こんにちは、片渕ゆり(ぽんず/@yuriponzuu)です。
新しいことに挑戦するのって、いつだってわくわくしますよね。私は最近、デザインを学びはじめました。一見、写真とは別のジャンルに思えるかもしれませんが、色や構図の考え方、撮影前の資料の集め方など写真撮影に通じることも多くあるなと思いながら学んでいます。
そして今回、新たにチャレンジしたのは「万華鏡写真」です。はじめて知った方もいらっしゃると思うので、まずは簡単に概要を。
万華鏡写真とは
実験写真家の上原ゼンジさんが考案した「万華鏡カメラ」で撮る写真のこと。レンズに自作した万華鏡を取りつけると、内部の鏡に反射して被写体がパターン化して写ります。
左上は植物、右上は景色、左下は花、右下はプリントした写真を写したものです。どれも身近な被写体ですが、万華鏡を通して見ると予想外の景色が広がり、夢中でシャッターを切りました。この記事では、万華鏡の作り方と、撮影してみて感じたこと、自分なりの楽しみ方を紹介したいと思います!
万華鏡の作り方
レンズに取りつける万華鏡は、シンプルな材料で手作りできるところも魅力です。実際に作ってみて、気をつけたことや作業のポイントをお伝えします。
完成した万華鏡。
万華鏡の材料
- 筒:コンビニやスーパーでよく売っているスナック菓子の筒(長さ約217mm、外径約67mm)を使いました。底が抜きやすく、お菓子が内袋に入っていて筒の内側が汚れていないものを選びましょう。筒は長いほど写りこむパターンが増え、短いと少なくなります。表面を包装紙やマスキングテープでカスタマイズして、自分の好みの見た目にするのも楽しいです。
- 表面反射鏡:万華鏡や一眼レフのミラーに使用されている特殊な鏡。ネットでは「万華鏡写真用ミラー/表面反射鏡(3枚組)」として2800円程度で販売されていて、今回はそれを使いました(長さ226mm・幅53mm・厚み1mm)。ガラスの片面が鏡になっていて、鏡面には保護用のフィルムが貼られています。
※ガラス製の表面反射鏡をご自身でカットする場合は、ガラスカッターが必要です。フィルムが貼られた面に傷をつけないように注意しましょう。- スポンジ:筒の中に鏡を固定するために使います。100円ショップにも売っているスポンジを、3cm角に切ったものです。両端と中間あたりに3個ずつ、計9個ほど詰めると安定します。
- ステップアップリング:万華鏡とレンズを取りつけるために使います。筒の外径と、レンズのフィルター径を測ってサイズを選びましょう。
1.表面反射鏡をつないで三角形を作る
3枚の表面反射鏡を、フィルムが貼られた面を裏にして並べて置き、1mm程度の感覚をあけてテープでつなげます。テープは、貼り直しができるマスキングテープなどを使うのがオススメです。カッターマットの上で作業すると、鏡を真っすぐ並べられます。
フィルムをはがして、鏡面が内側になるように三角形を作りテープで固定します。このとき、三角の内側に隙間ができないように少し重ねるのがポイントです。フィルムをはがした後、鏡に指紋がつかないように気をつけましょう。
2.三角形に組んだ鏡を筒にはめる
スナック菓子の筒の底をカッターで切り抜き、三角形に組んだ鏡をはめこんだら、間にスポンジを詰めて固定します。
3.筒にステップアップリングを取りつける
67mmのステップアップリングに筒を取りつけて完成です。今回は、NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)のフィルター経52mmに合わせて、52-67mmのステップアップリングを使用しました。ステップアップリングと筒の経がちょうど同じなので、少し力を入れてぐっと入れこみ、外れないようにテープで止めましょう。
万華鏡写真の機材
万華鏡を取りつける機材は、軽さと持ちやすさ、レンズの前玉の大きさが重要です。
Z 50+NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)に万華鏡レンズを取りつけた様子。
- カメラ:レンズの上にさらに万華鏡を取りつけるため、カメラは軽量でグリップがしっかりあるものがオススメです。 Z 50は軽くて持ちやすく、万華鏡を支えながら撮るのも苦になりませんでした。
