花火写真の撮り方 – 感動や臨場感を伝える、手持ち撮影のポイントと表現のアイデア

花火写真の撮り方 – 感動や臨場感を伝える、手持ち撮影のポイントと表現のアイデア

こんにちは。新潟在住の写真家、yuki(@sty830)です。
新潟の風景やポートレートを撮影していますが、好きな被写体の一つに「花火」があります 。

夏の風物詩である「花火」。
新潟在住の僕にとって、特に「長岡花火」が夏の象徴です。

 

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4
D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
D700、AI Nikkor 50mm f/1.4
D700、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
D700、(左上・左下)AI Nikkor 50mm f/1.4、(右上)AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、(右下)AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR

 

はじめの頃は、離れた場所から三脚を立てて望遠で「花火をきれいに撮る」ことだけを考えていましたが、花火大会本来の臨場感である音やにおい、街の雰囲気を味わうことができませんでした。そこで、カメラを手持ちするスタイルに変え、実際に街の中で座って見たり、歩きながら撮ったり、誰かと一緒に花火を楽しみながら撮影するようになりました。

今回は、花火を手持ち撮影する際のポイントと、自由度を生かした花火写真の表現について紹介したいと思います。

 

花火を手持ち撮影するための基本ポイント

花火撮影で大事なのは「機動力」と「スピード」。手持ち撮影は場所を簡単に移動でき、好きなアングルで即座に撮れるのが魅力です。

 

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

 

特に手持ち花火を撮る際は火花の出方がわからないことが多いので、実際に噴射してからアングルや構図を変えたり、火花をぼかしたり、背景を変えたりと、三脚撮影とは違う“ライブ感”が生きてきます。

【場所】撮影は花火に近い位置で

  • 花火大会:望遠レンズは手持ちが難しいため、花火から離れすぎないように。「花火を楽しむ」ことが前提にあるため、会場近くで撮影しています。花火は煙が出てきますが、事前に風向きを考えて当日に極力煙がかかりにくい場所を選択しています。
  • 手持ち花火:大きな打ち上げ花火ほどの光量はないため、海など開けた場所で明るさの残る空を背景にすることで露出を確保しやすくなります。
    ※花火をしてよい場所か、してよい時間帯などは事前に確認しましょう。

【機材】軽量で暗所に強いカメラ+レンズ

  • カメラ:手持ち撮影では、高感度の強さは重要です。今回は Z 5を使用しましたが、軽量で高感度特性も申し分ありませんでした。暗所でもファインダーやモニターが見やすく、撮影がしやすかったです。
    また、いい条件の花火を撮り逃さないためにも、メモリーカードは書きこみスピードが速いものがオススメ。SDカードの場合はクラス10であれば問題ないでしょう。
  • レンズ:手持ちで撮るためには「手持ちできる重量」、そして「極力明るいレンズ」が必要です。花火大会や鑑賞位置によりますが、長岡花火など大きな花火が多く打ち上がる場合は比較的明るいため、F2.8でも撮影できます。焦点距離は、「自分が見た花火」を写す際は50mmを、「花火大会の風景」を写す際は24mm以下の広角を使います。

 

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

50mmで撮影

 

D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

16mmで撮影

 

花火は時間が限られているため、多くても2本のレンズで撮りわけたほうが、よりたくさんの写真を撮れると思います。

【設定】開放F値&高ISO感度でシャッタースピードを稼ぐ

夜の花火は露出確保が重要で、特に手持ち撮影は自身が手ブレしない設定を見極めることが大切です。

 

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

 

なお、花火を画面に大きく取り入れることで、露出を確保しやすくなり、かつ手持ちならではの躍動感ある構図を狙いやすくなります。

 

  • 撮影モード:マニュアルで、F値とシャッタースピードの両方を調整。 
  • F値:開放F値に設定。
  • シャッタースピード:「1/焦点距離」秒より速ければ手ブレしないと言われていますが、自分の中で手ブレしないシャッタースピードを把握しましょう。花火をしっかり写し止めたい場合はシャッタースピードを極力速くしたいところですが、1/50秒ほどでも花火の流れは気になりません。

 

D700、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D700、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

1/50秒で撮影

 

  • ISO感度:ISO感度で露出を調整します。ただし、明るく写りすぎても雰囲気が出ないため、上限をISO3000程度にしています。

 

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

ISO3200で撮影

 

