日に日に寒さが増すこの頃。つい引きこもりがちになってしまいますが、カメラを持って近所を散歩するだけで、いい気分転換になります。
今回は「写真で散歩が楽しくなる」をテーマに、魅力的な被写体を探すコツや、季節・天気を生かした撮影、いつもの景色を新鮮に撮る方法をご紹介。すぐにでも撮影に出かけたくなること間違いなしです!
- 街を印象的に切り取る2人の写真家の視点
- 風景の中の季語を集めよう
- 視点を変えて紅葉の魅力を引き出す
- 雨の日が楽しくなる被写体探しと撮影のコツ
- リフレクションで幻想的な反転世界を描く
- 個性溢れるフィルムで日常を非日常に!
街を印象的に切り取る2人の写真家の視点
いつもの景色を印象的に撮るためには、どこに目を向けるかという「視点」が大事です。フォトグラファーの嵐田大志さん(@Taishi_Arashida)とKen Tanahashiさん(@kentanahashi)のフォトウォークに密着して、それぞれの視点の違いや構図の考え方などに注目してみました。
2人が使うのは、Z 50とキットレンズNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR。同じカメラとレンズで、同じ街をそれぞれどんなふうに切り取るのでしょうか?
環境や偶然を最大限に生かす
ストリートスナップの醍醐味は、環境や偶然を生かすことです。
上の写真はKenさんが撮影。ベンチにいる子供と奥の車を斜めのラインに配置し、手前と奥でそれぞれの世界観が表現されています。ベンチはストーリーが生まれやすい場所なので、観察していい瞬間を待ってみましょう。
また、特徴的な建物の前では白い服を着た人が通るのを待って撮影。暗い吹き抜けと白い服との明暗の対比で、人がより強調されています。通行人で画づくりする際は、その場所のおもしろさが際立つ服の色や位置を見極めることが大切です。
光と影がつくる光景を切り取る
歩道橋では、路面標示や行き交う車で、画づくりを狙います。
道路に整然と並ぶ木の影に注目した嵐田さん。車がいなくなる瞬間を待って、望遠端で撮影。編集で右のようにトリミングすることで、左右対称な道路と並ぶ木の影のおもしろさが際立ちました。
Kenさんは、自転車が通るのを待ち構え、歩道橋の影と組み合わせて撮影。平面的にとらえることで、自転車が斜めのラインを上っているような不思議な写真になりました。右の別のタイミングと比べると、左のほうが影により目がいきます。
アングルを変えて魅力が際立つ構図を探る
目の前のシーンの魅力を引き出すアングルを考えることも重要です。
公園の入り口付近で嵐田さんが撮影した1枚。地面の丸いパターンに注目して、真ん中を人が通った瞬間に撮影しました。
ポイントはハイアングルから撮ることです。右はアイレベルで撮った写真ですが、手前に花壇や杭が写りこんでしまいます。画角を整理することで、シーンのおもしろさが際立ちます。
路地を歩くピンクの装いの人を見つけて、Kenさんが撮影した写真。服と道端の花の色をシンクロさせて、人を花で挟むような構図を作りました。
このとき、花を前ボケにするために、ローアングルで極力近づいて構えています。
形や色を生かすアングルや構図を考えることで、何気ないシーンも印象的な写真にすることができます。
じっくり観察してからシャッターを切るか決める嵐田さんと、常に動き回ってシャッターをたくさん切るKenさんの、撮影スタイルの異なる2人のフォトウォーク。同じ時間、同じ場所で撮影したにもかかわらず、視点や写真が違っていておもしろいですね。
共通して意識していた「光と影」「アングル」「タイミング」に注目して歩いてみれば、身近な景色の中にも思いがけない瞬間を見つけられるかもしれません!
