フォトグラファーが自らテーマを考え、心の赴くままにシャッターを切る…ここでしか見られない「WEB写真集」。第5回は、NICO STOPフォトコンテスト「#私のベストショット2021」で最優秀賞を受賞した安藤マミコさん(@mamico__1_)です。「すぐそばにある大切なものと美しさ」をテーマに、 Z 7IIで撮影した作品をお届けします。
太陽の光を浴びて風を感じること、
人と笑いあうこと、
好きなものを食べること。
そんな当たり前のことが
実はとても尊いと知った。
空気のようにすぐそばにあるもの
その美しさを見逃さないように
写真に閉じこめる。
曖昧な記憶や何気ない仕草も大切に。
「今朝なに食べた?」
たわいないことを話して笑う
愛おしい時間。
ゆらゆら漂い、刹那にきらめく。
風も光も
確かにそこにある奇跡。
同じ景色を隣で見ている
ただ、それだけのことがうれしい。
跳ねるような感情は生きてる証。
これからも、忘れないように。
Photographer's Note
何気ない瞬間の積み重ねから感じる、身近な存在の大切さ
写真集としてまとめたときに、映像作品を見たような物語を感じる写真を目指しました。
何気ない瞬間の積み重ねが日常であり、一つ一つを丁寧に見つめると、とても美しく愛おしい。見てくれた方にも、そう感じていただけたらうれしいです。
キーワードとして“人と人”、“光と風”、“食”を意識して撮影を行いました。どれも私自身がある出来事をきっかけに、大切さを改めて実感した存在です。「当たり前に思っていることが、生きがいを支えている」と学んだことが、この作品に大きく影響しています。
また、フィルムの鮮明すぎない写りが好きで、普段からデジタルの写真もフィルムライクに編集しています。曖昧さの中に、その場の空気や温度感が写りこむと考えているからです。
ここでは、今回の撮影と編集のポイントを紹介したいと思います。
【人と人】そばに人がいる尊さをチームで表現
誰かと過ごせるうれしさや楽しさを表現するために、2名のモデルさんに協力していただき、ヘアメイクさんやスタイリストさんも含めたチームでの作品撮りに挑戦しました。
衣装は、冬の風景に映えるように鮮やかな色で、風に揺れるやわらかい素材のものを用意していただきました。結んだスカーフの片方を長くして風になびくようにするなど、みんなで意見を出しあったから撮れた写真たちだと感じています。
自然な表情を撮りたいという思いはいつもと変わらず、最近のマイブームや地元のことなど、たわいない会話をしながら撮影しました。純粋にその時間を楽しむようにしていると、モデルさんにも気持ちが伝わっていい空間になっていきます。
【光と風】アイテムで感覚を可視化する
目に見えない風を表現するために、しゃぼん玉を使いました。ふわふわ漂い弾ける様子は、日々の儚さを連想させます。自然と笑顔になるので、楽しい雰囲気をつくるのにもオススメです。
虹色の前ボケは、ラッピングなどに使われるオーロラフィルムです。この日はくもっていて、光で写真に変化を出すのが難しい状況だったので、フィルムで表現の幅を広げようと思い取り入れました。逆光で発生するフレアのようにも見え、光を演出できたのもよかったです。
【食】色と動きで表す「おいしい」の感情
食べる喜びを写したかったので、色鮮やかでわくわくする見た目のドーナツを選びました。このように手に持てるものだと、食べている表情を撮りやすくポーズの自由度も上がります。
あえてピントを外したりぶらしたりすると、被写体のディテールにとらわれず、全体の空気感や感情の高まりが表現できると考えています。このときは「おいしい?」「それはなに味?」など会話をしながら、シャッタースピードを遅めに設定して、モデルさんの無邪気なかわいさを写しました。
【編集】フィルムライクな色味と質感を表現
編集でフィルムのような色味・質感に仕上げることで、いつかの記憶のような曖昧さとやさしい雰囲気を引き出しています。あえてピントを外した写真と同様に、鮮明すぎない写りからにじみ出るものを大切にしたいです。
左:編集前、右:編集後
編集手順としては、まず全体的にやわらかさを出すためにシャドウを上げて明るくし、色温度も少し上げます。色味は、特定の色だけ目立つことがないように個別で調整。上の場合は緑の色相を上げ、彩度を下げて深みを出し、バランスを取りました。最後に粒子を上げてフィルム特有のざらつきを出して仕上げます。思い出にそっと触れるような、温もりを感じる写真になりました。
※編集ソフトはLightroomを使用しています。
これからも自分の感じることを大切に
フォトコンテストでの受賞を通して、「認めてもらえた」ということが自信につながり、新しい挑戦へ背中を押してもらえたような気がします。
NICO STOPフォトコンテスト「#私のベストショット2021」最優秀賞作品
これまでその場の雰囲気や感覚で写していくことが多かったのですが、この写真を撮ったときは表現したいものが自分の中で決まっていたので、準備して挑みました。作品にこめた強い思いを受け取っていただけたことが、私の中でとても大きかったです。
これからも、自分の感じるものを大切にして、ありのままの人や空間を素直に撮っていきたいです。子供・家族写真の撮影を中心にしてきた中で、2021年から個人的な作品撮りを増やしてとても世界が広がりました。
2022年は積極的に作品展示の機会をつくるなど、写真がスマホ・PCの画面から飛び出して、暮らしの中に入っていけるような活動もできたらうれしいです。
ここまで見ていただき、ありがとうございました。
作品撮りにニコンの機材を使ってみて
まず Z 7IIは、グリップがほどよく手になじむ感覚がありました。ダイヤルやボタンは、一つ一つしっかりとしながらも滑らかに操作でき、シャッター音も個人的に好きなポイントです。
50mm単焦点は普段からよく使用しますが、NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sの開放F値で見る世界は新鮮でした。とろけるようなボケやきらきらした玉ボケなど、ボケの表現が豊かで印象的です。高画質も相まって、被写体が浮かび上がるような臨場感のある写真が撮れました。
そして、一番驚いたのは線の描写です。まつ毛や髪の毛をとても繊細に写してくれるので、いつもより細部まで意識しながら撮影できたように思います。
写真展のお知らせ(終了しました)
ニコンプラザにて、安藤マミコさんが Z 7IIで撮影した作品を展示いたします。お近くの会場へ、ぜひお越しください!
場所:ニコンプラザ 東京・大阪
期間:2022年3月4日(金)~2022年3月31日(木)
時間:10:30~18:30
※所在地や定休日はこちらでご確認ください。
※撮影は新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮した上で実施しています。
※新型コロナウイルスの感染症対策に十分にご留意いただくとともに、政府、自治体など公的機関の指示に従った行動をお願いいたします。
Model:佐々木美緒(@m.s_ri)、井川昂紀(@i_k_p___)
ヘアメイク:中村麻美子(@mamiko__nakamura)
スタイリスト:Ryo Sugiyama(@_ryosugiyama_)
Supported by L&MARK
安藤マミコ
東京を拠点に活動するフォトグラファー。素直に写すことをモットーに、その場の空気感が伝わるポートレート作品を撮影している。NICO STOPフォトコンテスト「#私のベストショット2021」にて最優秀賞を受賞。