- レンズ:前玉が鏡の範囲からはみ出ると写真の四隅が暗くなるので、収まるものを選びます。また、広角の方が鏡に反射した像がたくさん写りこむので、より万華鏡の効果を感じられます。NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)は、35mm判換算42mm相当の画角で「まさに万華鏡という」写りを楽しめました。
万華鏡写真を撮ってみよう
【撮り方】華やかさを引き出す設定と撮影距離
まずは試し撮り。設定の目安を基準に、ピント位置や撮影距離を変えて写りを確認していきます。
設定の目安
- F値:F5.6~11程度に絞ってくっきり写します。
- シャッタースピード:手ブレしないように1/60~1/125秒以上に設定。シャッタースピードが遅くなってしまう場合は、ISO感度を上げます。
- フォーカス:AFで撮影します。ピントが迷う場合は、ピンポイントAFに設定してみてください。ピント位置を調整したい場合は、タッチAFが便利です。
※ Z 50のタッチAF(タッチシャッター)についてはこちら。
くっきり写すと華やかな印象に
F値を大きくして、被写体にピントが合うようにすると、まさに万華鏡というようなくっきりとしたパターンが写し出されました。このように背景をシンプルにすると、パターンが際立ちますね。
奥の被写体ではなく手前に写りこむ鏡にピントを合わせると、全体がふんわりと写り幻想的な雰囲気に。上の写真は、夕方の空を撮影しました。色数の多い景色や夕方の空のグラデーション、花が数種類まとめて咲いている場所などは、このようにぼかしても華やかさが出るのでアリだと思います。
被写体に近づいていろんな角度で見てみる
左:近づいて花を撮影、右:遠くの景色を撮影
被写体に近づくと同じパターンが繰り返されますが、被写体から離れたものを撮影するとパターンが崩れ、不思議な浮遊感のある写真が撮れます。被写体との距離感やレンズの位置を少し変えるだけで、予想外の写りに出会えたり画面の華やかさが増したり、いろんな発見がありました。
【場所】光と背景の色・余白を意識する
光の状態で写りが大きく変わることに気づき、室内と外の条件で撮影してみました。
室内は光の入る窓際で撮る
窓際にテーブルを置いて、ガラス瓶の装飾に直接光が当たるように撮影しました。上の写真は、ガラスの透明感を出すために、白い紙を敷いて水色の壁を背景にしています。被写体に合わせて下に敷く紙や背景の色を変えると、印象がガラッと変わるので試してみてください。
室内撮影であると便利なもの
今回は使いませんでしたが、以下のアイテムがあると撮影しやすくなります。
- 三脚:俯瞰で撮る際に使うと撮りやすいです。パターンを変えたいときは、被写体の方を動かして写りを調整します。
- 小型LEDライト:光が被写体に当たらない場合や、暗くて手ブレが心配なときに役立ちます。
- レフ版:白い紙でもOKです。影になる部分に光を回して、全体を明るく写せます。
外は影が目立たないくもりの日がオススメ
左:くもりの日に屋外で花を撮影、右:くもりの日に街の景色を撮影
外で花などを撮影する場合は、被写体の影が気にならないくもりの日がオススメです。ただ、晴れの日は色が鮮やかに写るなどのメリットもあるので、いろんな天気で撮影して好きな写りを探してみてください。街の景色を写す場合は、建物だけだと何が写っているのかわかりにくくなるので、空を入れるといい感じの余白になります。
万華鏡写真の表現のアイデア
写りの特徴がつかめたので、万華鏡写真に合いそうな被写体を探して撮ってみました! どれも身近なものなので、参考になればうれしいです。
【花】小さな花も花畑のように華やかに
もっとも撮りやすかった被写体で、ついたくさんシャッターを切ってしまいました。少ししか咲いていなくても花畑のように写せるので、小さな植木鉢や道端に咲く花でも楽しめそうです。
花びらが開く花は真正面から撮ると形が伝わりやすく、花柄のようになってかわいいです。周りに緑を入れると、花の形や色が際立ちます。