  • ピント:花火と人を一緒に写す際、AFではピント位置に迷う可能性があるため、MFにしています。花火のタイミングでピントをスピーディーに合わせるには、マニュアルでピントを合わせる練習が必要かもしれません。

花火撮影の表現のポイント

「花火」と言っても、打ち上げ花火や手持ち花火、花火をメインにするか人を一緒に写すかによっても、画づくりの仕方は異なります。ここでは、何をメインにするかと、それぞれの撮影のポイントを紹介します。

なお、夏の花火は「楽しさ」と同じくらい「さびしさ」を感じるもの。そのことを意識して表現することが大切です。

広角で花火大会のスケールを表現

D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

 

こちらは空を埋めつくすほどの打ち上げ花火の迫力を表現するため、14mmの超広角で切り取りました。打ち上がった花火のタイミングに合わせ、画角いっぱいに花火が入るようにし、鑑賞する人とのバランスを考えて構図を決めています。ただし、タイミングを逃さないように「雰囲気を撮る」と考えて、こだわりすぎないのもポイントです。

なお、露出はF値を開放で固定し、シャッタースピードとISO感度で調整。優先順位として、自分がブレずに撮れるシャッタースピードにし、ISO感度で補います。

 

D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

 

構図では、地上と空の割合以上に、花火の入れ方が大切です。例えば、左右は見切れても上は見切れないようにする、花火全体を入れる場合は人との大きさの違いがわかるようにするなど。大きさを比較できるものがあるとスケール感がより出やすくなります。

また、手持ち撮影であれば、花火の上がり方に合わせて縦位置にすぐ切り替えできるのも強みです。

 

D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

 

花火大会では、場所を変えることで雰囲気が違う写真が撮れます。提灯で花火をはさんで祭り感を強調したり、街夜景や川と一緒に撮影したり、いろんなところにアンテナを張るようにしています。

花火をあえてぼかして切なさを表現

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4
D700、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
D700、(左)AI Nikkor 50mm f/1.4、(右)AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

 

花火は、表現の仕方に合ったピント合わせが大切です。小さい花火を少し大きめに見せるためにやや甘いピントにしたり、玉ボケにしたり。特に花火は終わりかけをぼかすことで「夏が終わる“切なさ”」を表現できます。このとき、画角内に余白を設けることで、情感豊かに描けます。

人をシルエットで入れ、花火を見ている人の感情を表現

人を一緒に写す場合、花火に露出を合わせると影絵のようにシルエットになり、想像が膨らむ写真になります。

 

D700、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D700、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

 
設定に関して、基本は開放F値で露出を確保しますが、被写体となる人と背景の花火の組み合わせで調整することがあります。上の写真のように、少し遠い位置にいる子供と花火を元気なイメージで撮りたい場合は、F3.2に絞り両者の一体感を持たせるように。大人を被写体に優しい雰囲気で撮りたいときは、開放F値で花火をややぼかしたり。被写体と撮影イメージを踏まえて設定しています。

 

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
(左)D700、AI Nikkor 50mm f/1.4、(右)Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

 

シルエットは横顔や仕草など、わかりやすさが大切です。ただし、過剰演出にならないように、浴衣姿にうちわ、ソーダなど夏祭りに合う自然なアイテムを選びます。

 

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

 

なお、人はシルエットになりますが、自然体で写すにはある程度動いてもらいながら、花火のタイミングと合わせてシャッターを切るようにしています。

 

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

 

シルエットは表情がわからない分、佇まいや仕草で感情を表現します。「楽しさ」は花火を楽しんでいる仕草で複数人を写すと表現しやすく、「夏の思い出に浸っている」様子は一人佇んでいる姿を切り取ることでナチュラルに表現できます。

手持ち花火は、空の明るさが残る時間帯に

お店で買える花火は、気軽に花火撮影を楽しめます。

 

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
D700、AI Nikkor 50mm f/1.4
(左)Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、(右)D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

 

花火大会の大きな打ち上げ花火ほどの光量はないため、まだ明るさの残る空を背景することで露出を確保しやすいです。

場所は、海岸など開けたところで。波打ち際は、空や花火を反射し、より雰囲気が出ます。水平線に雲がたまって夕焼け空がない場合は、きれいな空を背景に選択しています。

 

 

火花を玉ボケにし、ゆっくり花火を動かしてもらう

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

 

