Lomographyの個性派フィルム4種撮り比べ。見慣れた場所でも世界観が一気に変わる!

Lomographyの個性派フィルム4種撮り比べ。見慣れた場所でも世界観が一気に変わる!

みなさん、こんにちは。フォトグラファーのFujikawa hinano(@nanono1282)です。私は主にフィルムカメラを使って撮影していて、今は撮りたいイメージによってフィルムを選んでいます。
以前、オススメのフィルム8種類を紹介したので、そちらもぜひご覧ください!

 

写真を続けていると、「自分の写真が何だか少し物足りない」と感じることってありませんか? そんなとき私は、「撮り方を変えてみる」「写真の仕上がりの雰囲気を変えてみる」など何かしら変化を起こしてみることにしています。その一つが「フィルムを変える」です。

アナログでも新しい挑戦をしているLomographyのフィルムだったら、私も新しい作品づくりができそうだと探していたら、Analogue Quartetというフィルム4種類がセットになったものを見つけました! どれも試してみたかったフィルムで、カラーとモノクロがバランスよく入っていることにも惹かれました。

 

Lomography「Analogue Quartet」

Lomography「Analogue Quartet」

 

今回はこのはじめてのフィルムを使って、愛機のFE2で新しい作品撮りに挑戦しました。作品とともに、各フィルムの楽しみ方、どんな画づくりができるかを紹介していきたいと思います。
※撮る状況によって写りや色味が変わりますので、あくまで参考程度にみていただければと思います。

 

Analogue Quartetのそれぞれの個性

Analogue Quartetは、36枚撮りのカラー2種類とモノクロ2種類がセットになっています。個性溢れるフィルムたちで、写り方がめちゃくちゃおもしろいです。このセットを使うだけで、普段見慣れた場所でも世界観が一気に変わります!

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

(左)2019 Lomochrome Purple 35 mm
いつもの風景がパープルやピンクの世界に一変する、独特なフィルム。特に緑は濃いパープルに変わります。

(右)LomoChrome Metropolis 35mm ISO 100-400
全体的に低彩度で、落ち着いたトーンです。その中でも赤、黄、青などの原色や黒が際立ちます。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

(左)Berlin Kino B&W 35mm ISO 400 2019 Edition
繊細なグレートーンと粒子感が、ドラマチックな1枚にしてくれます。コントラストが低いので、昔の映画のように幻想的でどこか切ない写真が撮れます。

(右)Lomography B&W ISO 100 35mm Potsdam Kino Film
はっきりしたコントラストで、撮っていて気持ちいいです。粒子感が適度で、ポートレートやファッションの撮影に適していると感じました。

 

カラーフィルムの2つは、ISO感度を100~400で選ぶことができます。撮る状況の明るさに合わせてカメラ側の設定を変えればOKなので、とても便利です!

持ち味を生かした表現と使いこなすコツ

このフィルム4種類を持って、普段から行く機会の多いロケーション(公園・街・海・森)で撮影をしました。それぞれの持ち味とそれを引き出すコツ、ちょっと難しいと感じたポイントなど、率直にお伝えしたいと思います。

2019 Lomochrome Purple 35 mm

緑がパープルに、青がエメラルドグリーンに、黄色がピンクにシフトします。色の特徴を考えつつ、モデルさんの服装や背景を決めると好きな配色で撮影できます。
※撮影時は光が弱かったので、すべてISO200に設定しています。

 

緑を背景にして、色の変化を楽しむ

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

緑がパープルに変わるのを生かして、植物を背景に取り入れました。そして、この日は光が弱かったので、「感光させると黄色っぽくなる」のではないかと思っていました。黄色がピンクに変わるので、下の写真ではあえて感光させて、ピンクの割合を多くする画を狙っています。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

これまでもピンクっぽい写真を試してきたんですが、甘すぎるのはちょっと違うと思っていて。このフィルムで撮ると、彩度が低い上にコントラストが高いので、エッジが効いた甘すぎない雰囲気が出て、とっても好きです!