風景の中の季語を集めよう
地元・福井県の風景を撮り続けるAkine Cocoさん(@akinecoco987)に、身近な場所で「季語」を探して写真で表現していただきました。季語に注目して歩いてみると、普段通る道にも、季節らしさを感じる美しい風景があることに気づかされます。
季節ごとに空の表情は異なります。朝日の時間や、「ひつじ雲」「うろこ雲」といった秋の雲など、この時期の空について知るだけで、新しい光景が見えてきます。
秋を象徴する植物、「ススキ」や「コスモス」。季語として目を向けると、足元の自然を主役としてとらえたくなります。近くに寄って光に透かしたり、いろんな角度から眺めたり、さらに視点が広がるはずです。
福井のあちこちに広がるそば畑。その土地ならではの季節の訪れに気づくこともできます。
ぜひ、みなさんの近所でも季語を探してみてください。より季節を敏感に感じることができ、風景を撮ることがもっと楽しくなります。記事では、Akineさんの美しい写真と素敵な言葉で、秋のフォトレターをお届けしています。また、このエッセイは季節ごとに連載していく予定です。冬のお便りもお楽しみに!
雲の表情を生かした田園風景の撮り方はこちら!
Akine Cocoさんには、アニメのワンシーンのような田園風景の撮り方も紹介していただきました。雲の表情が際立つ地上と空の比率や、アングルとレンズ効果の生かし方などを解説しているので、散歩の際に参考にしてみてください。
視点を変えて紅葉の魅力を引き出す
富山在住のフォトグラファー・イナガキヤストさん(@inagakiyasuto)に、公園などで紅葉を視点や構図を工夫して魅力的に撮影するテクニックを教えていただきました。
上の写真は、木の下に立ってカメラを上に向けて撮影。空の青に紅葉の赤が映えてとてもきれいです。間から見える太陽を真ん中に配置して、F16まで絞って光芒をアクセントにしています。
足元の落ち葉は、目線を思いっきり下げてクローズアップしてみましょう。枯れ葉の中にある真っ赤な葉を、広角端でパースをつけながら撮影。存在感を際立たせつつ、画に奥行きが出ています。
紅葉を色鮮やかに写すためのCPLフィルター(円偏光フィルター)
CPLフィルターは反射光を抑えて、紅葉を鮮やかに写すことができます。1段ほど減光されるので、普段より少し明るめに設定するのがポイントです。
左:CPLフィルターなし、右:CPLフィルターあり
記事では、北アルプスを貫く「立山黒部アルペンルート」の魅力と、広大な山の紅葉撮影のコツをたっぷりと紹介しています。ぜひ「富山の本気の紅葉」をお楽しみください!
雨の日が楽しくなる被写体探しと撮影のコツ
フォトグラファーのi_dauyuさん(@i_dauyu)に教えていただいたのは、雨の日のストリートスナップのテクニック。傘をさした人やぬれた路面など、雨ならではの要素を生かすのがポイントです。
雨の日の街撮影の機材と設定
- レンズ:街中で情報量を絞って切り取るには望遠ズームがオススメ(今回は、NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRを使用)
- F値:全体にピントが合うようにF8以上
- シャッタースピード:歩行者をとらえられるスピードに
最初のうちは連写して、撮った写真を見返すとタイミングをつかむ練習になります。
傘をさす人を都市風景のアクセントに
特に横断歩道を渡る瞬間がオススメです。横断歩道を高い位置からとらえるために、まず歩道橋を探します。
こちらが撮影した写真。歩道橋からは道路の真ん中の位置を撮ることができます。
ここでポイントなのは、通行人が1人ポツンと際立つ瞬間です。そのために「信号が変わる直前」を狙います。信号が点滅しだすと人がまばらになるため、そのタイミングに特に集中。1人だけ歩いてきた人を見つけたら車とかぶらないタイミングでシャッターを切ります。
左は失敗例です。複数いる人が車に重なってしまい目立たず、ごちゃごちゃした印象になってしまいました。右のように、1人だけ車に重ならないタイミングを狙えば、ポツンと際立ちます。
