みなさん、こんにちは。連載企画「今日は何の日?」でハリネズミたちの写真をお届けしている、KAZ(@ichigo_chiyoco)です。
今回はいつもとは趣向を変えて、撮影の裏側…特にセット作りの裏側をご紹介したいと思います。ハリネズミだけでなく、生きものと一緒に暮らしている方で、ミニチュアアイテムを使った撮影に興味がある方はぜひ読んでいただけたらうれしいです!
わが家のハリネズミたち
(左上から)イチゴ、シルバ、(左下から)バニラ、ヒヨコ
長男・イチゴ、次男・シルバ、シルバの娘・バニラ、イチゴの息子・ヒヨコの4匹。
完成写真:「秋分の日」をテーマにした【森の中で楽しむ秋】
ハリネズミが、大きなキノコを傘のようにして「森の中で秋を楽しんでいる」イメージで撮影しました。こちらの写真のセット作りと撮影について、順を追って説明したいと思います。
- セット作りは、下準備が9割
- 撮影は10分勝負! テスト撮影で画角を決めておくのが大事
- 同じ素材を使って、違うシーンにアレンジ
- 【セット作りの前に】イメージ構想と素材集めのコツ
- Photographer's Note
セット作りは、下準備が9割
まず、どのように1枚の写真を作り上げるかというと…
- シーン構想
- セットのための素材集め
- 世界観を演出する小物作り
- セットの組み立て
- テスト撮影
- 実際の撮影
…というプロセスです。
ここでは、小物作りから説明していきます。
シーン構想や素材集めについてはこの記事の最後で紹介しますね。
お店でそろわない小物は手作り
今回、キノコはお店でなかなか気にいったものがなかったので、100円ショップで買った粘土で自作しました。
使うアイテム
- 粘土(左の軽い紙粘土と、右のしっとりした粘土)
- 割りばし
- 絵具
- 筆や串
- ボンド
粘土の使い分け
- 軽い紙粘土:サラッとして作りやすい(ただ、完成してから割れたりしやすい)
- しっとりした粘土:重みがあるが、艶っぽい仕上がりになる
小さいキノコは質感重視でしっとりした粘土で、大きいキノコは重いとバランスが保てないので、軽い紙粘土で作ります。
1.割りばしを芯にして、粘土で肉付け
大きなキノコの軸は、割りばしを芯にするのが安定するポイント。
- 上側を傘と、下側を土台と接着するため、割りばしは上下とも2cmほど出しておきます。
- 粘土で肉付けし、串でディテールを作りこんでいきます。
同じく粘土で作った傘を割りばしにさし、ボンドで接着。大きな傘はボンドだけでは接着に不安があったので、グルーガンで固定しました。
2.絵本のキノコを参考に、絵具で着色
今回は、絵本に出てくるキノコを参考にして、絵具で色をつけていきます。もちろん、自分の想像した世界観に合わせて自由に着色してOKです!
この手順で、小さいキノコも作成。大きいキノコはこだわったので4時間くらいかけて作りましたが、小さいキノコは乾かす時間を除くと30分くらいでできました。
3.スチレンボードで、ハリネズミのメインステージ作り
大きなキノコをラグに直接固定できないので、メインステージをスチレンボードをベースに作っていきます。まずスチレンボードに穴を開けてキノコの割りばし部分を入れ、グルーガンで固定したら飛び出た割りばしをカットします。
あると便利なスチレンボード
スチレンボードは背景作りやレフ板代わりに使える便利なアイテムで、100円ショップにも売っていますし、私はよく文具店「世界堂」で購入しています。
キノコを固定したら、スチレンボードが下のラグとなじむように、グリーンモスをグルーガンで貼り付けていきます。一瞬で乾くので、接着剤を付けてモスを付けての繰り返し…。
このときグリーンモスは1色ではなく、濃い緑とくすんだ黄緑の2色にしました。ミックスするとより自然な仕上がりになりますし、立体感も出ます。
グルーガン選びのポイント
100円ショップでも購入できるので、はじめての方はお試しで使ってみるのがいいと思います。私は頻繁に使うようになったので、1000円前後の接着剤が垂れにくいものにしました。
セットの組み立ては、準備した素材の引き算がポイント
用意した素材と小道具でセットを組んでいきます。ここで大切なのが、“入れすぎない”こと。
「せっかく用意したから」とてんこ盛りにしたくなる気持ちを抑えながら、主役のハリネズミが引き立つ世界観をつくっていきます。イメージ構想のときに参考にしたものがあれば、ここで再確認すると決めやすくなると思います。
こちらが完成したセット! どんどんイメージが湧いてきて30分くらいで組みました。
右側の奥からハリネズミが歩いてくるシーンをイメージして、その道端に落ち葉や木の実などを配置。ハリネズミの歩みの先に紅葉したモミジやキノコという色味を集めました。シチュエーションによりますが、主役のハリネズミの近くに色味を持ってくると、より際立ちます。
撮影は10分勝負! テスト撮影で画角を決めておくのが大事
いよいよ撮影です。
ハリネズミは長い時間じっとしてないので、1つのパターンを10分くらいで撮り終えるようにしています。ストレスをかけないように、短時間で撮り切るために、テスト撮影が重要なんです。
テスト撮影はぬいぐるみを使い、すべての設定を決める
1.深い森をイメージして、半逆光になるようセットを配置
自宅が西向きなので、光が入りやすい正午前後に撮影しています。深い森をイメージして、半逆光で奥から光が差しこむように。テーブルに置ける場合は、窓際にセットすることが多いです。
2.ぬいぐるみのリハーサルで、最終確認
せっかく組んだセットなので広めに写したくなりがちですが、主役はハリネズミで、作ったセットはあくまで背景として画角やアングルを決めます。カメラ位置はハリネズミに合わせるのですが、今回は三脚を使わず床スレスレに構えました。
そして、ある程度目ぼしがついたら、ぬいぐるみを置いて最終調整。ハリネズミはほとんど止まってくれないので、実際に取りそうなポーズを想定し、撮影して何度もチェックします。
- ハリネズミのいる場所が際立つ光と影の状態か
- 紅葉したモミジなどの入り方が、外のように自然かどうか
- 画角に入る色味、ハリネズミ近くの色味のバランスがいいか
上の写真ではハリネズミの手前にマツボックリを置いていますが、色味を足すために赤い木の実に変更しました。
機嫌のいい子をモデルに、指で気を引きながら本番撮影
機嫌がいいバニラをモデルに選び、ぬいぐるみでテストした場所にそっと置きます。
そして、所定の位置で構え、自分の指先で気を引きながら、ひたすら連写です! 床スレスレなので、可動式の液晶モニターはかなり助かります。
続いて、ヒヨコをモデルに撮影。ヒヨコは大きなキノコに興味を持ったよう。予想できない動きをするのも、ハリネズミ撮影の楽しさです!
