テーブルフォトの撮り方とレタッチ - 時が止まる瞬間を捉える | 茶々さん

フードフォトグラファーの茶々(@kissa_chachaya)です。主に料理やお菓子といったフードの商品撮影と写真撮影の講師を行っています。

もともとお菓子作りは好きだったのですが、コロナをきっかけにお菓子作りを再開してフードの写真を撮るようになりました。風景写真を撮っていたころから葉っぱが落ちる瞬間や水が跳ねる瞬間を切り取るのが好きで、フードでもそういう瞬間を撮りたいと思ったのが始まりです。

それからフードに動きをつけた時が止まっているかのような写真をよく撮っています。

今回は、時を止めるフード撮影について、私が普段準備をしているものや撮影のコツ、そして実際にレタッチをしている様子を交えながら、準備から写真の完成までをご紹介します。

Chapter 1:撮影準備



私が普段テーブルフォトを撮影する際に準備するものは、カメラ、三脚、白のレフ板です。必要に応じてストロボやトレーシングペーパーも用意します。

ストロボは、理想的な太陽光が確保できないときに使うものですが、これがあると自由に光の調節ができ、夜でも撮影することができます。

今回使用するカメラはZfです。クラシカルなデザインとシャッター音、キレイな写りが気に入っています。レンズは、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8です。このレンズはマクロ撮影が可能で、食べ物の断面に近づいて写真が撮れるので、テーブルフォトの際にオススメです。

また撮影の前には必ず部屋の照明を消すようにしています。自然光であれば自然光のみ、ストロボであればストロボの光のみを使ったほうが、光の干渉がなく狙った映りになります。背景やテーブルについては、その被写体やシーンに合う違和感の無いものを選ぶようにしています。例えば、普段の朝食シーンを想定した撮影では、木目調の背景ボードを使います。

Chapter 2:撮影のポイント

準備が整ったら撮影を始めます。まず用意したものを並べて、とりあえず1枚そのまま撮ってみます。このような写真になりました。

Zf、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

 

ここから、自分自身がイメージしている写真を撮るために意識しているポイントをご紹介します。

基本構図

テーブルフォトの基本構図は、日の丸構図・曲線構図です。フードを引き立てるように小物の使い方にも気をつけています。小物は、食べ物やそのシーンに合い、邪魔をしない色のものを選ぶようにしています。

照明

光を入れる時は、光の向きに気をつけています。横や斜め後ろから光を当てるとフードのシズル感を表現しやすくなります。自然光の光を入れるのが難しいときは、ストロボを使用するようにしています。

カメラの設定

カメラの設定は、基本的にマニュアルモードにしています。今回は時が止まったような写真を撮るため、シャッタースピードは1/1000にしました。F値は5に設定していますが、ピントを合わせたい範囲に応じて、もう少し絞るといいと思います。ISO感度は状況に合わせて設定しています。三脚にカメラを固定している場合、手ブレ補正ONにしているとブレてしまうことがあるのでOFFにしています。

一方で動きを必要としない撮影の時のシャッタースピードは、三脚を使用するであればそれほど重要視していません。三脚を使用しない場合は、シャッタースピード1/焦点距離を意識して決めています。例えば、50mmのレンズだったら1/50以上といったようにしています。

Zf インフォ画面

動きのある写真を撮る

動きのある写真を撮るときは、シャッタースピードとISO感度の設定、ピント合わせに注意しています。瞬間を捉えるようにタイミングよくシャッターが切れるとキレイに写真が撮れます。ここで最初に撮ったものと比べてみましょう。ポイントを意識することで時が止まったような瞬間を表現できたと思います。

写真左は何も設定せずに撮ったもの。写真右は構図やカメラの設定を行い撮ったもの

Chapter 3:レタッチのポイント

撮影が終わったらレタッチです。撮った写真をよりイメージしている世界観に近づけるため、私はとくに明るさと陰影のメリハリ、青くし過ぎない色味を意識してレタッチをしています。レタッチはLightroom Classicで行います。実際の編集画面をご覧いただきながら、普段どのようにレタッチをしているかをご紹介していきます。

明るさの調整

今回撮った写真がこちらです。最終的にシックなイメージにしたいので、ここから色を引き出して、より写真に深みを出すように心がけてレタッチしていきます。

私は普段、写真を少し暗めに撮っているので、最初に露光量を調整しています。その際のポイントは、写真の一番明るい部分を見ながら、そこが白飛びしない程度にプラスすることです。露光量はヒストグラムを見ながら右側の山が大きく上に伸びないように調整するのがコツです。

左が露光量の調整前、右が調整後のプロファイル。ヒストグラムを見ながら白飛びしない程度に調整

 

基本的にはハイライトと白レベルはどれも低めに設定しています。ここを下げると食べ物の色や質感がキレイに出やすくなります。

ハイライトと白レベルを下げる

 

次にシャドーと黒レベルの調節ですが、私の場合は、どちらも明るくし過ぎない程度に上げる場合が多いです。影の存在を残したほうが、雰囲気のある写真になります。

シャドウと黒レベルを上げる

色味の調整

写真の色味の鍵となるトーンカーブです。私のやり方は、それぞれのRGBチャンネルのトーンカーブがゆるいS字を描くように調節しています。シャドーに色を入れたい場合は、色ごとのカーブを上げ下げして調整します。

左がトーンカーブ調整前、右がトーンカーブ調整後のトーンカーブ。それぞれのRGBチャンネルのトーンカーブがゆるいS字を描くように調節している

 

次は彩度です。私は写真全体の彩度を下げて落ち着いた雰囲気にすることが多いです。低くし過ぎると全体的に青っぽい印象になり食べ物が美味しくなさそうに見えるので注意しましょう。

彩度調整。彩度を低くし過ぎると食べ物が美味しくなさそうに見えるので注意

 

以上で色味の調整はほぼ完成ですが、ここの色がちょっと強すぎるなと思うときは、カラーミキサーを使って色別に微調節をかけます。

カラーミキサーで色別に微調節

仕上げ

最後はメリハリのある写真にするために、コントラストと質感の強弱を調整するテクスチャ―で、食べ物の質感や立体感が出るよう整えます。

コントラスト、テクスチャーを調整

 

仕上げとして写真全体を見ながら角度調整や露光量、シャドウなどを調整してレタッチ完了です。

仕上げに角度の調整も

 

それではレタッチ前の写真と比べてみましょう。

レタッチ前の写真

 

レタッチ後の写真。Zf、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

 

マフィンは上のシロップがかかっている部分のハイライトをキレイに出すことで、シズル感が出るように明るさを調整しました。また、シャドウ全体にエメラルドグリーンを少し入れて深みを出しています。完成した写真のほうがシックで、色に深みのある表現ができていると思います。

Chapter 4:まとめ

テーブルフォトの準備からレタッチまでご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 今回お話したポイントを意識して、時が止まったような動きのある1枚を皆さんもぜひ撮ってみてください。おうちなどでチャレンジしていただけると嬉しいです。

 

今回ご紹介した「テーブルフォトの撮り方とレタッチ - 時が止まる瞬間を捉える」はYouTubeでもご紹介しています。動画は下記からご覧ください。

テーブルフォトの撮り方とレタッチ 時が止まる瞬間を捉える | 茶々さん

 

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NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

NIKKOR Z MC 50mm f/2.8

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あき

茶々

秋田県出身のフォトグラファー。 2018年から趣味で写真を撮り始め、2022年4月に独立。スイーツや料理写真を得意とする。Instagramでは喫茶『茶々屋』を運営。