ぬれた路面反射で不思議な世界を写し出す
雨が降り続くと路面全体がぬれ、反射を利用した写真が撮れるのも雨の日の醍醐味です。
路地に入ってくる人を狙って、赤丸で囲んだ場所に立ち、目線より下げて奥の反射が写るようにします。まわりの邪魔にならないように、カメラは胸の前に構えてライブビューで撮影するのもポイントです。
左のように試し撮りをして、どこに人が入ると目立つかを考えます。黒い人影がビルの反射と重なると紛れてしまうので、明るい空が反射した部分に来るのを狙ったのが、右の写真です。
そして、編集で上下反転。そうすることで、反射面の人影に自然と目がいくようになります。白線やマンホールなどが普段とは逆なのに、画としては成立して見えるので、不思議な印象を与えることもできます。
他にも雨ならではの被写体の見つけ方と撮影プロセスを詳しく紹介しています。きっと雨の日の撮影が楽しくなりますよ。
リフレクションで幻想的な反転世界を描く
光の反射で、鏡や水面、ガラスなどに反転した世界が写る「リフレクション」。フォトグラファーのKoichiさん(@Kfish1882)に、身近な場所でもできるリフレクション撮影のコツを教えていただきました。
道端の水たまりでリフレクションを撮る
道端の水たまりでいいリフレクションを撮るプロセスは、大きい水面を探すことからはじまります。風のない日の雨上がりを狙って、夜や夕方に光の強い場所で撮ると、反射がくっきり写りやすくなります。
反射面をきれいに写すための設定
- 焦点距離:14~30mmが最適。広角になるほど、空や高いビルなど普段の視界とは違う写真になる
- F値:実像と反射の両方を写すため、F8~F11を目安に絞りこむ
- ISO感度:高感度ノイズ(画像のざらつき)を抑えるため、なるべく低く設定
- シャッタースピード:遅くして、露出を調整する。上の写真は6秒で撮影
- フォーカス:ピントの中心を駅の建物に合わせ、ライブビューでピント位置を拡大してマニュアルで調整
反射を際立たせるカメラ位置と構図
水面にレンズが近いほど奥の風景が反射して写るので、地面スレスレにカメラを構えて可動式モニターで撮影します。
画づくりのポイント
- 上下二分割で両方を写すことで、よりダイナミックな印象に
- 実像と反射面の境界を少なくする(黄色で囲んだ部分)
- 反射面の左右を画角いっぱいに入るようにする(赤で囲んだ部分)
地面スレスレに構えることで境界線を少なくでき、カメラ位置を調整して反射面の左右が画角いっぱいに入るようにします。
※まわりの迷惑にならないように注意しながら撮影しましょう。
波が引いた後の砂浜で人と空の反射を狙う
上の2つの写真は、波が来た瞬間と引きつつある瞬間に撮ったものですが、きれいなリフレクションにはなっていません。
きれいなリフレクションを撮る大事なポイントは、波が引き切ったタイミングです。画角やポーズなどを決めておき、この状態になった瞬間にシャッターを切っていきます。
また、空の色も大切な要素です。上の写真は、日の出直前に撮影。太陽が出る約5分前と、日が沈んでからの数分間が、優しい光で一番きれいなリフレクションをとらえることができます。
スマホの画面で反射をつくる
水面だけでなく、スマホや窓ガラスなど身近な物でリフレクションを撮ることもできます。この写真は、スマホをレンズと水平にして撮影。写りこむ範囲が狭いので、特徴的な部分を切り取るようなイメージでスマホの傾きを調整するのがポイントです。
記事では、長時間露出を使って水面を滑らかに写すテクニックや、リフレクションの可能性を広げる撮影アイデアを紹介しています。ぜひ身近に潜むリフレクションを探してみてください!
個性溢れるフィルムで日常を非日常に!
フィルムカメラを愛用しているフォトグラファーのFujikawa hinanoさん(@nanono1282)。個性的なフィルム4種類がセットになったLomographyの「Analogue Quartet」で、どんな写りが楽しめるのか教えてもらいました。散歩しながらこのフィルムで撮影すれば、歩き慣れた道も非日常の世界観に変わります!
