はじめまして、小さな文具ブランド「ASANEL」(@asanel_bungu)の店長です。イラストレーター・アートディレクターとして活動しながら、「ありそうで見つからない本当に欲しい文具」がコンセプトの文具ブランドを切り盛りしています。
Z fcで撮影されたNICO STOP写真展「伝えたい、わたしの世界」では、来場記念のスタンプを制作しました。
私は普段手帳を使っているのですが、楽しみ方の一つに日常の写真を使った「フォトコラージュ」があります。
写真はスマホやパソコンで見ることができますが、プリントして手帳に貼ると持ち歩くことができ、本当に気に入った写真をすぐに見返すことができます。そして、コラージュして残すことで写真には写っていない“気持ち”まで補うことができ、写真に新しい表情が生まれるんです。
左:撮影した写真、右:その写真でコラージュした手帳
お出かけや旅、撮影の予定を手帳のカレンダーに書きこみ、その記憶を手帳にコラージュ、そして次に行きたい場所を手帳にメモする…。持ち歩く手帳に集約することで、ふとしたときに見返したり、友達と一緒に見たり、写真ライフの楽しみ方が広がっていきます。
さらに、写真と文具の組み合わせはたくさんの偶然を生み、手帳時間に彩りを添え、より愛おしさが増していきます。「世界に1冊だけの、自分のための手帳」、特別な宝物を自分のために作れるところに手帳の魅力を感じています。
この記事では Z fcで撮影した写真を使い、「写真セレクト」「テーマ決め」「写真のプリント」「組み合わせる文具選び」「コラージュ」のステップごとに解説していきますので、手帳ライフをより楽しみたい方はぜひ参考にしてみてください!
STEP1. 写真をグループわけ・セレクトする
日々撮りためた写真の中からコラージュしたい写真をセレクトします。実際にコラージュをするときはテーマを決めてから行うため、「空の写真」「スイーツの写真」「同じお店の写真」など撮影した写真をグループわけすると、テーマ決めやその後のセレクトがスムーズになります。
今回はその中から秋に食べたパンの写真で手帳をコラージュしたいと思い、セレクトしました。なお、色味や印象が似ている写真同士にするとページがまとまりやすくなります。
撮影時に意識すること
「後でコラージュに使いたいな」と思うときは、以下を意識しています。
- 角度や画角を変えて2〜3枚撮影
- サイズ調整しやすいように広めでも撮影
- 小さくプリントしても文字や絵柄が見えるように寄りも必ず撮影
さらにパッケージを撮っておくと、手帳に記録するときに店名や商品名がわかるので思い出しやすくなります。
STEP2. 写真からコラージュのテーマを決める
コラージュをするとき、「何からはじめたらいいか迷う」というお悩みをよく耳にします。まずは、使いたい写真から「テーマ」を決めましょう。方向性が見えて作りやすくなりますよ。
テーマの決め方は主に3パターンあります。
- 写真の季節
- 写真に写ったアイテム
- 写真の色味
このとき、「キーカラー」「モチーフ」も決めると合わせる文具選びがスムーズになります。
①季節からテーマを決める
写真は季節感が出やすく、「季節」からテーマを探すと見つけやすいと思います。春は桜やミモザなど優しく明るい色やモチーフが多く、夏は海を感じるマリンテイストも素敵です。物語を作るように季節から色やモチーフを選ぶとスムーズに決まります。
(例)実家から届いた秋野菜の写真でコラージュ
先日実家からカボチャやイモなど秋の実りが届き、写真を撮りました。野菜と一緒に入っていた小さなリンゴがかわいかったので林檎畑をイメージ。秋といえば「音楽の秋」…林檎畑で楽団がクラシックを演奏していたら楽しそうだなぁとテーマを決定。このような連想から、テーマ・キーカラー・モチーフを決めました。
- テーマ:『林檎畑で演奏する音楽楽団』
- キーカラー:くすみレッドとグリーン
- モチーフ:林檎と楽団イラスト
②アイテムからテーマを決める
次にテーマを探しやすいのが写真に写っている「アイテム」です。ケーキ、コーヒー、本、パン、文具、お花、コスメ、お洋服、手料理…。好きなものをテーマにすると文具やテキスタイルなどの柄が選びやすくなります。
(例)パンやお菓子の写真でコラージュ
