やわらかい描写が特徴的なオールドレンズ。フィルムカメラとの組み合わせはもちろん、デジタルカメラにオールドレンズを組み合わせて楽しむ人が増えています。中古のオールドレンズは新品の現行レンズに比べると安価ですし、愛用カメラをそのまま使えるのも魅力ですよね!
※本記事では、もともとはフィルムカメラ用に作られた、マニュアルフォーカスのレンズをオールドレンズと呼んでいます。
そこで、フィルムカメラユーザーとデジタルカメラユーザーの2人のフォトグラファーに、オールドレンズ×デジタルカメラの組み合わせを体験してもらいました。
第1回は、フィルムカメラユーザーのnanoさん(@nanono1282)。どんな描写になるのか、また、デジタルならではのどんな楽しみ方があるのでしょうか?
nanoさん
- 作風:日常と非日常の中にある曖昧さ、そして感情を丁寧に表現
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こんにちは、フォトグラファーのnanoです。私は曖昧な描写や表現が好きでフィルムカメラを使うことが多いのですが、今回は普段使用しているオールドレンズをミラーレスカメラZ 6に付けて、ポート―レートやスナップ撮影をしてきました。
オールドレンズ×デジタルカメラで撮影するときは、フィルムカメラで撮るときとシャッターを切る感覚は同じですが、描写・操作性・その後の編集に大きな違いが出ます。
曖昧な描写+デジタルで広がる表現
オールドレンズならではの描写がありながら、デジタルカメラの特性を生かせるのがこの組み合わせのいいところだと思います。連写や暗所撮影に少し曖昧な描写を取り入れてみました。
オールドレンズの個性+連写
オールドレンズはそれぞれ個性がありますが、愛用している「Nikkor S Auto 5㎝ F2」は優しく、控えめなぐるぐるとした背景描写が特徴的です。
私はこのレンズのボケ具合がたまらなく好きなので、あえてぼかして撮影してみました。かなりぼけた状態で撮影すると、絵画のような雰囲気に。普段フィルムでは、ここまで実験的なことはできないので新たな試みでした!
上の写真は、モデルさんのかわいい動きを連写しました。フィルムカメラで連写は難しいですが、デジタルカメラでは好きなだけ連写できます。
オールドレンズの優しい描写+室内や夜撮影
フィルムカメラでは、フィルムのISO感度の制限で室内や夜など暗いシーンでの撮影が難しい場合もありますが、デジタルカメラとの組み合わせではそういった状況にも強いです。さらに、オールドレンズの優しい描写が加わります。
雰囲気のある暗めなカフェや、夜の灯りの下などでも、ぶれずに安心して撮影できました。
オールドレンズ×デジタルカメラではクリアな描写も楽しめる
オールドレンズ×デジタルカメラは、絞るとクリアな描写も楽しめます。この組み合わせでは、曖昧な描写とクリアな描写を撮影の仕方で使いわけできるのもおもしろいです。
デジタルカメラとフィルムカメラの仕上がりの違い
オールドレンズで撮ると、デジタルカメラでも私の好きな曖昧な描写になります。ただ、フィルムカメラとの違いは、フィルム自体の質感(粒子感やフィルムの種類ごとの微妙な諧調の変化や色味などの違い)がない分、良くも悪くも見たままになるところです。
フィルムでは、なぜか感光したり、思ったよりコントラストが出た/出ないなど、思いもよらないドラマチックなことが起こります。私はフィルムの、そういう予想通りにいかないところが好きなのですが、同時に何かトラブルが起きないか不安にも…。デジタルカメラは、“ちゃんと自分が写したいものを再確認しながらしっかり撮る”という原点回帰になるのではと思います。
写りを撮影時にチェックできるので、いろんな表現を試せる
フレアやゴーストの入り具合を確認しながら撮影
オールドレンズは特有のフレアやゴーストが入るものが多いですが、光の入り方を細かく調整しながら撮れるのはデジタルカメラの強みだと思います。
やわらかい西日が差しこんでいたので、位置を調整しながらフレアやゴーストを取り入れました。
特殊効果を生かした画づくりもチャレンジしやすい
オールドレンズとフィルターは相性がいいんですが、さらに写り具合を確認しながら撮影できるのはデジタルカメラとの組み合わせだからこそだと思います。
フィルムカメラではどうなるか予想できないので(そこがおもしろくて好きなとこでもあるのですが…)、実験しながら撮影できたので新鮮でした!
上の2つの写真では、ソフトフィルターとサンキャッチャーを使用しています。どの位置に光が入るのか、どういったイメージにしたいのか確認しながら撮影しました。
こちらの写真は、カメラに接写リングを付けてモデルさんメインで撮影しました。中古で数千円で手に入る接写リングはデジタルカメラにも使えるので、クローズアップ撮影ができて便利。ピント位置などを確認しながら撮影できました。ちなみに、上の写真のピントは少し甘くして、雰囲気重視にしています。
デジタルカメラでは、露出はオートで思うままに撮れる!
