私と写真、自分らしい楽しみ方 – 野口花梨「写真は自分の知らない世界に連れて行ってくれる」

私と写真、自分らしい楽しみ方 – 野口花梨「写真は自分の知らない世界に連れて行ってくれる」

ふと目に留まった写真。
あの人の写真に、なぜ心が動かされるのでしょうか?

 

この企画では、日々カメラで写真撮影を楽しむ方をピックアップし、「写真をはじめた理由」「写真の魅力」「愛用カメラ」「写真を撮り続ける理由」を教えていただきます。

 

私と写真、自分らしい楽しみ方 – 野口花梨「写真は自分の知らない世界に連れて行ってくれる」

 

今回は、ポートレートやスナップ写真が素敵な、写真家の野口花梨さん(@nk_photo)です。

 

はじめまして、写真家の野口花梨です。
仕事では農業や暮らしにまつわる取材撮影をメインに、料理や手芸などを撮影したり、プライベートでは人物のポートレートを撮ることも多いです。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:沖野薫
Z 6II、(左)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、(右)AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:(右)沖野薫

 

夏と冬には、大学時代から通っている北海道の牧場を訪れて、風景とその土地の暮らしの写真を撮っています。北海道の果てしなく広い景色がとても好きです。

 

Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR
Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR
Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR

カメラで撮りはじめたきっかけと写真の魅力

はじまりは、塾講師に勧められた「高校の写真部」
小さい頃は、旅行先で親のコンパクトデジタルカメラを使って写真を撮ることはありましたが、本格的にはやっていませんでした。絵を描いたり、工作が好きで、高校の美術系の部活に興味を抱くように。その中で塾講師に「この高校に行くなら写真部がいいよ」と教えてもらったことがきっかけで、写真部に入部しました。

 

入部するとすぐに写真の楽しさにハマり、自分のカメラを持ち写真をはじめました。写真部の撮影会(モデル撮影、お寺巡りなど)に参加したり、伝統工芸士の元を頻繁に訪ねて撮影させてもらったり、地域の広報誌の連載企画でお店や職人などを尋ね撮影したり。「モノづくりをしている人の話を聞いて写真を撮る」のが好きでした。

 

憧れを抱いた写真家
大学1年の頃にサラ・ムーンさんを、大学2年の頃に花代さんを知り、“その人らしさ”のある写真の色味を確立していることに憧れを抱きました。

 

 

被写体のよさ、撮ったときの感情まで写る写真を撮りたい
Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S/モデル:鈴木里菜
Z 6II、AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:沖野薫
Z 6II、(左)NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、(右)AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:(左)鈴木里菜、(右)沖野薫

 

現在はプライベートでは、友人やSNSを通じて出会った人のポートレートをよく撮影しています。
高校卒業まではあまり撮ってこなかったのですが、大学に進学し、俳優業・モデル業をしている友人ができて、自然とポートレートを撮らせてもらうようになりました。

 

ポートレートの楽しさは、「写真を通して被写体のことをより好きになれること」です。
撮影時から信頼関係を築けていないといいポートレートを撮ることは難しいですが、撮影後しばらくして、ふとしたときに撮影写真を見て「ああ、この人のこの表情好きだな」と思い返す時間が好きです。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/モデル:本間愛波、本間里彩(ボックス・コーポレーション)

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/モデル:本間愛波、本間里彩(ボックス・コーポレーション)

 

こちらの写真は、高校生と中学生の姉妹を撮影した写真ですが、大人びたアンニュイな表情が気に入っています。「写真を撮るときと会話をしているときのギャップがおもしろかったなあ」と写真を見ると思い出します。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

日常生活や旅先では、「記録」的な意味で撮影することがほとんどです。
目に留まるような光景に出会ったとき、写真を必ず撮るようにしています。それは、シャッターを切ったときの感情まで1枚の写真に宿るような気がするからです。また、実際に目で見た景色と、自分が見たいように切り取った写真との違いもおもしろいところです。

会社のカメラを自分でも購入し、愛用カメラに

私と写真、自分らしい楽しみ方 – 野口花梨「写真は自分の知らない世界に連れて行ってくれる」

 

私は現在、Nikon Z 6IIを愛用しています。
元々は勤める出版社写真部の機材がNikonで、会社機材として使いはじめました。人物や風景、料理などの撮影で使用しているうちにZ 6IIの使い心地が気に入り、個人的にも購入したのです。

 

