こんにちは、宵月絃(@__yoii_to)です。
私は日常で見つけた「好き」を写真に収めているのですが、花や雑貨など部屋の中にも「好き」は溢れています。
部屋でものを撮るとき、100円ショップのアイテムを組み合わせて背景をつくったり、表情をつけることがあります。気軽に購入でき、種類も豊富なので組み合わせ次第で変化を加えられるのも魅力です。
今回は、そんな「100円ショップアイテム」だけで世界観をつくることを試みました。普段はメインにしないアイテムたち。小さな箱庭で実験するように、組み合わせや世界観を考えていきました。
この記事では、用意したもの~セッティング~撮影のポイントを紹介したいと思います。
100円ショップアイテムを使った世界観づくりと撮り方
100円ショップのアイテムで世界観をつくるには、ものの質感と撮影イメージを擦り合わせていくのがとても大事です。
例えば、造花を組み合わせたい場合、小さめと大きめの複数を選んでおくことで、組み合わせを変えながら撮影できます。また、透明な容器にきらきらしたものを組み合わせようとして、PET素材とガラス素材の2種類で悩みました。決めきれず2種類とも購入して試したのですが、PETよりもガラスのほうが光を通したときにきれいだと感じました。
部屋の中では限られた光を利用して、いちばんきれいだと思う角度やタイミングを探して撮影しています。光を感じられる表現ができるよう、反射しやすいものや透明感のあるアイテムを選ぶよう意識しました。
【オーロラローズ】宝石のような美しさを引き出す
「オーロラローズ」はSNSでよく見かけていたアイテムです。プラスチックのような材質で、オーロラのように光が当たると色鮮やかにローズが輝きます。
実際に手に取ってみると、「誰も知らないだけでこの世界のどこかに咲いている」ような、「夜の優しい月明かりを吸いこんでできた結晶」のような印象を抱き、儚く幻想的な世界観のイメージが湧きました。
逆光や半逆光で照らしてみると、細かな宝石の結晶が集まり輝いているように見えました。そして、くるくると動かすだけでも、色や見え方が変化します。左の写真では青や紫の色合い、右の写真では黄色系が多く感じました。撮影では反射の仕方を観察しながら、向きなどを微調整していくと好きな表情を残せそうです。
実験①自然光でオーロラローズに輝きを加える
《用意したもの》
- オーロラローズ(大・小)
- フィルムカーテン
光をより感じられるように背景としてフィルムカーテンを使うことに。水面が反射しているようなきれいさだったので青色を選択しました。
《セッティング》
- 自然光が入る時間に、窓からの光が後ろからローズに当たるように
- カーテンレールにピンチーハンガーなどを引っかけ、フィルムカーテンをはさみ背景に
- 大きくぼかせるよう、開放F値の小さいレンズで撮影
《撮影のポイント》
F2.5、1/4000秒、ISO200
オーロラローズから小さな花火が咲くように、花びらのところに玉ボケが集まるようなイメージで撮影しました。
手前に小さいローズ、奥に大きなローズを配置。大きいローズでできた玉ボケが重なるよう位置を調整しました。F2.5と少しだけ絞ることで、花びら全体にピントを合わせています。
F1.8、1/4000秒、ISO125
太陽に透けた色が優しく光に溶け出していくようなイメージで、ローズを前ボケにして撮影しました。
淡くて儚い印象にしたかったので開放F値にし、少し曖昧なくらいのピント合わせにしています。前ボケでローズの茎の部分をふんわりと隠しているのもポイントです。
F2.5、1/4000秒、ISO250
前ボケをもっときれいに、画面の半分までかかるようにするために、大きいローズを花瓶にさして小さいローズを片手で持ちながら、好きな光の具合でシャッターを切りました。反射する面で万華鏡のように色が変わるので、小さいローズをレンズの前でくるくると回し調整しています。
複数の色がにじみながらも、玉ボケの形が少し残っているのがかわいいと感じました。
実験②鏡を組み合わせる
実験①のアイテムに加えて鏡を組み合わせ、ローズを反射させて新たな表情を引き出します。
《撮影のポイント》
F3.2、1/2500秒、ISO250
1本の赤いバラの花言葉は「ひとめぼれ」、透明なバラなら何色にも染まるような気がして。鏡を見て花が何か考えごとをしたり、自分の姿に見惚れていたらおもしろいなと想像しました。
その姿をのぞきこむようなイメージで、窓に立てかけた鏡と小さいローズをフィルムカーテン越しに撮影しました。
実験③夜にライトでローズを浮かび上がらせる
《用意したもの》
- オーロラローズ(小・大)