なお、撮影が長くなるとストレスがかかってしまうので、1匹につき10分程度に。それ以上のバリエーションを撮りたいときは、別の子にモデルになってもらいます。
同じ素材を使って、違うシーンにアレンジ
せっかく用意した素材ですから、1シーンだけでなく、別シーンもアレンジして組まないともったいないです。イメージ構想や素材集め・小物作りのときから、複数シーン考えておきましょう。
繰り返しになりますが、1匹につき1日10分程度と決めているので、同じ日の場合はモデルを変えるか、もしくは別の日に撮影します。
先ほど使った素材に加えて、小さなキノコを並べていきます。セットを組み替えたら、ハリネズミのぬいぐるみで、最終調整。
今度はシルバをモデルに。丸まっている状態の手に、キノコの傘を乗せてみました。そして、先ほど同様連写です。
その中で撮れたベストショットがこちら!
SNSに載せる写真はカメラ目線を選ぶことが多いんですが、実は遠くを見る“憂い”のある表情も好きです。
いつも500枚くらいは撮影していて、今回は2000枚近くありました(笑) その中からベストショットを選ぶのは少し大変なんですが、目を引く表情やかわいいショットを発見したときは、早くみんなに見てもらいたくてワクワクします!
【セット作りの前に】イメージ構想と素材集めのコツ
「毎回しっかりセットを作る」というわけではありませんが、今回のセットは構想を含めると約2週間、買い出しや作業をはじめてからは4日くらいかかりました。
素材集めや小物作りが完了して実際のセットを組むのに約30分、撮影自体は10分くらいなので、作り出すまでの準備がほとんどです。
構想は、頭の中でイメージ+ネット検索で具体的に
ラフなどは作らず、頭の中でイメージをどんどん膨らませていきます。
下書きなどしっかり作ろうとするとそれ自体が大変ですし、実際に準備したり撮影しているときにもいろいろアイデアが浮かんでくるので、まずはイメージを膨らませることを楽しむのが大切なんです。
今回つくりたかったのは、「秋らしくシックな雰囲気」で、「森の中でハリちゃんたちが遊ぶ」イメージです。森が描かれている絵本や秋の風景写真などを参考にしました。
具体的なテーマがある場合はネット検索でイメージをつかむのもオススメ。使いたい小道具が決まれば、小道具別にどんなイメージがあるかを探していきます。
素材は100円ショップをメインに、専門店や通販でもチェック
秋の外の風景を室内で表現するため、
- 枯葉やモミジなどの造花
- 木の実
- 地面
などのアイテムを準備します。
撮影グッズは100円ショップをメインに調達しています。季節物でまだ入荷されていなかったモミジなどの造花は、ディスプレイ用品を扱う専門店で。普段の撮影では、「minne」などのオンラインショップでミニチュアアイテムを購入するケースも多いです。
ちなみに、地面をどうしようか撮影前まで悩みましたが、「リビングに敷いてるラグが使える!」とひらめきました(笑)
Photographer's Note
ハリネズミ撮影の裏側…いかがでしたか?
「ハリちゃんがこんなシチュエーションだったらかわいいな~」とイメージを膨らませるのが一番の楽しさだと思います。
普段おうちの白壁などで撮っているのであれば、背景に造花を置いて撮影するだけでも雰囲気が出ますし、たくさん撮影しているうちにミニチュア小物を作りたくなってきたらぜひチャンレジしてみてください。「こんなふうに撮ってみたい」「やってみよう」…と、どんどん楽しくなってくると思いますよ!
Supported by L&MARK
KAZ
1998年にハリネズミと出会い、一緒に暮らしはじめる。もともと動物が好きでその後もいろいろな動物と 暮らし、現在は4匹のハリネズミのイチゴ・シルバ・バニラ・ヒヨコと仲睦まじいハリライフを送っている。「ハリジェニック展」などの展示にも参加。