 

Nikonの「自然な描写」「AFの速さ」がお気に入り
機材にはナチュラルな写りを求めています。
その点、Nikonは色や質感など、実際に目で見たときの空気感をそのまま再現できていると感じます。過度な演出がないところが好きです。

 

Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR
Z 6II、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
Z 6II、(左)AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR、(右)NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

 

左上の写真はシャープでありながら質感はきちんと残り、右上の写真はボケがきれいで奥行き感が増しています。ボケ方もとても自然です。

 

設定は、ピクチャーコントロールを「ニュートラル」にすることが多いですが、引き締まる「スタンダード」/やわらかく撮れる「ポートレート」など、イメージによってモードを変えるだけで、被写体の魅力や空気感を写し出せるところも気に入っています。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
Z 6II、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
Z 6II、(左)NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR、(右)NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

 

撮影した写真は、LightroomやNX Studioで調整しています。Nikon純正の「NX Studio」は細かい調整をしやすく、実物に忠実にしたい写真のとき(ドキュメントなど)にとても便利です。編集で「色味を変える」というより、「トーンをつくる」というイメージで調整しています。 

 

私と写真、自分らしい楽しみ方 – 野口花梨「写真は自分の知らない世界に連れて行ってくれる」

 

レンズはこれまで単焦点レンズを基本にしていましたが、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使ってからはズームレンズも多用しています。NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sは、明るい上にAFが速いので重宝しています。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

レンズにおいて、AFの精度(ピントの正確さや速さなど)は重要なポイントです。NIKKORレンズは、AF性能が優れていて、とにかくピント調整が速いと感じています。
上の写真は、バスでの移動中に撮ったものですが、被写体に対して素早くAFが作動してくれました。

 

Z 6II、NIKKOR Z 70-180mm f/2.8

Z 6II、NIKKOR Z 70-180mm f/2.8

 

夜など暗所でのAF精度もポイントです。この写真は夜の花火大会時に撮影したもので、暗い中で的確にピントを調整してくれました。

 

学生時代にハマったフィルムカメラ

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S/モデル:hitomi

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S/モデル:hitomi

 

高校3年生の頃、写真部の顧問の先生に「フィルムカメラを使ってみないか」と言われたことがきっかけで、フィルムカメラをはじめました。

 

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S
FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S
FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S

 

デジタルとは違い、すぐに写真が見られないことが、新鮮で楽しかったです。大学生の頃は暗室作業がとても好きで、カラープリントをよく行っていました。
フィルムでとらえる光は繊細で生っぽく、質感を美しく表現できます。今は確認が必要な撮影も多く、フィルムを使用する機会があまりないのですが、フィルムにしか表現できない階調の美しさがあると考えています。

 

 

オールドレンズの魅力

Z 6II、AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:沖野薫

Z 6II、AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:沖野薫

 

私は、デジタル×オールドレンズでも撮影します。オールドレンズの魅力は、ボケ味と階調の豊かさ。今回使用したAI Nikkor 50mm f/1.4Sは、開放で撮るとかなり明るく、きれいに前ボケを生かすことができました。暗部のディテールの表現も好みです。

写真撮影で大切にしていること

カメラを持ち歩く
Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、(左)AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR、(右)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

大きくて重いカメラでは持ち歩くのをためらってしまうことも多いかと思いますが、ミラーレス機は軽くて持ち運びやすく、「写真を撮りたくなる」気持ちがかなり増すと感じます。
カメラを持って歩くと、いつもの景色がまったく違って見えます。道に生えている草花や蜘蛛の巣も美しく感じることがあり、ついついたくさんシャッターを切ってしまいます。

 

 

その時々の天候・光を生かす
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/モデル:minky
Z 6II、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
Z 6II、(左)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、(右)NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR/モデル:(左)minky
くもりの日に撮影

 

自然光での撮影で、晴天であれば陰影のついた写真、くもりであればディテールや写真の階調がうまく出ますし、雨であればずぶ濡れになってドラマチックなイメージなど、その時々の天候や光を生かしています。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
山の上で風が吹く中、夕日がきれいに差しこみ、ドラマチックな写真に。個人的に風がある日が好きです。

 

 

どんな被写体であってもコミュニケーションを大事に
Z 6II、AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:沖野薫
Z 6II、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
Z 6II、(左)AI Nikkor 50mm f/1.4S、(右)NIKKOR Z MC 50mm f/2.8/モデル:(左)沖野薫

