みなさんこんにちは、フォトグラファーの浜村菜月(@natsuki.hmmr)です。普段はファッション誌でモデル撮影や、旅の写真などを撮影しています。
以前、rojimanさんの猫ちゃんたちを撮影しましたが、私自身も5年前から愛猫と一緒に暮らしています。仕事では人物撮影がほとんどですが、日々愛猫を撮っていて思うのは、写真を撮るために注意することは「人間も猫も同じ」ということ。ちなみに、猫好きが高じて、2016年には猫撮影について本を出版しました。
今回は、愛猫との写真の楽しみ方・魅力を引き出すコツについてご紹介したいと思います。
わが家の愛猫「まきゃべり」
足長マンチカンの男の子。性格は少し小心者ですが、人懐っこくて、はじめて家に遊びにきた人にもフレンドリーに接します。窓から外を眺めるのと、ひもで遊ぶのが大好きです。
Instagramアカウント「@machiavelli_y」で、日々の写真をアップしています。
- アングル・構図を変えて、いろんな“かわいさ”を引き出す
- 行動パターンからシーンを切り取る
- 光を意識してドラマチックな写真に
- オシャレな世界観をつくり、モデル撮影
- Photographer's Note
アングル・構図を変えて、いろんな“かわいさ”を引き出す
自宅で猫を撮る基本のキ
明るさで変わる猫の黒目の大きさ
- 周囲が明るい=黒目が小さい
- 周囲が暗い=黒目が大きい
黒目が大きいほうが、かわいらしく写るので、昼間でもカーテンは開けすぎず、適度に遮光して調整。ちなみに、黒目が小さいと、目の色がきれいに写るので、それぞれのよさがあります。
室内撮影に合わせた設定やレンズ選び
- レンズはF値が極力小さい明るいものがオススメです。F値は開放にして、部屋のごちゃつきをぼかせるように。
- 室内なので、ISO1600前後。
- 片手でカメラを持ってシャッターボタンを押すこともあるので、ブレを避けるためシャッタースピードは1/125秒~1/320秒あたりで撮ることが多いです。
大前提は「猫次第」、いつシャッターチャンスがやってくるかは猫のみぞ知る…です。来るべきタイミングに備えて、いつでも撮影できるようにカメラはすぐ手の届くところに置いておきましょう。
上から/下からと目線を変える
先ほどの写真もそうですが、「自然な表情」を撮ろうと猫と同じ目線(アイレベル)で撮ることが多くなりがちです。カメラを構えているときこそ普段とは違う表情に気づけるチャンスなので、猫の表情をいろんな角度から見てみてください。
上から撮ると、ふわふわ感が増してよりかわいらしいですね。手づくりのオモチャなどで目線を引きつけています。フィルムやセロファンが擦れるカシャカシャ音や、猫や鳥の鳴き声アプリなどが、気を引くときにオススメです。
下から見上げると、ちょっと雄々しい印象に。その雰囲気を出すため、目線はあえて外したカットを選びました。可動式の液晶モニターなら、ローアングルも楽々です。
表情を定点観測
同じ場所で、コロコロ変わる表情を連写で収めるのもおもしろいです。
オヤツをあげたタイミングで撮影。レンズよりちょっと上に持ったオヤツをじーっと見ています。少しずつあげながら合間に連写すると、いろんな表情を切り取れますよ。写真を並べると、静止画でも動きを表現できます。
Point
今回、Z 7の「動物AF」機能を使いました。猫の瞳を追いかけてくれるので、片手でカメラ、もう片手で目線を誘導するオモチャを持った撮影がしやすかったです。
パーツに寄ってみる
パーツにグッと寄ることで、かわいい部分をより強調できますし、「どこを見ているんだろう?」「どんな表情をしているんだろう?」と、見る人の想像力をかき立てることができます。
上の写真では、ビー玉のようなゴールドの目をきれいに写すことを意識しました。
クリームパンみたいな手足。ふわふわプニプニ、魅力が詰まっていますよね!