パンやお菓子の写真から、感想を記録することをテーマに。週末ブランチをイメージして、我が家でテーブルによく敷く布の黒いチェックと、朝の爽やかさからブルーをキーカラーにしました。
- テーマ:『お家のダイニングでパンやオヤツを食べた感想』
- キーカラー:ブラックとブルー
- モチーフ:パン
③色からテーマを決める
3つ目は「色」、写真の色味をテーマにするとまとまりのあるコラージュができます。青色で集めた空の写真、エメラルドグリーンでそろえた海の写真…等々。文具も同系色を選ぶと統一感が出てきれいに仕上がります。
(例)一目惚れしたビンテージのカップ&ソーサーの写真でコラージュ
ビンテージの白いカップが映えるネイビーに夜空を感じ、「ビンテージと夜空」をテーマに。写真から「夜の喫茶店」を連想して、ビンテージカップでコーヒーを楽しみながら本をよく読むことをイメージして、文庫本の表紙のようなフレームをモチーフにしました。
- テーマ:『ビンテージと夜空を感じる』
- キーカラー:ネイビーと重めな木の色
- モチーフ:文庫本の表紙
テーマの決め方を3つ紹介しましたが、①の「季節」が最も決めやすく、はじめての方にオススメです。季節物の柄や色の文具はそのシーズンにたくさん発売されるので、モチーフも見つけやすいと思います。
写真からテーマを決める【実践編】
ここからは実際に、今回紹介する手帳コラージュのテーマ決めをしていきます。
今回は秋に撮ったランチのパンの写真を使いたいので、「季節」をメインにテーマを決めることにしました。
コラージュを楽しむコツは「連想」です。「パン」「旬の素材」「おいしい」「森の畑で育てた食材」…。自分の手帳なので、自由にキーワードを出していきます。
テーマは、「おいしい」+「旬の素材」から「おいしい秋の森」に決めました。秋の森からキーカラーは「グリーン」に。少しくすみのある色味が合います。モチーフは「森の木」、写真の中にも木の置物が入っているのでリンクします。
- テーマ:『おいしい秋の森』
- キーカラー:グリーン
- モチーフ:森の木
STEP3. コラージュ用のプリント写真を用意する
写っているものがしっかり見えるように、ページの40〜60%程度のサイズ感にプリントします。写真をたくさん並べたいときはもう少し小さくてもOKです。ポイントになるのはページの余白で、少し広めに取ることを意識するとゴチャゴチャせず、きれいに仕上がります。
なお、正方形に印刷するとかわいく仕上がり、縦長が一般的な手帳内でレイアウトしやすくなります。
自宅でプリントする場合はアプリやパソコンのソフトを使って好みのサイズに出力します。ツヤを抑えた「マット写真用紙」が文具となじみやすく◎。ハガキサイズを利用すると少ない点数をプリントできて、紙も無駄になりにくいです。
自宅にプリンターがない場合、写真店やコンビニ、オンラインサービスで気軽に印刷できます。
プリントしてグループわけしておくとコラージュしやすい
私は、手が空いているときに写真をたくさん印刷しておきます。グループわけをして小さな缶に収納しておくと、コラージュのときにさっと使えて便利です。シールタイプ以外の場合、まとめて裏に両面テープを貼っておくと時短になり、すぐコラージュに取りかかれます。
STEP4. 組み合わせる文具を選ぶ
続いて、実際に組み合わせる文具選び。貼り直しができて失敗しにくい「マスキングテープ」が、初心者の方も挑戦しやすいと思います。
- テーマ:『おいしい秋の森』
- キーカラー:グリーン
- モチーフ:森の木
「グリーン」と「森の木」から、緑色の方眼マスキングテープと細めのモスグリーンの無地マスキングテープを選びました。イラスト入り文具をプラスすると世界感がぐっと広がるので、森らしい木のマスキングテープもチョイス。3つ並べてみると、秋を感じますね。
もちろん1種類でもOKで、シンプルな柄のものが写真を引き立たせることができます。複数枚を重ねるときも、単色や方眼、チェック、シンプルなテキスタイルなど、情報が多すぎないものを選ぶとうまくまとまります。悩むときは写真の隣に置いて色味を確認してみましょう。
STEP5. 写真と文具で手帳をかわいくコラージュ
素材がそろったら、コラージュ開始です!
