こんにちは。フォトグラファーの土田です。
前回は「食べるように撮る—美味しいを感じる料理写真の撮り方」というタイトルで、出来上がった料理をいかに美味しそうに撮影するかというテーマでお話させていただきました。
今回は完成された料理写真だけではない調理写真の魅力、撮り方について書いていければと思っています。
調理の過程を知ることで料理もますます美味しく感じられます。それでは順番に見ていきましょう!
※本記事は、2020年7月9日に公開した記事を修正したものとなります。詳細はコチラをご覧ください。
調理写真の魅力
まずは、料理写真の中でも僕が特に調理中の写真を撮ることになぜハマったのか、その理由をお話させてください。
①撮っていくうちに料理が美味しくなっていったこと
以前は全くと言っていいほど料理をしなかったのですが、料理の写真を撮るようになってスーパーに行くことも増えました。
行く度に食材の旬なども自然と見るようになり、そうやって旬のものを食べると以前より美味しく感じられるんですね。そうして美味しい→撮りたい→美味しいの循環にハマっていったんだと思います。
②一度でたくさんの状態を写せる
例えばナスは分かりやすいと思うのですが、そのままの状態だとしっかりとした触感があるけれど、煮浸しにするとヒタヒタとした柔らかい印象になります。一つの料理を撮っていても変化していく過程が大きいのが楽しいです。
初めは、料理の写真を撮るといっても何をしたらいいのか分からず、最初から最後まで(食材が料理になるまで)撮っていたら、完成された料理も素敵だけど、それが変わっていく過程も面白いと思うようになりました。
ここでお気に入りの料理の写真たちを紹介させてください。
特に餃子がお気に入りです。
キャベツのザクザク感、混ぜている時の躍動感、モチっとした皮の質感、焼いている時のジューという焼き音。完成カットでは見えなかった変化が、調理の過程には詰まっています。
実際の撮り方、意識していること
それでは実際に撮り方や意識していることについて書いていきます。
ポイントは以下の三つです。
①効果音をイメージする
②アングルで臨場感を出す
③シャッタースピードで動きを表現する
それでは順番に見ていきましょう。
①美味しいポイントを表現する効果音をイメージする
食材そのものが持つ素材感、調理中の食材が変わっていく様子(切ったり、焼いたり、煮たり)など、自分が魅力に思うポイントは人それぞれなので、あくまで一例として聞いて頂ければ。
僕は特に動きのあるカットが好きなので、そこをよく撮るようにしています。
ポイントとしては、「効果音をイメージできるか」が一つの基準です。
例えば、ネギを”ザクザク”切っているところ。
“ザクザク”は、元気な印象があるから躍動感を出してみようと考え、
あえてシャッタースピードを遅くしてみたり、グッと近づいてみたりして強い絵を作ろうとすることが多いです。
例えば、ナスを”グツグツ”煮ているところ
”グツグツ”は、少ししっとりした印象があるから落ち着いた絵にしよう。
と考え、全体の明るさを暗めにして湯気の湧き立つ感じを強調したり、構図も水平を保ってしっかりとした印象を作ります。
例えば、唐揚げが”じゅわじゅわ”しているところ
動きのあるカットが好きと書きましたが、逆に動かない素材としての美しさにも魅力を感じています。
モモが”しん”と佇んでいるところ
といったように、その音を自分なりにどう表現しようか?と考えています。
②アングルや撮影位置で臨場感を出す
次はアングルについてです。撮る場所や角度によって与えられる印象は変わってきます。
切っているところは、低い位置から少し煽り気味で撮ると、臨場感や力強さが伝わりやすいなと思って撮っています。
また少し斜めの構図にすることでも躍動感を伝えられます。
今回はNikonのZ 50をメインに使っているのですが、モニターを見ながら撮影できるのでとても簡単でした。このサイズのカメラでモニターが大きく見えるのは嬉しいです。
落ち着いた写真や説明的なカットを撮る場合は、工程の全体が見えるため、真上や、斜め上から撮るとわかりやすいです。
Z 50はグリップが深いので、手持ちで真上から撮影する場合にもしっかり手に馴染んでくれて、安心感があります。
③シャッタースピードで動きを表現する
最後に動きの捉え方についてです。
調理の工程では、必ずと言っていいほど動いたカットを撮ることになります。それをどう捉えるか。
基本的にはシャッタースピードを上げて、被写体を止めてあげるのがいいと思います。
(僕は1/125~1/250くらいで撮ることが多いです)
肉眼では見られないような一瞬を捉えられるのは、写真の大きな魅力です。
逆に、より自分の目で見たものに近い表現をするならぶらしてみてもいいと思います。
炒めている臨場感が力強く伝わります。
(1/30~1/60くらいで撮ることが多いです)
自然光の入る場所で撮影する
では実際にどういう環境で撮影しているの?というと、リビングにガスコンロを持ってきて撮ることが多いです。
光をたくさん取り込みたいこともあってそうしています。(我が家のキッチンには窓がないんです…)
何の変哲もないシェアハウスのリビングです。
撮影では、料理する方から見て左側に窓がある状態で撮影しています。
撮った写真を見ていただけたら分かるかと思うのですが、基本的に左側から光が入っていることが多いと思います。太陽光が強すぎたらレースのカーテンで遮光したり、光が弱いなと思ったら、窓側にライトを置いたりもします。
また仕事の写真ではレフ板を使いますが、自宅で撮る場合はほとんど使用しません。影が強い写真が好きというのもあって、その影を楽しんで撮るようにしています。
より臨場感を持たせるためのTIPS
最後に撮影それ自体とは関係ないのですが、よりよく見せる小ネタになります。
焼き面を裏返すときがチャンス
イカなど焼き目が綺麗に現れてくる食材は、裏返した時が一番のチャンスだと思います。皮の香ばしそうな姿が食欲をそそります。
火を止めた瞬間を狙う
火を止めたあとに水蒸気が湯気に変わるのでそこは狙いどころです。
ただ湯気が多すぎると絵がぼやけてしまうので、そこは注意すべき点だと思います。
焼いてるものの後ろに、水滴を垂らす
いつも使うほどでないんですが、アクセント的に。
スポイトなどで水を後ろにさしてあげると瞬時に蒸発して湯気が出ます。
最後に
いかがでしたでしょうか?今回の調理撮影のポイントとしては、
- ①効果音をイメージする
- ②アングルで臨場感を出す
- ③シャッタースピードで動きを表現する
の三つでした。
特に①の「効果音をイメージする」は人によって、イメージする音が違うはずなので個性が出やすいかなと思っています。
調理写真は、動きがある分、表現の自由度が高く奥が深いなといつも思っています。
同じ料理を撮っても、食材の旬や個体差があるので同じ写真になるとは限らないところも面白いです。
これをきっかけに調理写真を撮って、料理をより美味しく食べる方が増えたら嬉しいです。
それでは一連の撮影で完成した料理の写真でお別れしましょう!
土田凌
1992年2月生まれ。人材広告会社勤務後、フォトグラファーに。 広告、インタビュー、ライフスタイル、料理などの撮影を行う。 最近は自分でも料理をします。