前ボケを使って奥行きのある写真に
引いて全身を入れる場合などは、自宅にあるものを手前に写しこむと、前ボケの効果で写真に奥行きが生まれます。
廊下は「だるまさんがころんだ」遊びがしやすいスポット。立ち止まった瞬間を狙って、間仕切りカーテンを前ボケに。
猫がトンネルで遊んでいるところに、自分も潜りこみました。トンネルの手前部分がぼけることで写真に奥行きが生まれたと思います。
振り向きは鉄板ポーズです。花が前ボケになることで爽やかさがプラスされます。
余白をとって抜け感のある写真に
「かわいい」からと、ついつい寄って撮りたくなる気持ちをグッとこらえて、たっぷり余白をとってフレーミング。ちょこんとした姿がよりかわいらしく写ります。
撮影したい場所を片づけておいて、オヤツやオモチャなど、猫ちゃんの好きなもので誘導して撮ります。
行動パターンからシーンを切り取る
猫ちゃんごとに、1日の行動パターンがあると思いますので、それを把握するだけでも撮影チャンスが大きく広がります。例えば、お昼寝の後は伸びやあくびをすることが多いので、それを頭に入れておくと、あくびシーンが撮りやすくなります。
まきゃべりの行動パターン
- 朝:起床、飼い主を起こす→パトロール・外を眺める→昼寝
- 昼:昼寝→パトロール→飼い主と遊ぶ→昼寝
- 夜:飼い主と遊ぶ→昼寝→ときどき大運動会→睡眠
初心者さんが撮影しやすいのは、昼寝や窓の外を眺めている、猫が動かないタイミング。…とは言え、実際にどんな行動や表情をするのかわからないので、いつでも撮影できるよう手元にカメラをスタンバイしておいて、猫をよく観察しておきましょう。
お昼寝時はシャッターチャンス
1日の多くを寝て過ごす猫。寝るちょっと前のまどろんでいる姿も画になります。そして、何より動かないので撮影しやすいタイミング。いろんな角度から撮ってみましょう。
窓のサッシに寄りかかって。猫にとってはどんな場所も枕になります。
床に落ちてる姿も、おもしろかわいい! ローアングルで収めました。
Point
まどろみタイムを含め、常に「静音モード」にしておくのがオススメ。カメラへの抵抗をなくし、撮影に慣れさせることにもつながります。撮るときは警戒させないように、そっとゆっくり近づきましょう。
窓辺で過ごす様子を外から&中から撮影
窓辺に佇む猫って画になりますよね。「目線の先には何があるんだろう?」と想像しちゃいますし、外を見ている背中にも表情があります。
外から撮る場合は、窓ガラスの反射が猫に重ならないように意識しながら、フレーミング。目線の先をカットするような構図にすると、目線の先に何があるのか想像が膨らむ写真になると思います。
中から撮るときは、光のきれいなタイミングを生かすと画になりますね。
リラックス状態のときは、じっくりいろんな角度から撮影
私がキッチンに立つと、おなかをなでてほしくてゴロリと転がります。リラックス状態はじっくり撮影できるので、猫が一番かわいく見える角度を探して撮りましょう。
ただただかわいい仕草を見せてくれたときは、上下やフレーミングを気にしすぎず、感じたままにシャッターを切ってOKです。ちなみに、私のスマホのカメラロールには、ゴロゴロコレクションがたくさん(笑)
「チラリ」を狙う
ひょっこり顔をのぞかせる様子は本当にかわいいですよね! 猫の行動パターンがわかってくると、この「チラリ」な瞬間をとらえることができます。
別の部屋にパトロールに行ったタイミングなどを見計らって、じっと待ち構えて顔をのぞかせる瞬間を狙いましょう。
飼い主の後をついてくる、猫のいじらしさも胸キュンです。上の写真では、ドアの向こうに「いそうだな」と思ったので、ゆっくり開けて驚かせないように。このとき、手前にドアを写しこんでまわりの情報を入れると、その雰囲気がより伝わります。
光を意識してドラマチックな写真に
これまでは日常のワンシーンを切り取ってきましたが、意図的に光と影を取り入れることでドラマチックな写真を撮ることができます。
サイド光で陰影をつけて立体感を出す
やわらかい光では猫のふわふわ感が際立ち優しい雰囲気になりますが、サイドからの強い光では陰影がつき普段とは違う表情を写せます。
陰影のついた立体感のあるキリッとした表情に。露出をアンダーにして、猫に合わせることで、背景が暗く写っています。白猫なので余計に背景とのコントラストが生まれました。
Point
光をサイドから当てるには、窓が猫の横に位置している必要があります。カーテンを開けたり閉めたりして、光の様子を観察してみてください。
窓からの光をスポットライトとして生かす
