。主役のみ際立たせるか、全体を写すかなどに合わせ、調整します。
 
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
左から、F4、F8、F16
 
被写体との距離が近い場合、F4~F16で撮ることが多いです。上の写真では、シャケを主役にする上でF4がベストでした。なお、マイクロレンズで寄る場合は、ある程度絞らないとボケすぎて主役以外の情報がわからないので、F8前後で調整するようにしています。
 

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
F2.8
 
なお、焦点距離50mm程度で引いてテーブルや壁など部屋の雰囲気全体も撮りたい場合、F値は開放気味でも雰囲気は出ます。
 
  • シャッタースピード:動きがない被写体の場合は被写体ブレがないので、シャッタースピードを遅くして光量を稼ぐことができます。注ぐシーンなど動きのある被写体の場合、動きがピタッと止まっているほうがシズル感があると考えているので、高速シャッターで撮影しています。
 
Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
Z f、NIKKOR Z 40mm f/2(SE)
左: 1/30秒(ISO100)、右: 1/500秒(ISO800)
 
  • ISO感度:低く設定するのを基本に、コーヒーを注ぐ瞬間など動きがある場合は、シャッタースピードを上げるためにISO感度を上げて調整します。
  • ピント:シングルポイントAFとMFで合わせています。AFである程度の位置にピントを合わせてから、モニターの表示を最大まで拡大してMFで微調整します。
 
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
Z f、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
ピント位置:左から、手前、中央、奥
 
ピントを合わせるのは画面中央付近で、そこに主役を配置します。特に開放F値気味で撮る場合は、少しずれるだけで雰囲気が変わるので、しっかり確認して合わせましょう。
こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

左の写真のように、注がれるコーヒーにピントを合わせたい場合、カメラからの距離がほぼ同じになる、カップの持ち手などに合わせます。

  • 縦位置/横位置:低いものから高いものまで1枚に収めたい場合、縦位置で撮ることが多いです。横位置で収めようとすると、光の当たるエリアが足りなくなる可能性があります。

Photographer's Note

機材をそろえて本格的に撮る楽しさもありますが、元から家にあるもので工夫して撮影するのはとても楽しいです。
写真は、1あるものを10にも100にもしてくれるツールだと考えていますが、そこに0から自然光を組み上げる要素を合わせると、楽しさがさらに増えていきます。自然光を再現するのは意外とうまくいかないこともありますが、理想や妄想を形にできますし、思い通りにできたときが気持ちいいです。
思い通りに撮れたときの感動を、ぜひみなさんも体験してみてください!
 
今後は、昼に夜を再現してみたり、さまざまな部屋を再現してみたいと考えています。
好きなアニメの中で、偽物には本物になろうという意思があり価値がある…というような言葉が出てきます。まさに僕は「偽物を創造する楽しさ」に魅了されています。そのために本物の自然光を今よりも観察して、今後の撮影を楽しんでいきたいと思います。
 
Nikon機材を使ってみて

こう撮るとこうなる!家で自然光を再現する撮影のヒミツを、プロフォトグラファーが教えます

 
今回は Z f を使いましたが、持ち歩きたい見た目と本格的なスペックがとても気に入りました!
 
  • デザイン:以前使っていたフィルムカメラと質感が似ていて、懐かしい気持ちになりました。飾っていてもおしゃれです。
  • 操作性:モニターはバリアングル式で、三脚に固定して一人で撮影する際に非常に便利です。また、ついつい親指でフィルムを巻き上げたくなるような握り心地が好きです。クラシカルなダイヤルを触ると、「カメラを使ってる!」欲を刺激してくれます。
  • AF:薄暗い部屋でも吸いつくように速く、ノーストレスで撮影でき、感動しました。
  • 描写:仕事でも十分に使える、満足のいくレベルです。
  • レンズ:NIKKOR Z 40mm f/2(SE)とNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sを主に使用しました。40mmは驚きの軽さ。105mmは描写力が高く、重心がカメラ側にあるため安定しますし、三脚を使うときも安心でした。
Z f は、自宅内の撮影はもちろん、持ち歩いて日常や出かけた際の思い出を撮影したいカメラです。

 

 
 
 
Z f

Z f

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z 40mm f/2

NIKKOR Z 40mm f/2(SE)

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

製品ページ ニコンダイレクト
20190523173950

NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

製品ページ ニコンダイレクト
髙田鴻平

髙田鴻平

料理のメニュー撮影や商品撮影を主に行う。“視覚だけで五感以上の感動を。”をテーマに、シズル感のあるライティングで商品の魅力を引き立たせることを得意とする。