 

 

変化しにくい白を入れて、配色のバランスをとる

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

日頃から街で撮るときは、配色がいかに気持ちいいかを探しています。このフィルムは、白は変化せず、黒と原色がより変化をするように感じました。その特徴を使って画づくりを考えます。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

左は、アリと髪の毛の黒を目立たせるような構図に。右は、画角内全体が白い同系色でかわいかったので、モデルさんの服が中心にくるように意識しました。

 

持ち味を生かすコツ

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

このフィルムは、露出で色の出方が大きく変わります。左がF2、右がF4で撮影した写真です。光の状態が同じとき、F値が小さいほど薄く、大きいほど色が濃く出ます。

光が入る場所では小さいF値でやわらかく、日陰では大きいF値でよりビビットに表現ができると思うので、好みに合わせて露出を調整すると幅が広がります。

 

難しいポイント

仕上がりの色を狙う場合、それぞれ何色に変化するのかあらかじめ頭に入れてシチュエーションを決めておく必要があります。それでも細かい色味を狙うことは難しいので、予測できない変化を楽しむ“遊び心”が大事です。

 

いつものフィルム+αで同時に撮っていくと、仕上がってきた写真を見たときに驚くはずです!  今回は日中だけでしたが、夜に街明かりを生かして撮ってみたいです。ぐっと雰囲気が出ると思います。

LomoChrome Metropolis 35mm ISO 100-400

全体が低彩度になる上に赤などの原色が際立つので、雰囲気と色をどう生かすかを考えてみました。
※撮影時は光が弱かったので、すべてISO200に設定しています。

 

低彩度の世界の中で原色をアクセントにする

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

彩度が落ちることで、何気ない場所でもノスタルジックな世界観に変わります。白い建物を背景に、モデルさんの服の色を意識して撮影しました。彩度が高い赤でもトーンが落ちるので、なるべく派手な色をポイントにします。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

このフィルムは暖色系が緑や黄色のトーンに変化するので、赤の服を際立たせながらも、全体的に統一感が出ます。また、色味の特徴を生かして、被写体もノスタルジックなイメージのものを撮るようにしました。

 

 

自然ロケーションではより幻想的な写りに

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor-N Auto 24mm F2.8

FE2、Nikkor-N Auto 24mm F2.8

 

フィルムの特徴を生かして、あせた空気感を出したいと思ったので、モデルさんには緑となじみやすい白の服を着てもらいました。また、上の写真は光が差しこむタイミングを狙いました。粒子感で光をやわらかく表現できています。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

個性的なフィルムでは、多重露出をしてみるのもおもしろいです。上の写真では、重ねる写真を上下反転させました。低彩度の描写を生かして、モデルさんを中心に世界がわかれているような、幻想的で静かな世界を表現しています。

 

持ち味を生かすコツ

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

1枚目の写真は明るい場所で、2枚目の写真は暗い場所で撮影しました。このフィルムは、明るいほど粒子感が多く出て、抽象的であたたかみのある描写になる印象です。逆に明暗差があるところや、少し暗い場所では、深く沈んだ色が出てダークな描写になりました。彩度や色味に加えて明るさも意識すると、自分のイメージした世界観を表現できると思います。

 

難しいポイント

背景と被写体のバランスは考える必要があると思います。低彩度ですが原色系は際立つので、背景はシンプルに、被写体やアクセントに色を入れる感じです。スナップであれば街中で色を探したり、ポートレートであれば服装や小物の色を意識することをオススメします。

 

もともと森や植物は「写真として色表現が難しいなぁ」と思っていたんですが、このフィルムで撮ってみると、彩度が落ちて全体的に黄色っぽくなり、落ち着いた雰囲気が出せてうれしくなりました。次は、コンクリート調の無機質な場所などで、色だけをポイントにしてエッジの効いた撮影にも挑戦してみたいです。