Analogue Quartet
36枚撮りのカラー2種類とモノクロ2種類が一つのセットになっています。
Analogue Quartetのそれぞれの個性
(左)2019 Lomochrome Purple 35 mm
いつもの風景がパープルやピンクの世界に一変する、独特なフィルム。緑は濃いパープルに変わります。
(右)LomoChrome Metropolis 35mm ISO 100-400
全体的に低彩度で、落ち着いたトーン。赤、黄、青などの原色や黒が際立ちます。
(左)Berlin Kino B&W 35mm ISO 400 2019 Edition
繊細なグレートーンと粒子感。コントラストが低く、クラシック映画のようにどこか切ない写真が撮れます。
(右)Lomography B&W ISO 100 35mm Potsdam Kino Film
はっきりとしたコントラストが魅力。粒子感が適度で、ポートレートやスナップでも活躍します。
ここでは、「2019 Lomochrome Purple 35 mm」と「Lomography B&W ISO 100 35mm Potsdam Kino Film」の2つをピックアップして紹介します。
2019 Lomochrome Purple 35 mm
緑がパープルに、青がエメラルドグリーンに、黄色がピンクにシフトします。緑の植物を背景に取り入れたり、感光させたり、色の変化を想像しながら撮るのが楽しいフィルムです。
また、白はあまり変化せず、黒と原色がより変化します。変化させたい色に加えて、白をうまく入れることで、配色のバランスをとることができます。
なお、細かい色味を狙うことは難しいので、予測できない変化を楽しむ“遊び心”が大事です。
Lomography B&W ISO 100 35mm Potsdam Kino Film
コントラストが高く、白と黒をきれいに表現できるので、シンプルに被写体をかっこよく写せます。直線系の要素が際立ちますが、被写体でやわらかい雰囲気を生かすといい意味でギャップも生まれます。
そして、粒子感とコントラストのバランスが絶妙なこのフィルムが、hinanoさんの一番のお気に入り! 特に上の写真が今回のベストショットです。モノクロフィルムならではの白と黒の対比のおもしろさが際立っています。
他の2種類の特徴や画づくりのポイントも、記事ではたっぷり紹介しています。日常の景色が一変するフィルムで、新しい表現にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
※以前、ご紹介したフィルム8種類もお散歩フォトにはオススメです!
#NICO STOP企画で選ばれたフォトグラファーを紹介!
いつも#NICOSTOPの投稿をいただきありがとうございます。たくさんの投稿の中から、今回はInstagramで情緒的な夕暮れの光景を投稿していただいた、h.seicoさん(@seico.and)の作品をご紹介いたします。今回の表紙はこちらを使用させていただきました。
h.seicoさんコメント
この日はずっと曇っていたのですが、夕暮れどきのわずかな時間だけ日が差し、慌ててシャッターを切りました。コスモスも枯れはじめていたので、沈む夕日が秋の終わりと冬のはじまりを連れてくるような、そんな写真になりました。
編集部コメント
コスモスにかかる夕暮れの光が美しく、ノスタルジックな色味もあいまって胸を打たれたので選ばせていただきました。
散歩をしているといろんな風景に出会いますが、こうやって素敵に写すことができると散歩がもっと楽しくなるんだろうなと思います。そんな写真のよさを改めて感じさせてくれた1枚でした。
NICOSTOP公式Instagramアカウントでも、#NICOSTOPの投稿紹介をはじめました!
みなさんから投稿いただいた素敵な作品を、投稿やハイライトにまとめています。投稿から写真紹介までの流れは以下の通りです。
- 公式Instagramアカウント(@nicostop_official)をフォロー。
- ハッシュタグ「#NICOSTOP」をつけて写真を投稿。
- 選ばれた作品はNICO STOPの公式Instagramで定期的に紹介。さらにその中から特に素敵な作品を記事でもご紹介します!
これからも、#NICOSTOPでのご投稿を楽しみにお待ちしています。
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散歩を楽しくする撮影のアイデアを紹介しましたが、きっとまだまだあるはずです。いつもと違う道を通ってみたり、目線をグッと下げてみたり。少し工夫するだけで、ちょっとした冒険気分をファインダー越しに味わうことができますよ。
しっかり防寒対策をして、あなたなりの新しい楽しみ方を探してみてください!
Supported by L&MARK