連載企画『写真家と学ぼう! カメラ初心者ガイド』。カメラ初心者のナツキちゃんと一緒に、カメラや撮影の基本を学んでいきましょう!
Step16は「撮影後の編集」です。JPEGで撮影した写真の明るさや色味などを後から調整する方法について、フォトグラファーの嵐田大志さんに教えていただきます。
ナツキちゃん
スマホで写真を撮っていたが、「もっと素敵な写真を撮りたい」とついにカメラを購入。選んだのはAPS-Cサイズのミラーレス「Z fc」と単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)」。モットーは「とりあえずやってみる」。好奇心旺盛で、少しうっかりやさんな女の子。嵐田大志さん
家族写真や都市風景を中心に撮影するフォトグラファー。3児の父であり、子供の誕生を機に写真にのめりこむ。
SNSで見かけるような「フィルムライクな写真」には、どうすればできるんだろう…。嵐田さんはどうしてるんですか?
僕はスマホのアプリで編集してるよ。
私はJPEGで撮ってるので、後からの編集は難しいと思うんですよ。
実は僕もJPEGで撮ってるんだけど、いつも撮影後にアプリで編集してるんだ。RAWに比べると制限はあるけど、写真の明るさや色味なんかを調整できるんだよ。
嵐田さんが撮影後にスマホで編集した写真
JPEGでもできるんですか!?
「Lightroom」っていうアプリなら、スマホでもかんたんに編集ができてオススメだよ。
ライトルーム?
Lightroomとは?
「Lightroom」は写真編集ができるアプリです。モバイル版は基本無料で、写真の明るさや色味、質感などさまざまな調整ができます。
※アプリはこちらからダウンロードできます。
気になるところを微調整するだけじゃなくて、フィルム風にしたり、好きなニュアンスに仕上げることができるんだ。
わ~、なんだか楽しそう!
覚えておきたい編集機能
Lightroomにはいろんな機能があるんだけど、まずは3つを覚えよう。
【主な編集機能】
- ライト:明るさを調整できる項目
- カラー:色味を調整できる項目
- 効果:質感を調整できる項目
撮影するときに調整していた明るさや色味、質感を後から編集できるんだ。
それは便利ですね! 教えてください!!
明るさを調整する「ライト」
Lightroom「ライト」操作画面
一つ目は写真の明るさを調整できる「ライト」だね。その中の「露光量」で全体の明るさを変えられるよ。
左:元写真、右:露光量をプラス
左:元写真、右:露光量をマイナス
後から明るさを調整できるなら、撮影のときは気にしなくて大丈夫ですね!
極端に明るすぎる・暗すぎる写真を後から調整するのは限界があるから、撮るときの設定も大事だよ。空とか明るい部分が真っ白になってしまった部分を戻すことはできないからね。
左:背景が真っ白に写った元写真、右:露光量をマイナスに調整した状態でも背景は真っ白のまま
ほんとだ…。
だから、僕は編集する前提で少し暗めに撮るようにしてるんだ。
左:暗めに撮影した元写真、右:撮影後に露光量をプラスにした写真
「編集する場合は暗めに撮る」しっかり覚えておきます!
「ライト」の項目では、「コントラスト」「ハイライト」「シャドウ」も覚えておこう。
- コントラスト:写真の明るい部分と暗い部分の差を調整。プラスにするほど明暗の差が大きくなりメリハリが出る。
左:元写真、右:コントラストをプラスにした写真
- ハイライト:写真の明るい部分を調整。マイナスにすると、明るくなりすぎるのを抑えられる。
左:元写真、右:ハイライトをマイナスにした写真
- シャドウ:写真の暗い部分を調整。プラスにすると、暗くなりすぎるのを抑えられる。
左:元写真、右:シャドウをプラスにした写真
ずいぶん変わりますね!
色味を調整する「カラー」
Lightroom「カラー」操作画面
次は「カラー」で色味を調整してみよう。撮影するときにホワイトバランスを設定したように、後から調整できるんだ。「色温度」という項目で赤っぽく、青っぽく変えられるよ。
左:元写真、右:色温度をプラス
左:元写真、右:色温度をマイナス
「色温度」はホワイトバランスのときに覚えました。後からも変えられるんですね。
そうなんだ! 編集する前提なら、撮るときは「オート」設定にしておくと、後から編集するときの自由度があるよ。
なるほど!
あとは「彩度」を使うと、写真全体の鮮やかさを調整できるんだ。
左:元写真、右:彩度をプラス
がらっと変わりますね。
この「色温度」と「彩度」は写真全体を調節する項目なんだけど、例えば「青だけもう少し鮮やかにしたい」ってときもあると思うんだ。そんなときには、個別に色を調整できる「カラーミキサー」が便利だよ。
Lightroom「カラーミキサー」操作画面
じゃあ、空の青だけ濃くするってこともできたりするんですか?