普段フィルムカメラでは、ファインダーで細かく見ていますが(見える世界が変わるのでファインダー越しはとても好きなのですが)、ピントや露出合わせをしている間に大事な瞬間を逃しているときもあります。
その点、デジタルカメラの場合は露出をオートにして、ライブビュー撮影をするほうが多いです。露出オートなら、感情のおもむくままにその瞬間を撮れると感じました。本当はフィルムでもこのぐらいの感覚で撮りたいのですがそうもいかないので…、ここぞとばかりにたくさんシャッターを切っています(笑) フィルムもデジタルも、結構シャッターを切リたいタイプです。
光や影にこだわった画像編集
デジタルカメラのいいところは、やはり撮った後にすぐ確認して、編集までできるところです。特に光と影の表現にこだわることができるので、楽しいですね。
編集で光の表情を引き出す
こちらは、空を鏡に映した写真です。露出は布に合わせると鏡の部分が飛んでしまいますが、編集で空の色を戻しました。このような遊んだ写真を表現することもできます。
上の写真では、ドリンクの後ろから光がきれいに差しこんでいました。全体的にオールドレンズ感は出しながら、輝く部分を編集で強調しています。
暗部を引き上げる
マジックアワーに星と夕日がきれいだったので、空を広くとらえるために広角レンズを使って撮影しました。夕日など色味が刻々と変わっていくものは好きなタイミングをチェックしながらシャッターを切れますし、オールドレンズでもISO感度を調整しながら星を写すことができます。さらに、暗部を編集で引き上げることで、つぶれることなくグラデーションを表現できました。
編集は、元の色表現を大事にしながら
Z 6は撮った瞬間から色彩がきれいで、グッと妄想が広がりました。フィルムと違って編集でいくらでも変えられてしまうので、好みの幅が広い私はかなり迷ってしまうところ…。ですが、あくまで撮って出しの状態からイメージを膨らませていくので、元の色表現を大事にしながら編集しました。
Photographer's Voice
今回デジタルカメラでオールドレンズを使ってみて、個人的には…
- オールドレンズの曖昧な描写とデジタルのクリアな描写を使いわけできるところ
- そのつど、写り方をチェックして細かい微調整ができるところ
- 編集でさらにイメージを広げられるところ
がいいなと思いました。
加えて、夜の撮影や動きがある場合の撮影は、デジタルカメラのほうが表現しやすかったです。
私は、デジタル→フィルム→デジタル&フィルム…とカメラの使い方が変移してきました。写真を撮ることに変わりはなく、何を表現したいか/その表現にはどういったアプローチができるか…、それによって撮り方が変わっていくことはとても自然なことだと思います。自分が「〇〇が撮りたい」というときに、いかに引き出しを持っているか、幅広い可能性を想像できるかを大事にしていて、気になったものは何でも試すようにしています。はじめはわからないことだらけで「うーん」という感じなんですが、そこから新しい発見につながることもあります。
そういった点で見ても、オールドレンズ×デジタルカメラの組み合わせは、いろんな表現に出会うきっかけになるはず。レンズの個体差はありますがお手頃な金額のレンズも多く、いきなりフィルムカメラをはじめることに抵抗がある方や、フィルムカメラからさらに表現の幅を増やしたい方、双方にオススメです!
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いかがでしたか?
オールドレンズの描写が好きな方にとってデジタルカメラとの組み合わせは、その世界観を生かしながら新たな表現に出会うきっかけになりそうですね。オールドレンズ×デジタルカメラの組み合わせを、ぜひ一度試してみてください!
さて次回は、デジタルカメラユーザーである嵐田大志(@Taishi_Arashida)さんです。フィルムライクな写真が好きな嵐田さんにとって、この組み合わせで撮る写真がどのように映るのか…お楽しみに!!
Model:hug millet(@petiteoto)、ひろね(@hironeeko)、satoshi(@____3104)、aika(@_1119_a) 、Toshiki Ishiwa(@toshikiishiwa)
協力:ipe=anro(@ipe_anro)
Supported by L&MARK
※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。
※フォトグラファーの作品性を尊重して機材を選択・撮影しています。
※AI改造済みのNIKKOR-S Auto 5cm F2およびNIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8でなければFTZに装着できませんので、ご注意ください。
Fujikawa hinano
Instagramで作品を投稿。グループ展やメディア執筆など、幅広く活動中。「日常と非日常の中にある曖昧さ、そして感情を丁寧に表現したいと思っています」