 

ポートレートを撮るときは、基本的に会話をしながら撮影します。相手との距離感を大切に、無理なポージングを強いるなどは避けて、なるべく被写体に不快感を与えないように。被写体の素敵な一面や好きな仕草を発見しながら、「その人らしさ」を忘れずに、お互いに楽しい雰囲気で撮影することを心がけています。
空気感が合う相手の場合は、ほとんど話をしていない段階で撮影した1枚目の写真が一番いい、なんてこともありますね。

 

Z 6II、NIKKOR Z 35mm f/1.8 S/モデル:鈴木里菜
Z 6II、AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:鈴木里菜
Z 6II、(左)NIKKOR Z 35mm f/1.8 S、(右)AI Nikkor 50mm f/1.4S/モデル:鈴木里菜

 

ポートレート撮影では、あえてノーファインダーで撮影したり、垂直平行を崩したりして、自由に撮ることも多いです。被写体も「カメラを構えられている」という感覚がなくなるのか、ナチュラルな表情をとらえることができます。

 

Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR
Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR
Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR

 

動物においても関係性は大切です。
経験上、動物は人間への興味が強く、自然と寄ってくることが多いです。私は正直なところ野生の動物に対して怖いと感じることもあるので、動物とコミュニケーションがうまく取れるタイプではありません。ですが、見知らぬ相手が「怖い」のはお互い様なので、恐怖心を見せないようにしています。

 

プライベートと仕事での撮影で意識していることの違い
プライベートの作品撮りでは、少し抜け感のある、決まりすぎていないイメージを求めることが多いです。モデル・スタイリスト・ヘアメイクと各々のやりたいイメージを持つ中、ズレが生じないように意見のすり合わせが重要だと考えています。
仕事の撮影では、クライアントや編集者の求める像を忠実に再現することを努め、自分自身の個性をどこまで出すべきかを考えながら撮影しています。

写真を撮り続ける理由

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S

 

一貫して、写真は「自分の知らない世界に連れて行ってくれる」と感じています。
遠くに足を運ぶきっかけや、身近なものを大切に思うきっかけなど。カメラを持たなかったら、全然違う人生だったのかなと思ったりもします。

 

Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR

Z 6II、AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR

 

この写真は、北海道の天塩町という町で撮影したものです。大学1年生から、かれこれ10回ほど訪れ、今ではすっかり第二の故郷に。この場所にたどり着いたのは「雄大な地で写真を撮りたい!」という思いが理由の一つにありました。写真をやっていなかったら、こんな景色も見られずにいたのかもしれません。

 

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S

 

友人宅で、みんなでローストビーフを食べたときの写真です。もう何年も前ですが、この写真1枚であのときの幸せな気持ちがよみがえってきます。

 

 

写真とこれから
1年後、10年後と、「撮りたいもの」はきっと変わってくると思いますが、今は人・動物など生物のポートレートを撮っていたいと考えています。

 

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S/モデル:小川未祐(ディケイド)
FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S/モデル:小川未祐(ディケイド)
FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S/モデル:小川未祐(ディケイド)

 

温度や匂いなどその場の空気感が残り、自分で言うのも変ですが、この写真は「心が通っているな」と感じます。
AIで何でもできてしまうからこそ、「自分にしか撮れない写真」を極めて、撮り続けていきたいです。
最後に、これまで撮影してきた写真ギャラリーをお届けします。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
奥の山側に霧がかかっていて、外国のような風景に惹かれました。

 

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S

FM2、AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S
しましまのコーンがかわいいなと思い、つい撮りました。質感も気に入っています。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/モデル:minky

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/モデル:minky
アクセサリーのきれいな光の反射。髪がなびいているのも好きです。

 

 

 

 

 

 

20190523173949

NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

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NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

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NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

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20190523173946

AI Nikkor 50mm f/1.4S

製品ページ
※ Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズを使用するには、マウントアダプターFTZやFTZ IIを装着する必要があります。
jyota

野口花梨

2022年3月、日本大学芸術学部写真学科を卒業。2022年3月 個展「あたたかい身体」をギャラリー千年にて開催。2022年11月 「Dialogue with photography #2 above a nature」神保町テラススクエアでのグループ展に参加。2023年「私が撮りたかった女優展 in PARCO 2019~2023」の浦和PARCOでの展示に参加。女優・上白石萌歌 写真展「かぜとわたしはうつろう」に参加。