そう! それぞれに「色相」「彩度」「輝度」の3項目を調整できるようになってるんだ。
- 色相:下の輪のイメージで、例えば赤ならオレンジやピンクのように色合いを調整できる。
- 彩度:色の鮮やかさを調整。
- 輝度:色の明るさを調整。
色そのものも変えられるんですね! でも、色を個別に調整するのって難しそう…。
まずは、気になった色の彩度だけを変えてみたらどうかな。それだけでも雰囲気がずいぶん変わると思うよ!
左:元写真、右:カラーミキサーで青の彩度をプラスにした写真
すごくきれいな青空になりましたね!
質感を調整する「効果」
Lightroom「効果」操作画面
「効果」では、ピクチャーコントロールのように質感を調整できるよ。
これも、編集前提ならピクチャーコントロールは「オート」で撮影するのがいいんですか?
そう! わかってきたね。
質感は「テクスチャ」と「明瞭度」で変えられるんだけど、それぞれプラスにするとシャープに、マイナスにするとソフトに調整できるんだ。
左:テクスチャ+100、右:明瞭度+100
左:テクスチャ-100、右:明瞭度-100
テクスチャは自然な雰囲気のまま質感を調整できて、明瞭度は全体が大きく変わるイメージだね。やりすぎ注意の項目だし、僕もそこまで触らないかな。
そうなんですね!
その他には「かすみの除去」っていう項目があるんだけど、かすみがかった写真でこれをプラスにするとクリアな仕上がりにできるんだ。風景を撮るときに使うこともあるよ。
左:元写真、右:かすみの除去をプラス
ほんとだ、右のほうがすっきりしますね!
写真のサイズを調整できる「切り抜き」
Lightroom「切り抜きと回転」操作画面
大きく3つの調整項目を紹介してきたけど、「切り抜き」も便利だから覚えておこう。「トリミング」とも言うんだけど、好きな縦横の比率で切り抜いたり、不要な写りこみを取り除くこともできるんだ。僕はクローズアップで切り出して、望遠と同じ効果を狙うこともあるよ。
左:元写真、右:縦にトリミングした写真
右は、月の存在感が一気に増しました!
画質モードや画像サイズをいちばん上に設定しておくとトリミングにも耐えられるから、撮影前の設定も大事なんだ。
ここで生きてくるんですね!
実際に編集してみよう!
Lightroomの主な機能がざっとわかったところで、よかったらナツキちゃんの写真を僕が試しに編集してみようか?
え、いいんですか!?
もちろん! どんな雰囲気にしたい?
そうですね…。この写真を明るくて、あたたかみがあって、フィルム風に仕上げてみたいです!
ナツキちゃんが撮影した写真
OK、任せて!
実際に編集した内容
- コントラストが強かったので、コントラストを弱めつつ、全体を明るいトーンに。
Lightroom「ライト」操作画面
- 色温度をプラスして、あたたかみのある色調に。
Lightroom「カラー」操作画面
- 写真のメインとなる緑色の彩度を抑えて、優しい印象に。
Lightroom「カラーミキサー」操作画面
編集してみたけど、どうかな?
左:元写真、右:嵐田さんが編集した写真
わぁ、とっても素敵です!
設定は「プリセット」として登録すると、他の写真にも適用できて便利だよ。
左:Lightroom「プリセットを作成」画面、右:登録済みの「ユーザープリセット」画面
左:ナツキちゃんが撮影した元写真、右:プリセットで同じ調整値を適用した写真
そんな機能もあるんですね!
私も編集やってみたくなりましたよ~!!
Lightroomでの編集のポイント
- ライト:写真全体の明るさ、明るい部分や暗い部分の調整ができる。
- カラー:写真全体に加え、個別の色味や鮮やかさを調整できる。
- 効果:くっきり・ソフトと質感を調整できる。変化が大きいためやりすぎは注意。
編集前提の場合、撮影時は初期設定にしておき、少し暗めに撮るのがコツ。
NEXT STEP!
Step1~16の全16回で、カメラの選び方から設定・撮り方の基本、撮影後の楽しみ方について解説してきました。次回からは被写体ごとの撮り方の基本を紹介していきます。
最初の被写体は「花」です。フォトグラファーの鎌田風花さんに、外で花を魅力的に撮るポイントを教えていただきます。
キャラクターイラスト:福士陽香(@f___haru)
Supported by L&MARK
嵐田大志
本業の傍ら、東京をベースにフォトグラファーとして活動。LightroomやVSCOを活用し、フィルム風の空気感を表現。家族や身近なものを中心にしつつ、頻繁に旅する海外でのスナップを撮り続けている。