Berlin Kino B&W 35mm ISO 400 2019 Edition

映画用フィルムから作られたモノクロフィルムで、繊細なグレートーンが好印象。たまにムラが出ますが、そこもまたシネマチックな雰囲気を高めてくれます。ISO400なので、少し暗い場所でも十分撮ることができます。

 

ソフトフィルターを使ったような描写

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

後ろに山が見える奥行きのあるロケーションで撮影しましたが、白と黒、そして中間調がとてもきれいです。フィルターなしでソフトに写すことができます。物語性を感じられるように寄りの写真や後ろ姿など映画のシーンをイメージして撮影すると、より雰囲気が出ます。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

上の写真では、周囲をソフトに仕上げる「センターイメージ」というフィルターを使用しています。このフィルムのソフトさが相まって、淡く抽象的な雰囲気を出すことができました。

 

 

明暗差が大きくても繊細に描ける

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

このフィルムは、ラチチュード(再現できる明部から暗部までの幅)が広いのが特徴です。上の写真は明暗差が大きいところで撮ったのですが、服に当たる光を写しながら、黒つぶれすることなく表情を描くことができました。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

逆光でも、真っ白に写る小道具を使っても、黒つぶれせずに人を写せます。明暗差を気にすることなく、映画のワンシーンのような撮影を楽しむことができるんです。

 

持ち味を生かすコツ

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

1枚目は開放のF2、2枚目はF8で撮った写真です。F値が小さいほどやわらかい描写になります。先ほど紹介した写真たちはF4~5.6で撮っていますが、それくらい絞るとソフトさもありながら、立体感を出すことができます。

 

難しいポイント

たまにムラが出ることがあります。「味」として楽しいのですが、出る場所は予想できないので、気になる方にとっては少し扱いが難しいかもしれません。

 

特徴的な小物を使っても浮きすぎず、一つのシーンとして描くことができるので、いつもと違った世界観の撮影にチャレンジしてみたい方にオススメです。ポートレートだけでなく、廃れた建物のスナップなどにも相性がよさそうだと思います。

Lomography B&W ISO 100 35mm Potsdam Kino Film

こちらも映画用フィルムから作られたもので、コントラストが高めで、白と黒をきれいに表現できます。粒子感もほどよく、ポートレートからスナップまで幅広いシーンで活躍してくれるフィルムです。ISO100なので、明るさが確保できる場所に向いています。

 

シンプルに被写体をかっこよく写せる

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

コントラストを生かして、男性モデルさんをファッションに寄せて撮影しました。背景や構図をなるべくシンプルにして、服装もモノクロにしてもらっています。男性が被写体の場合、いかにシンプルで、その人自身を引き出せるか…という点を意識しているので、このフィルムはとても相性がいいと感じました。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2
FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

白黒の明暗差で、四角や直線などのかたくてシンプルな風景が際立ちます。先ほどはメンズポートレートで「かっこよさ」を優先したのですが、女の子のやわらかい雰囲気を合わせると、いい意味でギャップが生まれます。スカートのなびきや、髪の毛のウエーブを目立たせるようにしました。

 

 

多重露出でも被写体のディテールが際立つ

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

多重露出撮影をすると、写真全体が明るく淡くなりやすいのですが、このフィルムではしっかりコントラストを保てます。2枚目の写真は、海と草の写真が偶然コマかぶりによって重なったものです。それぞれのディテールが出ていて、おもしろい画になりました。

 

持ち味を生かすコツ

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

1枚目はF8で、2枚目はF2.8で撮った写真です。F値を上げるとパキッといい立体感が出て、F値を下げるとやわらかくも描けるので、とてもバランスよく表現できます。今回はくもりで光が弱かったのですが、晴天時にF値を上げて影をはっきり写すと、高いコントラストをより生かせると思います。

 

難しいポイント

コントラストが高い分、黒つぶれはしやすいです。ただ、それもフィルムの個性なので、あえて明暗差があるところで黒つぶれを出してもかっこいいと思います。

 

構図で遊ぶ写真や、ファッションポートレート、スナップなど、ディテールをしっかり描写できるのでモノクロ好きにはたまりません…。次は、雨の日の夜などにストロボをたいて撮ってみたいです。絶対かっこよくなるイメージが湧いています!