手持ち花火は火花の写し方がポイントで、輝きを強調するように玉ボケに。そして、花火をゆっくりと、火花の余韻が残る程度の動きをしてもらいます。火花を写し止めるために、シャッタースピードを可能な限り早くしましょう。空の明るさがあれば、数百分の1秒は確保できると思います

 

 

撮影者も花火を持つことで、輝きをプラス

Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

 

火花が少ない場合は撮影者自身も花火を持ち、モデルさんの手持ち花火と重なるようにすると、輝きや彩りをプラスできます。

自分で花火を持つ場合、片手でカメラを持つことになりますが、撮影がはじまったら設定はいじらず、ピントだけを意識できるようにするとブレずに撮れやすくなります。モデルさんには定位地で体の向き、顔の角度、手の動きのみに限定してもらい、ある程度の構図をキープしておくのがポイントです。

 

 

花火を撮影小物として使う

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4

 

花火はメインではなく、小物としての使い方もあります。上の写真では、美しい空とシルエットに小さな花火を添え、幻想的な世界観を表現しました。

 

 

手元だけ写す際は、背景選びが大切

D700、AI Nikkor 50mm f/1.4
Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
(左)D700、AI Nikkor 50mm f/1.4、(右)Z 5、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

 

花火を持つ手元だけを写す場合は、花火が際立つ背景になるようにアングルやポジションを調整します。花火は一瞬ですので、最初に撮影した写真をモデルさんに見せてこちらの要望を伝え、微妙なポジショニングや火花の場所などは自分で動いて合わせるようにしています。

 

 

花火の雰囲気を表現する編集のポイント

現実と離れた編集はせず、花火の実際の雰囲気をしっかり踏まえて、情緒や風情などを大切にしています。

 

編集後
編集前

左:編集前、右:編集後

 

白とびしないようにアンダー気味に撮影しているので、編集では明るめにし、色味もわかりやすくします。「派手にする」「目立つよう」にという意識ではなく、実際に見た雰囲気からかけ離れないようにしています。

Photographer's Note

花火は写真としての美しさや感動もありますが、何より花火大会の雰囲気を堪能しながら撮影できるのは写真の完成度以上に満足感があります。ぜひ手持ち撮影にチャレンジしていただき、花火を楽しみながら撮影も楽しんでいただきたいです。

 

D700、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR

D700、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR

 

みなさんは、思い入れのある花火大会はありますか?
新潟に住んでいる自分にとって、「長岡花火」は夏の象徴です。大きな行事に向かって街中が活気づく様子にわくわくし、花火大会が終わると一気にその年の夏が終わってしまったというさびしさもあります。

コロナ禍であえなく中止が続いていましたが、3年ぶりに開催されることが決定しました。今年は、これまでずっと見続けてきた花火を、ゆっくりと味わうことができたらうれしいですね。そして花火を見ながら、花火が打ち上げる街や、それを見る人々の光景を残したいと思います。

 

花火撮影におけるNikon機材

D700をずっと愛用していますが、全体の性能バランスがちょうどよく、100%使い切れる感覚が手持ち撮影での安心感につながります。

今回は Z 5を使用しましたが、高感度はもちろん、すべての面での進化と使いやすさに感動しました。使い続けたいと感じられるカメラです。

そして、これを機に Z 5を購入しました。今年の花火は Z 5で撮っていきたいと思います。

 

花火撮影の注意点

  • 花火大会:会場にいる人は大半が花火を鑑賞に来た人で、撮影がメインの人は少ないです。そこをしっかり意識して周囲の迷惑にならないようにすれば、気持ちよい撮影ができ、いい思い出ができると思います。
  • 手持ち花火:花火をしていい場所かの確認、片づけなど基本的なことはもちろんですが、モデルさんに無理をさせないように注意しましょう。撮れ高も大事ですが、モデルさんに楽しんでもらうように配慮することが大切です。

また、レンズキャップなどの落とし物や忘れ物がないように、移動する際は必ずその場をライトで照らして確認しましょう。せっかくの楽しい花火が残念な思い出にならないように。

 

 

Supported by L&MARK

 

 

※上記以外の機材で撮られた写真は、過去に撮影されたものです。 

yuki

yuki

新潟県出身、在住の写真愛好家。豊かな自然の風景写真のほか、ロケーションを活かしたポートレートも撮影する。新潟の色鮮やかな四季を追いかけながら、日々写真愛好家として活動中。