『おいしい秋の森』をテーマに、マスキングテープを使ったコラージュレシピを紹介します。
▲今回のレシピでこの手帳が完成します。
用意するもの
- プリントした写真:裏がシールになっているタイプはすぐ貼れて便利です(両面テープを使えばシールタイプでなくてもOK)。
- バインダータイプの手帳:リフィルでページを増やしていくので失敗してもやり直しでき、順番も後から変えられます。ゆったりコラージュが楽しめる「バイブルサイズ」を用意しました。
- リフィル:裏側への影響が少ない厚手の紙がオススメ(穴なしタイプはパンチで開けます)。
- マスキングテープ:ロール型は、文具店だけでなく雑貨店や100円ショップでも手に入れやすいです。
- ハサミ:コラージュ作業は小さめが使いやすいです。
- 細めのペン:写真のまわりに思い出やメモを書きこみます。太いとにじんだり文字が大きくなるので、細めを選びます。
①ページレイアウトを決める
コラージュのレイアウトは見開き単位で考えますが、きれいにまとまるパターンがいくつかあります。その中で使いやすいレイアウトレシピを作りました。それぞれに使いやすさや相性がありますので、写真のサイズや配置の参考にご利用ください。
クリックすると拡大できます。
今回は、「パンを食べた感想の日記風」に仕上げたいのと、写真を大きくゆったり見たかったので「A」を選びました。
②レイアウトに合う写真を選ぶ
同じサイズの写真を2枚用意しました。STEP2でも紹介したように、色のトーンや印象がそろっているとなじみがよくなります。ただ、写真が似すぎているとわかりにくいため、2枚のメリハリがあったほうがコラージュしやすいです。
③ページ上に写真を配置してイメージを確認
レイアウト「A」と同じ位置に写真を置きます。仮置きなのでまだ貼りません。
マスキングテープを複数使う場合、写真の後ろと手前にずらして貼ると、写真が際立ちます。重ね方を確認したいときは、マスキングテープを付箋に貼って仮置きすると仕上がりの雰囲気がわかりやすいです。付箋なので貼って剥がして、位置を何度でも直せます。なお、マスキングテープは透けるものが多いため白い付箋がオススメです。
④位置が決まったら手帳に貼っていく
仮置きして決めた順に貼っていきます。手帳からリフィルを外して、凹凸がない状態で作業をしましょう。マスキングテープは位置を失敗しても貼り直しできますが、写真は貼り直しできないので慎重に!
指先が影になって位置がわかりにくいときは、ピンセットを使うと見やすくきれいに貼れますよ。
⑤文字を書きこむ
すべて貼り終わったら、細めのペンで文字を書きこみます。
文章を書くのが苦手な方は、店名や商品名、日付や天気だけにするなど、悩まずに書ける項目にするのがオススメです。文字が少なくスペースが空いて気になる場合は、イラストのマスキングテープを貼ってほどよく埋めます。文具は季節物デザインが多いので、きっと貼りたくなるものが見つかると思います。
以上で完成です! シンプルですが写真が引き立ち、かわいく仕上がりました。
コラージュした手帳を撮影しよう!
せっかくかわいく仕上がった手帳…写真に残したいですよね? ここからは私が実践している撮影の仕方を紹介したいと思います。
コラージュの楽しさを伝えるためにも、手帳だけでなく、コラージュに使った文具を一緒に撮るのがポイント。手帳や文具はサイズが小さく質感や色・柄が豊富で、机の上での撮影に向いている楽しいモチーフです。
【撮影環境】自然光をカーテンで調光して影を抑える
家の中の自然光がきれいな場所で撮影します。ただし、主役の手帳に文具の影が落ちないように、白いカーテンで光をやわらかくしてコントールしているのがポイントです。また、背景をスッキリさせて、手帳や文具の色味やかわいさを生かすために、ホームセンターなどで購入できる「白い天板」で撮影しています。
なお、プライバシーの配慮として、家の特徴を極力出さないという意味合いもあります。
【撮影手順】文具を並べるときは引き算を意識
撮影は以下の手順で行っています。
①アングルとフレーミングを決める:基本のまっすぐ&俯瞰だけでなく、角度を変えて厚みを撮ったり、一つずつの文具をアップにしたり、バリエーションを出します。また、トリミングできるように少し広めに撮っておきます。
▲スマートフォンで見ると迫力がある縦写真。さまざまなSNSに使いやすい正方形。広めに撮っておくと、用途が広がります。
②手帳のまわりにコラージュで使った文具などを置いていく
③90%ほど並べたら、写真を見ながら文具を足し引き:最後の文具の足し引きが重要です。好きな文具が増えてくると「あれもこれも」と写真の中に入れたくなりますが、一つだけで見ればかわいい文具も、たくさんあるとゴチャゴチャした写真になり「何を見せたいのか」わかりにくくなります。