上のように花びらがすぼまって咲く花は、横から撮ると放射状に広がるように写ってきれいです。さらに、色の濃い花を選ぶと華やかさがアップします。雨上がりだったので、花びらの上の雫がみずみずしさを演出してくれました。
花だけを写すと、ぐっと幻想的な雰囲気に。少し枯れた部分も写すことで、立体感が生まれました。ところどころにじむように写っていたり、すみずみまで観察したくなる魅力があります。
【小物】光を通してきらめきを引き出す
光を透過するものはきらびやかになるので、「万華鏡」と聞いてイメージする仕上がりにぴったりでした。きらきらした世界が目の前に広がって、撮るのが楽しかったです。
トルコブルーの香水瓶は、逆光で透明感と色の鮮やかさを引き出して、コントラストがきちんと残るように少し暗めに撮影しました。ファインダーをのぞきながら、カメラを前後左右に動かして写りを観察し、香水瓶が円形につながったところでシャッターを切りました。
ふと、手元にあったペットボトルに光を通してみると、おもしろい写真が撮れました。半逆光で白とびしないようにアンダーめに写すと、光と影が際立ち宝石のようなきらめきが感じられます。
【写真】カラフルな写真がいっそう美しく
プリントした写真も、万華鏡を通して見るとまったく違う印象になり、とても興味深かったです。カラフルな仕上がりにしたかったので、色が多い写真を選んでみました。
こちらは、モロッコの花の写真を写したものです。特にカラフルな部分をフレーミングして、花が放射状に広がるように、カメラの位置を調整して切り取りました。写りこんだ水色が額縁の役割をして、花の存在感がより際立ったと思います。
万華鏡らしさが出るかなと思い、タイルの写真も撮ってみました。模様がきちんとわかる箇所を撮影すると、一面に花柄が広がりレトロでかわいらしい仕上がりに。一見平面的ですが、よく見るとタイルの立体感も感じられておもしろいです。
【空】表情豊かな夕暮れ時がオススメ
なんの変哲もない空でも、万華鏡の効果で不思議な印象に写ります。特に夕暮れ時は、空の色や雲の表情が豊かなので、万華鏡で写したときに変化が出せていいと思いました。雲にピントを合わせてもいいですが、あえてピントを外して空の色を主役にしても、浮遊感があって好きな仕上がりです。
なお、太陽が画角に入ると鏡に乱反射してよりまぶしくなるので避けましょう。
【街】見慣れた風景がミステリアスな世界に
近所のスナップも、いつもとひと味違う体験になります。
色のある建物を撮りたくて、レンガ色のマンションを撮ってみました。特に珍しい建物ではなかったのですが、万華鏡の効果で鏡の世界に迷いこんだようなミステリアスな雰囲気に。壁だけ切り取るとのっぺりするので、建物の角や柵などを入れて立体感を出すのがポイントです。
ベランダから街並みを撮るときは、ごちゃつきを抑えるために空を広めに入れることを意識しました。アンテナなど形が印象的なものを入れると、ポイントになるのでオススメです。
Photographer's Note
はじめての万華鏡写真は、予測できない新しい世界を切り取れて楽しい経験になりました。控えめに咲いている花も、レンズの効果で画面いっぱいに広がり、まるで満開の花畑のようです。
お気に入りの1枚は、トルコの香水瓶を撮影した上の写真。異国情緒のあるトルコブルーの色が画面に散らばって、不思議でありながらきれいに撮れたと思っています。本物の万華鏡のような、きらきらした光の感じが出せたこともお気に入りの理由の一つです。
少しレンズを動かすだけで写りがガラリと変わり、被写体の形をいろんな角度からじっくり観察する機会にもなりました。また新しい写真の楽しみ方と出会えてうれしいです。
万華鏡は手軽に作れるので、いつもと少し違う写真を撮りたいときに、ぜひ試してみてください!
監修:上原ゼンジ
Supported by L&MARK
※万華鏡の作り方や撮り方は、こちらのサイトを参考にしています。
片渕ゆり
佐賀県出身、東京在住。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いからフリーランスに。2019年から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。著書「旅するために生きている」(KADOKAWA)。