お気に入りの1本とベストショット

4種類のフィルムを使ってみて特に気に入ったのが、最後にご紹介した「Lomography B&W ISO 100 35mm Potsdam Kino Film」です。このフィルムは、粒子感とコントラストのバランスがとても好みで、拡大して見てもらいたいぐらい…。

 

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

 

そしてベストショットがこちら!
モデルさんに丘を登ってもらっている途中、空と地面の色が服装と逆転していて、その対比がおもしろいなと思った瞬間に撮った1枚です。

小雨が降る中でも、微弱な光が差しこんで逆光になっていて、人物にシャドウが重なり白いくもり空とも相反しているような描写になりました。「背景と服装」「空と人」の対比が二つ重なるのは、この瞬間だけの偶然だったので、見れば見るほど「好きだなぁ」と思います。

Photographer's Note

「Analogue Quartet」は一つ一つに個性があるので、その個性をどうやったら生かせるかをすごく考えました。いつもはイメージから入るんですが、今回は「フィルム→イメージ→撮影」と違う順番です。

 

2019 Lomochrome Purple 35 mmの例

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

FE2、Nikkor S Auto 5cm F2

【フィルム】緑がパープルに、青がエメラルドグリーンになる

【イメージ】草木を撮って緑がパープルになるシーンを撮りたい

【撮影】背景や上から草木のパープルが入る構図で撮影しよう

 

思考の順番を変えることで、新しいインスピレーションや刺激を得ることができたので、とても撮影が楽しかったです。

 

ずっと写真を撮っていると、大好きなのに、何かうまくいかないときって誰にでもあると思います。そんなときは、思い切って新しいことをいろいろ試して、自分の中でしっくりくるまで模索するしかありません。何が変化のきっかけになるかは、やってみることでしかわかりませんよね。

今回「Analogue Quartet」で撮りながらわかったことがあります。
「そのときの状況に合わせて、毎回自分自身も変化していくのはとってもおもしろい」
きっと変化しても、「私の写真だ」という何かしらの軸が存在しているんじゃないかなと思います。それは私自身わからなくても、見てくれる人が感じてくれればうれしいです。

 

これからもう一歩新しい写真に挑戦してみたい方は、「Analogue Quartet」の4本とぜひ遊んでみてください!

Lomographyの個性派フィルム4種撮り比べ。見慣れた場所でも世界観が一気に変わる!

アルミ製のフィルムケース、カメラ型のキーチェーン付きでデザインもかわいいです!
※キーチェーンは数種類のうちいずれかが入っています。

 

Special thanks!

Model:MiYaBi(@myb_611)、せー(@__ks_se_)、Neggy(@neggyyutaka)、kokoro(@__ko__0143
協力:ロモジャパン
Supported by L&MARK

 

 

FE2

FE2

Nikkor S Auto 5cm F2

Nikkor S Auto 5cm F2

Nikkor-N Auto 24mm F2.8

Nikkor-N Auto 24mm F2.8

※フォトグラファーの作品性を尊重して機材を選択・撮影しています。
※AI改造済みのNikkor S Auto 5cm F2およびNikkor-N Auto 24mm F2.8でなければFE2に装着できませんので、ご注意ください。

 

 

 

Fujikawa hinano

Fujikawa hinano

Instagramで作品を投稿。グループ展やメディア執筆など、幅広く活動中。「日常と非日常の中にある曖昧さ、そして感情を丁寧に表現したいと思っています」