▲色数や柄が多くゴチャゴチャしているため、手帳が目立たない写真。
ゴチャゴチャしてしまうときは引き算の写真を目指します。
- 文具の数や色、柄を増やしすぎない
- 主役の手帳より脇役が目立たないようにする
- あれもこれもと欲張らない
色は3色程度、柄は1~2種類程度にまとめるのがよいと思います。
▲色数と柄を減らしてスッキリまとめた、手帳が見やすい写真。
小さな雑貨をプラスした演出のコツ
手帳で使った文具のスタイリングに慣れたら、さらにステップアップ。小物で演出してみましょう。
文具は直線が多いため、小さな花瓶や植物などを入れるとやわらかい印象になり、色味が足りないときに彩りをプラスしてくれます。また、上の写真では撮影に使っていた「Z fc」も小物として一緒に写しました。クラシカルな見た目は文具とも相性がよく、グリップレスで薄いため影ができにくく撮影もしやすいです。私は黒革の手帳がメインなので、黒とシルバーのボディはよくなじみました。
他にも古書・眼鏡・コーヒー・布などをプラスすると写真に物語性が生まれます。私は普段の暮らしの中で、雑貨店や骨董市で撮影に使えそうな小物を探したり、文具を乗せて撮影できる豆皿を集めたりしています。
コラージュ手帳をSNSに投稿する際の注意点
手帳は好きなものをコラージュで貼ったり、細かく日記や仕事のことなどを書いていると思いますが、SNSに投稿する際はプライバシーや権利に配慮することも忘れずに。見えると困る箇所にはアプリなどでぼかしを入れ、友達や家族と一緒に撮った写真はSNSに投稿してもいいか本人にきちんと確認。個人の暮らし・撮影場所・日時が特定されてしまうような情報は投稿するときに注意し、無理せずマイペースに、楽しくSNSを利用しましょう。
Creator's Note
最近はSNSでも手帳写真が大人気です! いろんな人の手帳術を見て、新しい文具に出会って自分もハッシュタグを使って投稿してみる…。ゆるやかに手帳好きでつながっていく素敵な文化が生まれています。
今回ご紹介した「コラージュ手帳」は、小さな箱庭を作るような楽しい趣味になります。お気に入りの文具を集めたり、手書きの字で日々を記録したり、カメラで撮影して写真を貼ったり、思い出を集めるのにピッタリです。
写真プリントのオススメサービス
「コンビニシール倶楽部」など裏面がシールタイプを選ぶと、すぐ貼ることができてオススメです。「アルバス」はInstagramと連動するので写真加工の手間もなく、「しまうまプリント」は操作が簡単でパソコンからもスマホからも写真プリントのオーダーがしやすいです。
コラージュがさらに楽しくなるオススメ文具
慣れてきたら、少しずつ好みの文具を足していくのも楽しいですよ!
スタンプはカスレやゆるみ具合がとてもかわいく仕上がりますし、シールやデザインペーパーもコラージュで人気です。文具はご当地限定デザインも多く、どこを訪れたかわかりやすく、手帳を見返すと楽しい気持ちになります。
写真のコラージュは楽しかった時間を思い出しながら作業をするので、幸せな時間が長くゆるやかに続きます。紙の手帳は気の向くままゆっくりと時間を見返すのに適していて、お気に入りのページが作れたときの達成感は喜びもひとしおですよ。
来年の手帳を検討する時期だと思いますが、コラージュ手帳をぜひ試してみてください!
Z fcを使ってみて
見た目の感想は「カメラらしいカメラ」でした。頭の中にある「カメラってこんなカタチをしている」というイメージがそのまま形になったような。プロダクトとして、とてもかわいいと感じました。ボディはブラックだけでなく張り替えで色を選べるので、好きな色の文具とおそろいにするのもよさそうです!
撮影に使ってみると、手になじむコンパクトさと軽さ、小さなものにも素早くピントが合うバランスのいいカメラという印象。文具はとにかく小さいので、手持ちで寄り引きが撮りやすく非常に重宝しました。写りは、家の中の自然光で撮ると、ややシャープな印象で文具との相性がよかったです。
使ったNIKKOR Z 16-50mm f/3.5-6.3 VRは、レンズがコンパクトになるため、お散歩やお出かけに持ち歩きやすく、1台あれば風景からカフェごはんまでたくさんの思い出を集められると思います。はじめてミラーレスのデジカメを使ってみたいという方にオススメです。
文具や手帳の時間をさらに楽しくしてくれる、素敵な写真時間もぜひ一緒に楽しんでください!
Supported by L&MARK
※機材名の記載のない Z fcを写した写真は、Z 50で撮影したものです。
Creator
ASANEL(アサネル)
イラストレーター・アートディレクターの店長がひとりで切り盛りする小さな文具ブランド。ブランドの意味は「朝、寝る。」。「ありそうで見つからない本当に欲しい文具」をコンセプトに、オリジナルの文具を制作している。