- キャンドルホルダー(ローズを入れる用)
- フィルムカーテン
- LED付台座(LEDの入っている中央と、サイドが光ります)
- LED電飾
- 鏡
《セッティング》
- 小さいローズに電飾を巻き付ける(電飾の紐ができるだけ見えないように)
- 電飾付きのローズをキャンドルホルダーに入れ、LED付台座に置く
- 背景にフィルムカーテンを取り付け、鏡を立てかける
- 部屋の照明を消し、LEDをつける
- 大きくぼかせるよう、開放F値の小さいレンズで撮影
《撮影のポイント》
F2.8、1/60秒、ISO640
暗闇の中で浮かび上がるローズを写し出しました。透明なオーロラローズは、暗闇では深い青色に染まります。
この写真は、上のように空間をつくり、鏡に映ったローズにピントを合わせています。左側の前ボケにしているのは実際のローズです。花が一つしかなくても、鏡を使うことで暗い室内でもきらめきを出すことができました。
F2.8、1/30秒、ISO640/撮影した写真を上下反転
先ほどのセッティングをしている際、フィルムカーテン越しに見える光(電飾を巻き付けた小さいオーロラローズ)がきれいだったので、大きいオーロラローズを片手で逆さまに持ちながら撮影しました。カメラも片手になるため、手ブレしないシャッタースピードを確保します。
「青く深い海の中で気泡を吐き出すようなイメージ」を連想し、撮影した写真を上下反転させました。
F2.8、1/30秒、ISO640/撮影した写真を上下反転
上の写真と同じシチュエーションで、横構図で切り取りました。
道端の花がぼんやり街明かりなどに照らされているイメージです。透けて見える花びら越しの光に惹かれました。
F1.8、ISO1600、(左)1/60秒、(右)1/15秒
電飾を巻き付けたローズを窓辺に飾っていると、好奇心旺盛な猫が様子を見にやってきました。暗闇に溶けこむ猫の瞳の中が、近づくたびにきらきらして、とてもきれいです。暗いので瞳にピントを合わせるのは難しかったですが、合わなくても猫が見ているのがわかり、愛おしさを感じました。
実験④タブレットに写真を映し、背景にする
《用意したもの》
- オーロラローズ(小)
- 鏡
- LED電飾
- タブレット
《セッティング》
- 鏡の上にローズを乗せる
- タブレットに自分で撮影した写真を表示させる
- 部屋の照明を消す
- 電飾でローズの花びらを照らす
- マイクロレンズで、被写体に寄って撮影
《撮影のポイント》
F3.8、1/30秒、ISO320
夕日が沈む海の写真を背景に、波打ち際に花が置かれているような位置に調整。透明なオーロラローズは、背景にした写真の色を吸いこんでいるかのようで、とてもきれいでした。
表示された写真を画角いっぱいに切り取ると、明るさが確保できるため、手持ちでも撮りやすいです。
F3.8、1/30秒、ISO500/撮影した写真を上下反転
今度は、夜空にポツンと佇む月の写真をタブレットに表示しました。背景によって暗い環境になると、ローズの明るい部分だけが浮かび上がる、不思議な感覚になる1枚を撮ることができました。
【ガラスの小瓶】色や光をたくさん詰めこんで
ガラスの小瓶は元々何個か持っていて、花を詰めた瓶をつないでガーランドにして飾って楽しんでいました。今回は、小瓶に光るものや色鮮やかなものを集めてみようと思います。
マイクロレンズで撮影したい気持ちがあったので、できるだけ小さいものを集め、小人の目線になったようなイメージで世界観を考えていきました。
実験①輝くものを散りばめる
《用意したもの》
- ガラスの小瓶
- ドライフラワー
- ジュエリーラメホログラム
- クラフト用ビーズ
- サンキャッチャー
- 造花
3と4は、複数色を選べたほうが好みやイメージに合わせて変えられます。
《セッティング》
- 自然光の入る窓辺で(テーブルを移動できないため、床に白い布を敷いています)
- 瓶の中にドライフラワーとジュエリーラメホログラムを入れる
- 瓶のまわりにビーズや造花などを置く
- マイクロレンズで、被写体に寄って撮影
《撮影のポイント》
F3.5、1/1000秒、ISO100
ドライフラワーの入った小さな瓶をメインに、主役が際立つよう白を基調にまとめました。マイクロレンズで寄って撮影する際には、小さいものと大きいものを組み合わせることで、画の中にメリハリが出てきます。
F4、1/4000秒、ISO400
イメージは、「瓶の中に小さな海と花を閉じこめた魔法」。手前に置いたビーズも、光を反射してきらきらしています。