背景に光が写りこむことで、写真としての印象が強くなります。日当たりのいい部屋であれば、晴れた日の光が差す時間帯にブラインドやカーテンを開け閉めすることで、スポットライトのように光を調節できます。
植物を置いているところにきれいな光が差していたので、この場所に猫を誘導して撮影しました。
植物の影で猫に模様を描く
先ほどのような窓から差しこむ光によって、植物が特徴的な影を落とします。これを利用することで、猫の体に模様を描くことができます。
植物の影が落ちている場所に音などを使って誘導。このとき、影をつくる植物を手前に写しこんで、シチュエーションや雰囲気がわかるようにしました。顔に影を写しこむと、いつもと違うドラマチックな写真に仕上がります。
オシャレな世界観をつくり、モデル撮影
最後に、猫をモデルさんのように、オシャレに撮るTIPSを紹介したいと思います。
壁に布を貼って、スタジオをつくる
お気に入りの布や紙を壁に貼って小さなスタジオをつくると、非日常な雰囲気を楽しめます。
ちょっとレトロなポートレートを意識してみました。全身が入ればいいので、布や壁紙のサイズはそこまで大きくなくてOKです。好きな絵やポスターを入れたりしてもいいと思います。
さらに…
写真の雰囲気に合わせて、枠をつけて加工してみました。レトロなポートレート作品として、世界観がより際立ったと思います。
オモチャを入れて、お茶目な雰囲気に
身近にあるオモチャを一緒に写してみても、おもしろい世界観がつくれます。まきゃべりの場合は白毛なので、カラフルなオモチャが映えますね。
カメラ目線ではまきゃべり本人もちょっと強そう、向かい合っているとあいさつしているようなイメージに。一緒に写すものを変えるだけで、また違った世界観がつくれます。
Point
猫の近くにオモチャを持っていく場合は、遊んでほしそうにしているタイミングなどがオススメ。猫に無理をさせすぎないように注意しましょう。
かわいいお花を頭に乗せて
帽子のように頭にお花を乗せると、かわいらしい写真が撮れます。頭の上に物を乗せるのが苦手な猫ちゃんには、リラックスしているときや、まどろんでいるときに、そっと乗せてみると成功しやすいかもしれません。
シンプルな背景で生活感を削ぎ落とし、余白を広くとるとスタイリッシュな雰囲気に。花の存在が際立ちます。
Point
撮影場所をあらかじめ決めて、お気に入りのベッドを置いておくなど、くつろげる環境をつくるのがポイントです。
Photographer's Note
猫は最高のモデルです!
まどろんだ顔、甘えている顔、かまわれすぎてちょっと不機嫌な顔…。いろんな表情を見せてくれますし、ふわふわなシッポや手足、ビー玉みたいな目、すべてが画になります。そして、猫には毎日「今日が一番かわいい!」と思わせるような不思議な魅力がありますよね。
それに、光の使い方などでさまざまな表情を引き出せるのは、猫も人間も同じ。ファッション誌の撮影で使うような、お花や小道具などは猫に合わせてみてもかわいいです。
家の中での撮影は制約が多いですが、いい光を探したり、撮影場所をアレンジしたり、いろいろとトライしてみてください。意外な発見があると思います。
今回ご紹介した内容をぜひ参考にしていただいて、みなさんの愛猫との日常を、よりかわいく素敵に残してもらえれば、とてもうれしいです!
猫撮影のポイント
- 【周囲が明るい=黒目が小さい/周囲が暗い=黒目が大きい】ことを把握して、黒目を大きく写したいときは昼でも遮光するなど調整
- アングルやフレーミングを変えたり、パーツに寄ったり、普段とは違う切り取り方を探すといろんな魅力に気づける
- 引きでは、家にあるものを前ボケとして生かすと、奥行きのある写真になる
- お昼寝時や窓辺で過ごす時間、リラックスしてゴロゴロしている瞬間など、行動パターンを把握すると撮影チャンスが広がる
- 窓からの光や植物などの影を生かして、ドラマチックに演出
- 背景に布を貼ったり、頭にお花を乗せたり、モデルのように撮影するとオシャレな写真に!
同行撮影:塩川雄也(@yuyashiokawa)
Supported by L&MARK
浜村菜月
大手出版社でフォトグラファーとして勤務した後2014年独立、LOVABLE所属。現在、女性誌はもちろん広告・写真集などの撮影を手がけている。愛猫マンチカンの「まきゃべり君」をモデルとし、2016年『猫と楽しむニャンスタグラムのすすめ LET'S ENJOY CAT×Instagram』(インプレス)を出版。ハンドメイドの猫グッズ「meowonder」も手がけている。