背景にサンキャッチャーやオーロラローズなど光るものを複数置くことで、鮮やかさをプラスしました。造花を多めに配置し、手前にはビーズ、同じガラスの小瓶を後ろに配置して、奥行きを出しています。丸いビーズもかわいいですが、四角いものが転がらずに配置しやすいです。
実験②サンキャッチャーの光をアクセントに
《用意したもの》
- ドライフラワーの入った小瓶
- サンキャッチャー
《セッティング》
- 自然光の入る窓辺で、サンキャッチャー越しに光が入るよう位置を調整
- マイクロレンズで被写体に寄って撮影
《撮影のポイント》
F4.8、1/250秒、ISO125
サンキャッチャーを動かすと光の色が変わります。レンズに近づけて、動かしながら自分の好みの色合いのときにシャッターを切っていきます。
F3.5、1/4000秒、ISO200
上の写真では、サンキャッチャーを持ち上げたり、高い位置から反射の仕方を観察して撮影しました。光がちらばり、虹色や赤・青などの光のかけらがきれいです。
F4.5、1/1000秒、ISO320
こちらは、「瓶の中を小人目線でのぞけたら」と撮影した1枚。手前にサンキャッチャーを前ボケで写しました。瓶のふちもきれいにボケてくれて、優しい印象に。中のドライフラワーが透けていてかわいらしいです。
【造花】イメージの中にある花の世界を表現
花を撮りたいときはいつも花屋さんで購入していましたが、今回は造花で花撮影をしてみました。100円ショップの造花は種類が豊富です。
実験①水辺に咲く花を再現
《用意したもの》
- 造花(蓮)
- 水が入る器(金魚鉢)
- フィルムカーテン
- ラップ
蓮の花は咲くと3日~4日ほどで散る、とても短命で儚いことに惹かれて選びました。
《セッティング》
- 自然光が入る窓辺で
- 金魚鉢に水を入れる
- 背景に水感を出すため、青いフィルムカーテンを使用
- 金魚鉢のふちの部分をわかりにくくするためと、より水を連想させるために、くしゃくしゃにしたラップをかぶせる
- 大きくぼかすため開放F値の小さいレンズで撮影
《撮影のポイント》
F1.8、1/4000秒、ISO160
イメージは、水面に咲く一輪の蓮。ラップをくしゃくしゃにした結果、斜め上からの光を反射してたくさんの玉ボケができ、水面のきらめきを表現できました。
左の写真では、花の影もかわいかったので縦構図で写し入れています。右の写真では、より「水辺に咲いている」ように見せるため花だけを切り取りました。背景のフィルムカーテンやラップに光が当たり、水面に反射してできた水の粒のようです。
実験②洗面台で水に浮かぶ花を再現
《用意したもの》
- 造花
- ラップ
造花は購入時にはつながっているので、一つ一つばらしたほうが配置を調整しやすいです。
《セッティング》
- 洗面台に水を張る
- 水の上にラップをふんわりかける(造花が水に浸かってしまわないように)
- ラップの上に造花を並べる
- 洗面所は光の入らない暗い状態で、スマホなどのライトを使い光を当てる
- 露出を確保し、ボケ表現ができるよう開放F値の小さなレンズで撮影
スマホのライトは少し黄色味がかっているので、水の青を表現できるようホワイトバランスは「蛍光灯」に設定しました。「電球」も試しましたが、青が強くなり花の色に影響が出てしまいます。
《撮影のポイント》
F1.8、1/125秒、ISO320
小さめな一つの造花を主被写体として、背景となる部分に花が重なるように置きました。ラップを浮かべると、波紋のような形状が自然とでき、下に影が映るので水に浮かんでいるのがより伝わりやすくなります。
アングルは、真上よりも水面に近づき斜めからのぞくように撮影するほうが、水が揺れているように見えます。そのため、スマホのライトも斜め上から当て、主被写体の近くがきれいに反射するような位置を探しながらシャッターを切りました。
F1.8、1/125秒、ISO320
限られた空間の洗面台では、撮影位置などを調節するときにラップの波打ち方で揺らめく表情が異なるのだと気づきました。左の写真ではその揺らめきから小さな小川、そのそばに咲く花を連想し、奥から水が流れてくるように縦構図で撮影しました。
右の写真は、雨上がりの水たまりに落ちた花をイメージしています。青い空を映す小さな水たまり、時折風に揺られて模様をつくる水面。そういう水たまりに浮かぶ花はどこか儚く感じるため、一つだけ花を置いて撮影しました。
実験③水滴の中に造花を写す
《用意したもの》
- 造花(水滴の中に入れるので大きめなもの)
- 金魚鉢
- ディスプレイスタンド
《セッティング》
- 金魚鉢の中に造花を入れる
- ディスプレイスタンドに水滴を作る
- マイクロレンズで、水滴に近づけて撮影
水滴の中に花が映るようスタンドの高さを調整する必要があります。私は手で持ちましたが、本などで高さをつくり安定させたほうが、手ブレの心配もなく撮影できると思います。
《撮影のポイント》
F13、1/160秒、ISO640
水滴一つ一つに花を閉じこめたような写真になりました。
F値が小さいとピントを合わせづらいので、絞っています。ピント位置は水滴の中。MFで合わせています。背景に花以外のものが写らないように、まわりにものがない環境で撮るのがオススメです。
実験④花で縁取った鏡を作る
《用意したもの》
- 造花(複数種類)
- ナチュラルなリース
- 鏡+台
- キャンドルホルダー+オーロラローズ(小)
造花をばらすときに茎(緑の部分)を長めに残して切ることで、他の組み合わせと使い回しながら撮影ができます。また、リースに花を差しこむ際は接着剤を使わず、何度でも使えるように。季節ごとに花を入れ替えて楽しんでもいいかもしれません。
《セッティング》
- 自然光が入る窓際で
- リースの隙間に造花を一つずつ差しこむ
- リースの奥に鏡をセット(主被写体や背景の映りこみ次第で角度を調整)
- 手前に鏡に映したい被写体を置く(今回はオーロラローズ)
- 大きくぼかすため、開放F値の小さいレンズに
- 正面からでは自分自身やカメラが鏡に映るため、斜めから撮影していく
《撮影のポイント》
F1.8、1/2000秒、ISO200
リースに差した造花はぼかすことで、本物のような印象になります。そして、鏡の中に映すのは、オーロラローズにしました。
左の写真では、鏡の中にピントを合わせています。オーロラローズの実物を前ボケで入れ、奥行きを出しました。
右のように実物にピントを合わせると、鏡の中は玉ボケに。花びらから玉ボケが溢れているイメージで重なるように撮影しました。オーロラローズは光が当たった姿に目がいきがちですが、影にも色がついてかわいらしく、そこまで入れるよう縦構図で切り取っています。
F1.8、1/4000秒、ISO200
撮影していると、猫がのぞきこんできました。鏡の中が気になるのと、花に興味津々(造花なので動物がかじってしまっても安心です)。猫の後頭部も一緒に写すことで、のぞきこむ様子が伝わると思います。写真を通して、猫目線で世界をのぞけたような気持ちにもなりました。よく見ると、瞳の中にオーロラローズが反射して、きらきらと映りこんでいるのも好きなポイントです。
Photographer's Note
100円ショップは、安価で誰でも気軽に購入でき、複数の小物を組み合わせることで、空間が限られている部屋の中であっても自分の好きなイメージに近づけられます。大きな準備をしなくても、家にあるものと組み合わせて撮影の幅が増えることも魅力的です。撮影後もインテリアとして使えるものを選んでおくと、そのときだけでなく、また違う機会に繰り返し使うこともできますね。
100円ショップはライトの種類も豊富で、夜の雰囲気を生かした撮影で試してみたり、アイデア次第でまだまだいろんな世界観を表現できそうです。
部屋撮りをする際の機材と設定のポイント
【機材】
- カメラ:軽くて小さいサイズ感のものが、気軽に撮影できてオススメです。今回使用した Z fcは描写性も優れ、暗い状況でもきれいに色を再現してくれました。
- レンズ:空間が限られているので、背景をぼかしたり、明るさを確保するなどF値が小さいものが活躍します。また、マイクロレンズがあると、自分が小人になったような感覚で、被写体の新たな魅力に気づけます。
【設定】
- 撮影モード:明るい環境であればAモードでOKですが、Mモードのほうが好みの陰影を探しやすく、暗い状況でも細かく設定できて撮りやすいです。
- F値:玉ボケを生かしたいときや、おぼろげ・儚い印象にしたいときなどは開放F値に。全体をとらえたいときや繊細に写したいときには~F5程度にし、マイクロレンズでピントを合わせやすくする場合にはF13程度まで大きくする場合もあります。
- シャッタースピード:暗い環境や、片手で持つ際は手ブレしない速さに設定します。
- ISO感度:自然光が入るところでは100で十分に足ります。日が陰ったり、くもりのときは400程度、夜は上限1600ほどに。
- ピント:シングルポイントAFをメインに使用しました。マイクロレンズでの撮影や、夜の撮影でピントが合いにくい場合はMFに切り替えます。
Supported by L&MARK
宵月 絃
デジタルカメラで身近な四季の花や月、星、空など「すき」と感じるものを写真に収めてSNSを中心に発信。淡く儚い雰囲気や、静寂の中にやさしさを感じる光景など、見る人の気持ちに寄り添うような写真が人気を集めている。